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青薔薇の姫

作者: 漫画収集家

さあさあ さあ、水をまく音がする。

アナスタシアが今日も花のお世話をしているようだ。


「ふー、すこしつかれたわね!」


「毎日、飽きずによくがんばりますね。」


家の中からおじいさんが話し掛ける。


「あたりまえなのだわ、

きぞくさまはわたしのおとうさんとおかあさんを

さがすのをがんばってくれているのだから、

わたしもなにかきぞくさまのやくにたてるように

するのはとうぜんでしょう?」


そう、アナスタシアは私の実の子ではない。


1週間程前、教育を任されていた

領主後継者候補の一人となった青年が

少女(アナスタシア)を連れて

私の家を訪ねてきた。


突然の訪問に私は驚いたが、家の中に招き入れ、

話を聞いた。


青年は昨日から隣の領で開かれていた

魔物狩りのイベントに参加しており、

今朝、帰って来たようだ。


朝早い時間での帰りだった為、

目を凝らさなければならない程、

あたりはほの暗かったらしい。


青年はそんな中でうごめく影を見つける。

魔物が出たのかと思い、馬車に止まるよう指示を出し、

馬車の外に出て確認すると、

そこには少女がいた。


青年が、少女になんでこんな時間に出歩いているのかと聞くと、

「そとであそんでいたらさらわれて、

どこかにつれていかれそうになったから、

なんとかにげてきた。」

と答えられた。


それを聞いた青年は、

少女を保護することに決めるが、

自分の家では現在、次期領主の座を争う戦いが

繰り広げられている。

そこに連れて行くのは得策ではないと思い、

私の家で引き取り、親を探してもらえないかと考えたらしい。


話を聞き終わり、私は少女の保護を承諾した。

私の返答を聞くと、青年は安心して帰っていった。


まず初めに、私は女の子に話掛けた、

・自分の名前は分かるか?

・自分の住んでいた場所はどこか?

等、その他色々なことを聞いた。

その結果、女の子はアナスタシアという名前である

ということは分かったが、それ以外は全く分からなかった。


質問を終えた私は、今日はもう休むようにと

アナスタシアに伝えた。


次の日の朝、私が趣味を兼ねた仕事をしていると

少女(アナスタシア)が起きてきた、


「おはよう、よく眠れたかい?」


「おはようございます。

はい、ぐっすりとねむることができました。」


そういうと、少女(アナスタシア)は私に近付いてくる。


「なにをしているのですか?」


「これは、生け花というものだよ。

花をより綺麗に着飾ってあげているんだ。」


少女(アナスタシア)は興味深そうに私の生け花を見る。


「アナスタシア、窓から庭が見えるだろう?

好きな花を数本摘んで来なさい、

生け花を教えて上げよう。」


私が、そう言うと、

少女(アナスタシア)は庭に出て行き、花を数本摘んでくる。


子宝に恵まれなかった私は、しばらくの間、

少女(アナスタシア)との暮らしを楽しんだ。


少女(アナスタシア)が私の家に来てから3日がたった、

私はアナスタシアの親探しを少しずつ行っていたが、

今のところ、なにも情報を得ることはできなかった。


「おじさま、

わたしもお花のおせわをしたいわ。」


アナスタシアが、私に初めてお願いをしてきた。


「分かった、じゃあ今日は一緒に花の世話をしようか。」


私と少女(アナスタシア)は庭に出て、

花の世話を開始する。


「おじさま、

ふしぎにおもっていたのですけど、

花のいろがあか・みどり・きの3しょくしかないのは

りゆうがあるのだわ?」


少女(アナスタシア)が私に質問してくる、


「君はここにあるもの以外の色の花を

視たことがあるのかい!?」


私は、少女(アナスタシア)の言葉に驚く、

なぜなら、この国にある花はこの3色しかなく、

新たな色の花を見つけることが私の目標だったからだ。


「えぇ、わたしのすんでいたところの

お花ばたけには10しょくいじょうは

花のいろにしゅるいがあったのだわ。」


その言葉に私はさらに驚く、

私の知る花の都と言われる町でも、

花の色は5色が最大である。

それが、10色もあるとなると・・・


「アナスタシア、質問があるのだが良いかね?」


「ええ、かまわないのだわ」


「アナスタシアの生まれた町には、

妖精と呼ばれる種族がいなかったかい?」


「・・・そうなのだわ!

わたしたちはじぶんではようせいだと

なのっていないけれど、

そとにでたらようせいだといわれてねらわれるから

きをつけるようにとおかあさんに

いわれたことがあったのだわ!」


少女(アナスタシア)は笑顔で答える。


「ああ、なんということだ。」


妖精といえば数々の物語や噂で語られる幻の種族だ。

まさか、実在する種族だったとは。

噂では、妖精は何よりも同族を大切にする種族であり、

魔法という人間には理解の及ばない能力(ちから)を持つと聞く、

自分たちの種族のこどもが拐われたと知れば、

群れとなって、攻めてくるだろう。


このままでは近いうちに戦争が起きてしまう。


「アナスタシア、今すぐ出掛けますよ!」


「きゅうにどうしたのだわ?」


「あなたの親を探す為に、旅にでます。」


私はそう言って、旅に出る準備をする。

青年には少女(アナスタシア)が妖精であったこと。

このままでは、妖精と人間の間で戦争が起きるであろうこと。

少女(アナスタシア)の親を探す為に旅に出ること。

を手紙に認め、伝書鳩を飛ばす。


ここから私と少女(アナスタシア)の永い旅は始まった。

いくつもの国を巡り、

幾人もの仲間との出会いと別れを繰り返した。


遂に、たどり着いた妖精の国では、

少女(アナスタシア)が王女であったことが知らされ、

人間と妖精の間で互いを攻撃しないと盟約を結んだ。


妖精の国を出る時には、大きな声で泣きながら、

国を出て私についてくるというアナスタシア

にまた会いに来ると約束をし、アナスタシアから

青い薔薇をもらった。


今でも思う、あれは夢だったのではないかと。

だが、それを否定するように私の家の庭では

鮮やかな青い薔薇の花たちが風に揺れていた。

連載小説挑戦中です。

↓こちらの作品も是非、読んで頂きたいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] すでに隠居しているおじいさんだったから、様々な利害関係無しにアナスタシアに愛を注げたのでしょうね。 隠居の身だからこそ、アナスタシアの正体が判明したら、すぐに旅立てた。 2人の相性はとても良…
[一言] 花を愛する「私」だったからこそ、アナスタシアを彼女の故郷に返すことができたのでしょうね。欲深い人間では、国にたどり着くことすらできなさそうですから。 青い薔薇はふたりの思い出の証。血は繋が…
[一言] 妖精だったんですね。 争いにならなくて良かったです。
2021/01/12 16:44 退会済み
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