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梵天丸、雉子尾川で再び相馬とまみえる

 永禄12年(1569年:史実よりも一年早い)、中野宗時の謀反を未然に収めた伊達輝宗は、中野宗時父子が逃亡する際に意図的に見逃していた小梁川盛宗・白石宗利・宮内宗忠を米沢城に呼びつけた。


 大広間で待つ三人の前に伊達輝宗の家老筆頭とも言える評定役、鬼庭良直が現れた。


「皆々様。今回の中野の一件では日和見でしたか。」


 諸将は慌てて言い訳をする。それを押し留めて鬼庭は続けた。


「まあそれは良い、と御屋形様も仰せです。そもそも叔父の実元公と大殿晴宗様も去就があやしゅうございましたからな。」


 胸をなでおろす諸将に鬼庭は続けた。


「しかし今後はこのようなことは許されませぬぞ。お館様の命を聞かぬは牧野久仲の如く討ち果たされても文句は言えないこと。そこでおのおの方に申し渡したい儀が。」

「まさか減封や所領替え、『塵芥集』の遵守とか。」

「いえいえお館様は慈悲深いお方。そのような厳しい沙汰はいたしませぬ。ただ御館様の命じた軍役を守り、「馬打同然之事」としてよく御館様にお仕えしていただきたい、ということです。それすらできぬようなら牧野同様の運命をたどるかと。」


 三人の将はブンブンと首を振って頷き、平伏した。そして米沢に呼ばれた三将の他の家もほぼ同様に輝宗に対して軍役を果たすことを誓ったのである。これにより伊達輝宗は、晴宗時代のように中野宗時を筆頭に独立志向が強く言うことを聞かず、軍の動員すら困難であった状況を脱し、伊達氏領国全体の軍勢を自由に動かせるようになったのであった。



 所は代わって丸森城に戻る。丸森を守っていた梵天丸の所にまた出羽三山の修験者が訪ねてきた。


「梵天丸様に置かれましてはお久しゅうございます。」

「おお、月山の焔月殿か。出羽の山を飛び回っていた頃は世話になった。」


 どうやら梵天丸が出羽三山に預けられていた際の知り合いのようである。


「ところで中野宗時が相馬殿の所にたどり着いて相馬殿を焚き付けているのはご存知か。」

「あの御方ならするだろうな!息子の牧野も討ち果たしたし。」

「先年痛み分けに終わった相馬盛胤・義胤父子も雪辱に燃えているようで。」

「今度は本気か。」

「相馬の総力をあげて出陣しております。数日で本拠小高城に集結してから金山城に向かってくるかと。目標はこの丸森。」

「焔月殿、貴重な情報をありがとうございました。」


 梵天丸は焔月に丁重に礼を渡すと、人を呼び指示を始めた。


「鳥屋の安部対馬守安定殿に連絡して少年黒脛巾組の柳原戸兵衛・世瀬蔵人等を寄越すように。後、中島宗求なかじまむねもと殿をこちらに呼んでくれ。それと父上、じゃなかった御館様と亘理の叔父上(亘理元宗)にもこちらの文を。」


 と急ぎ各所に使いを飛ばした。数刻もすると少年黒脛巾組の柳原達と中島宗求が丸森城に到着した。


「中島殿と少年黒脛巾組の諸君はこれから我が伝える指示通りに動いて欲しい。必要なものと人員も付ける。世瀬は相馬の軍勢に潜入してこの流言を。」


 と指示を出し、各々は梵天丸の指示通りに丸森城を出発した。


 相馬盛胤率いる相馬勢は金森城に到着した。


「父上、いよいよ伊達の小倅に報いを与えるときが来ましたな!」


 と血気盛んなのは相馬義胤である。


「うむ。前回は備一つのみで探りを入れただけであったが、今回は主力を連れてきたからな。これで小童も米沢に尻尾を巻いて逃げるに相違ない。」


 そう、相馬勢が引き連れてきたのは8備、6000人にも届こうかという大軍勢であった。これに小斎城の佐藤為信率いる兵も加わり、三千に満たないと目される丸森城の軍勢を圧倒する勢いであった。


「ところで父上、気になる話が。」

「なんじゃ。」

「小斎の佐藤為信、小斎を与えた代わりに桑折左馬助の言を入れて本領は召し上げたことを恨みに思い、今回は出陣しないのでは、と噂されております。」

「なんと。父の佐藤好信はそのことに気を落として寝込んでいるともいうが。」

「ここはその桑折を送って謝罪・この戦のあとの加増を約束し、督戦させるのが良いとも口にするものがありますが、拙者もそれに同感です。」

「うむ。なれば桑折に身の回りのものを付けて、小斎城に向かわせよう。」


 こうして桑折が小斎城に派遣され、残る本隊は金山城を出立して丸森城に向かったのであった。その距離はわずかに一里足らず(3kmぐらい)、相馬勢は今回はまず雉子尾川を渡らず、手前側に布陣した。対岸の台町古墳群に布陣する梵天丸を誘い待つ体制である。


「今回は八備か!相馬め、主力を繰り出してきたか。」


 と梵天丸は本陣から相馬勢を眺め、その整った陣形に感嘆した。


「しかもその陣形は鋒矢!相馬の最も得意とする陣形ですな。」

「とにかくここは支えるしかない。者ども前進!」


 梵天丸の号令で伊達勢は渡河し、相馬勢と睨み合う。


「渡河中を攻撃してこないのはこちらに背水の陣を取らせよう、という余裕か。」

「わざわざ弱きを撃たずとも勝てるという自身やも。」


 と近習が返す。


「ここは踏ん張りどころだ。者ども、かかれ!」


 鬨の声を上げて伊達勢が前進を始めた。いよいよ相馬の主力との決戦である。

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