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な、なにかないか。この現状を打破できるだけの、なにか。
「……」
「安心してください。あなたの工房はすぐ用意しますから」
「されても困ります。私、こだわりが強いので」
「ふむ。それでは一緒に選んでください。それなら問題ないでしょう」
にっこり笑う男に全身の毛が粟立つ。
駄目だ。すごく怖い。だけど、今は怖がってる時じゃない――。
「私を帰して。でないと困るのはあなたよ」
私は精一杯のはったりを言う。それを聞いた男は笑みを深めて、私の方へ腕を伸ばし後ろにある壁に手をつけた。
「闇オークションで職人を売るのは簡単なことだ。そして売られた職人はどんな結末を迎えているだろうね」
「……」
「身をもって、知りたいかい?」
もったいづけられた言葉が、静かな音となり私の耳に届く。
微かに目を動かすと、男の碧眼とぶつかる。瞳の奧は闇のようだ。その闇に飲み込まれそうになる。
男は畳み掛けるように言葉を続けた。
「あなたはとても高く売れるだろうね。職人の腕も五色星魔法石を見ればいいのがわかる。それに見目もいい。金持ちの男たちが競りに競ってあなたは買われていく」
この男が言いたいであろう売られた私を考えて、無意識にひゅっと音が漏れた。
「あなたを闇オークションに出すのは簡単なことなんだよ。立場を考えた選択を進めるよ」
「あ、あなたのところへ行く……」
私の言葉に満足そうに笑った男は、私を抱き締めた。
「ああ、こんなに震えて。怖がらせてしまってごめんよ。だけどわかってほしかったんだ。あなたの立場を」
男に言われて気づいた。自分が震えていることに。
震える体や激しく動く心臓をよそに私はどうにか逃げるタイミングを見つけなければと、恐怖に支配されそうになる頭を必死に働かせていた。




