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 私が扉を力一杯叩こうとした、その瞬間--。


 後ろから心地よい涼しさの風がやってきた。


「あれ、窓閉まって……たはず」


 振り返った私は驚きすぎて目玉が飛び出すところだった。危ない。


 なぜ私が驚いたのか。それは窓の横、つまり壁に人一人が余裕で通れる穴が開いていたのだ。そしてその穴を開けたであろう人物は、いつものようにへらっと笑って立っていた。


「おっす。久しぶりー、リラ。囚われの身にしては元気そうで安心した」


「イズル。どうして……」


「んー? ああ、リラが捕まったって二人の男が慌てながら話してるの聞いて来ちゃった」


「来ちゃったって……なに危ないこ、ああ、違う。来てくれてありがとう。それからごめん。その二人、怪我とかしてなかった?」


「ん? してなかったよ。ただ顔は真っ青だったけど。リラ殿がって」


 リラ殿。ああ、ソロとコソの二人だ。よかった。無事だったんだ。


 思わぬところで二人の無事を知ることができて、体の力が少し抜ける。


 二人の無事は知ることができたけど、私の状態を二人は知らない。だからもし二人が私を助けに来てくれたら危ない。早くここから出て、二人に会って私は大丈夫だよって言わなきゃ。


 そう心の中で意気込む。


「さて、リラの頭の中も落ち着いたみたいだし。とりあえずここから出ようか」


 イズルはそう言うと、軽々と私を横抱きした。


「んん!?」


 驚いて言葉にならない声が出る。イズルはそんな私を見て、悪戯が成功した子供みたいに笑った。


「リラってさ、高所恐怖症じゃなかったよね? まあそれでも跳ぶんだけどさ」


 私の返答を聞かずに楽しそうに笑うイズルは、開けた穴から外に向かってジャンプした。瞬間--体全体を包む浮遊感。下に落ちる感覚が私を襲う。風が下から上へ勢いよく吹いている感覚になる。


 ああ、この状況は一人だったらパニックになっているかもしれない。だけどイズルがしっかり抱き締めてくれてるから、安心感があって怖くない。むしろ楽しくなってきた。


「さあ、どんどん行こー!」


「おー!」


 元気よく返事をして片腕をあげる。


 建物の上を軽々と跳ぶイズル。振動があまりなくて居心地がいい。


「早くリラのことで慌ててた二人にさ、無事だって姿見せたいなー。安心させたいよな」


「うん」


「よーし! スピード上げるぞー!」


「ありがとう! お願いします!」


「ほーい!」


 ぐんぐんスピードを上げて進んでいくイズル。イズルが言った通り、これならあの二人に早く会えるなあ。


 イズル、来てくれて本当にありがとう。帰ったらとびっきりのお礼をしよう。うん。

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