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逢魔が刻

遠い夏の日

作者: 名月らん

「熱中症にならないように、休み休み掃除をしてください。」


と近所の奉仕作業を始める前の朝礼で先生から言われた夏休みの登校日。

その日は朝からジリジリと暑かった。


担当になった学校近くの神社へ向かう中学1年の私と4人は、ほうきと塵取りとゴミ袋を持って行き作業を始めた。


「久しぶり来たぁ」

「えー初めて来たよ」

「氏神さんだよ」

「氏神?」


私はにっこり笑って


「私もここが氏神さんだよ」


などと話しながらゴミをあつめていた。


しばらくして一人が


「あっちの鳥居の奥をしてくるね」


と言うので私は


「じゃあ、私はあっちしてくる」


と、右と左とに別れ私は左の横道に入っていった。


そこには柵で囲われた大きくて立派な石碑が立っていた。

手前の入り口にチェーンか引かれている。


「これ、中に入っていいかなぁ。葉っぱと草が結構あるんだけど…」


私は悩んだ末に


「すみません、お掃除させて頂きます。お邪魔します」


と言いながら中に入った。

その中は少しヒヤリとしていて、心地いい風が吹いていた。


「どこから吹いてるんだろう?」


私は不思議に思いながらも、サクサクと掃除をしていた。


その時、突然目の前がグニャリと歪み真っ白な光に包まれた。

そして


ゴーゴー


と何かの音がする。


これって何かの乗り物の音?


と思った瞬間、目の前が真っ暗になり私は気を失った。


どれくらい時間が立ったのか


「お疲れ様!ソロソロ掃除終わりまーす」


先生の声がして私は我に返った。


私は気を失ったときに倒れ込んだと思っていたが、ほうきを持ち柵の外に立っていた。


え?え?え?


「どうしたの?帰るよ」


と声をかけてきた友達に


「ねえ、私倒れてなかった?ずっとここにいた?」


と聞くと


「え?ずっといたし無言ではいてたよ」


と言われ狐につままれたような気分になった。


あれから長い月日が流れ私は結婚をし子供も出来、その子のお宮参りに久しぶりにその神社に行くと


ゴーゴー


どこからか聞いたことのある音がした。


この音…


「ねえ音聞こえない?ゴーって」


夫に言っても聞こえないと言われた。


あれは何なんだったんだろう。


その夜、テレビを見ていた私は息を呑んだ。

そこからはあの音と同じ音が流れていたのだ。


「ねえあれって」


と夫に言うと


「ああ、ゼロ戦だね」


私はハッとして思い出した。

そうあの石碑は戦没者追悼の石碑だったのだ。


掃除をするために中に入った私を叱ったのか?


それとも自分たちがいたことを忘れないでと言うことなのか?


それとも、たまたま私と波長があったのか…


どれが正解なのか私には分からない。


そんな私は、その後戦没者追悼式のお手伝いを4年にわたりすることとなった。


今になって思うのは


未来で戦没者追悼式を手伝ってもらうから帰っておいで。


と言われたのかも知れない。


そんな私は今もあの日のことを思い出す。

きっと永遠に忘れないだろう。

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