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魔法使い、パートナー急募

 お店の入り口の両隣にある窓から見える空はとても綺麗な青色で、朝早くから活動し始める鳥たちが元気よく鳴いている。それに対しお店の中は少し冷たく暗くて。


「短い間でしたがお世話になりました」


 彼は私の顔を見ずに、抑揚のない声で言葉を放った。


「……こちらこそありがとうございました。短い間でしたが、とても楽しかったです」


 彼は私の顔を見てはいないけれど、にこりと笑う。


 言葉に嘘はない。私の素直な気持ちをそのまま言葉にしたのだから。それでもたぶん彼は思うだろう。


 ただ形だけの別れだからと。


「……」


「僕はこれで失礼します。さよなら、リラさん」


 そして彼はお辞儀をして、お店から出ていった。


「顔、見てくれなかったなあ……」


 呟いたその小さな音は彼の耳には届かない。ただ私の耳に届き、そして消えるだけだ。


「……」


 去っていく彼の背中を寂しく思いながら、でもどこか他人事のように見ている自分がいた。


「……んー」


 彼は私のパートナーだった。とっても優秀で笑顔の優しい人。だけど私のところでは勉強にならないと、他の魔法使いのところへ行くのだ。


「……」


 パタンと扉が閉まると、扉に付けている鈴が寂しく鳴った。


 私はお店のカウンターのところにある椅子に座り、カウンターに腕を置いてそこに顔を埋める。


「……はあ。やっぱり慣れないな」


 じくじくと痛む心に触れて目を閉じる。こんなにも心が寂しいと叫ぶなら、行かないでとすがるべきだったかな。


「……」


 でもそれは違う気がして、去っていった彼を忘れようと首を横に振った。


「よし! 彼のことは忘れた……ことにする!!」


 だって今は彼のことを引きずっている場合ではないのだ。理由は簡単である。私一人だとお店が回らない。それがわかっていて止めなかった私も馬鹿だけどね。でも彼が勉強にならないって言うなら仕方ないかなって思うんだ。


 ……はあ。自分の駄目さにため息が出る。


「あ、そうだ」


 新しいパートナーを募集しなきゃ。でもすぐには来てくれる人も見つからないだろうし。


「困ったなあ……」


 ぽつりと言葉が零れ出てしまった。今日という日はまだ始まったばかりだというのに……。


「いやいや! 始まったばかりだからこそ気合いを入れなくては!!」


 落ち込むといいことは走って逃げてしまうぞ。笑顔だ、笑顔。そして気分を上げてるんるん陽気な気持ちで一日を乗りきれ。


「よしっ!」


 とにかく今日一日は一人のつもりで乗り越えなくては。頑張れ、私。やればできるぞ、私。

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