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ビニール傘

作者: 春風 月葉

 私の持ち主はコロコロと変わった。ときには置き去りにされ、ときには奪われ、ときには譲渡され、使いまわされて最後には捨てられる。きっと、そんな都合の良い存在だったのだろう。一晩雨を凌ぐためだけの、そんな存在だったのだろう。

 最初の持ち主は若い男だった。突然降り出した雨を凌ぐため、彼は私を買った。次の持ち主は若い女で前の持ち主が雨の中を帰る彼女に私を与えた。次の持ち主は彼女の父親だったが、彼が立ち寄った本屋で買い物をしている間に私は次の持ち主に盗まれた。次の持ち主は中年の女性だった。彼女はある晩、居酒屋の席に私を忘れて置いて帰った。

 思えば多くの人の手を旅してきた。誰一人、私を特別にはしてくれなかった。使い捨てられるために作られたのだから当然なのだと理解はしている。しかし、納得したくなかった。このまま処分されるのだろうか。そんなのは嫌だ。

 あんなに尽くしてきたのに、こんな最後は認めたくなかった。捨てないで、そんな私の気持ちも虚しく、すでに私はゴミ捨て場の上に倒されている。ポツリポツリと雨が降り出す。誰も私を雨から庇ってはくれない。

 目の前のコンビニで誰かがビニール傘を買った。ああ、この雨が止まなければいいのに。

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