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第1回伊達家対織田対策会議

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 天正8年(1580年)前年、無事に田村清顕の娘、愛姫と結婚した伊達鎮守府大将軍政宗は、極限られた家臣を仙台城の天守に呼び集めた。天守の最上階は人払いをしており、屋根裏、階下も黒脛巾組の精鋭が詰めて近寄ることもできないようになっていた。


 集まったのは政宗のほかは片倉景綱と後藤信康、鮭延秀綱と越後上杉の嫡子となった上杉成実である。成実は


「このような場にお呼びいただきまして、上様、よろしくお願いします。」

「上様はまだよしておくれ。」


 と政宗は応えた。


「成実はこれからも我と緊密に連携してもらいたいのと、上杉家が矢面に立つ話なので来てもらったのだ。ところで本題なのだが。」


 と言って政宗は話を始めた。織田信長と会い、鎮守府大将軍を北畠信雄に譲るように仄めかされたこと、そして将来は米沢30万石程度の所領に収まるように求められた事などを皆に伝えた。


「御屋形様それは本当でございますか。」

「その場では戯言、と申していたがあの目は本気だな。」

「しかし米沢30万石のみとは……せめて米沢に加えて仙台と伊達郡などで100万石でしたら……」

「そうよの。我も100万石ならすぐにお受けしようと思ったのだが。」


 一同は顔を見合わせて声を一つにした


「「「「30万石ではなぁ。」」」」


「織田の右府は吝嗇に過ぎますな。」

「武士の誇りをかけて一戦いたしますか?」


 と若い鮭延秀綱や上杉成実が言ってくる。


「うーむ。そこで皆に集まってもらったのだ。」


 と政宗。


「越中に逃げ込んでいた上杉景勝、直江兼続主従、なんと織田信長に降伏が認められたというのだ。」

「なんと。」

「うむ。それだけではなく、直江兼続は織田信長殿に泣きつき、景勝こそが正統な越後上杉の後嗣であり、越後回復の力添えをして欲しいと訴えたそうじゃ。」

「直江兼続め、つくづく小賢しい。」

「織田殿と我らの仲ならば笑止、と話を切り捨て、景勝主従には安土か岐阜で捨扶持でも与えてもらえる、と思っていたのだがなんと話を否定せず、魚津城においたと。」

「となると織田がこちらに敵対する姿勢を見せてきたわけですか……」

「となるな。」

「御屋形様の威光はすでに陸奥・出羽に遍く轟いております。織田信長など恐れることはないのでは?」


 と片倉景綱。政宗はそれに応えた。


「織田の勢いは天にも登ろうとするもの。おそらく甲斐の武田も近々滅ぼされよう。となるとその次が北条家か我らとなるが……その攻略軍は少なく見積もっても7万、下手をすると15万を超えるやもしれぬ。『奥州十五万騎』と言ってもそれは象徴的な表現で実際に15万の軍勢を動員できるわけではないからなぁ。当の藤原泰衡も3万程度しか動かせなかったし。」

「……じゅ、15万……」


 成実が思わずつばを飲む。


「とはいえ御屋形様」


 後藤信康が言いだした。


「殿の武威なら織田に相対してもそれほど恐れることはないのではありませんでしょうか?晴嵐徒士隊や竜騎兵、普通の兵卒の三間槍など御館様は斬新な戦法で常に勝利してきました。」

「その三間槍はまさに織田の十八番なのだよ……」

「なんと。」

「確かに我々の銃兵は優れておる。それはこの政宗の誇りである。しかしここまで必死にかき集めて我が伊達の銃の数は3千丁、織田は間違いなく数万丁は装備しておる。4年前の武田との長篠の戦に一つの戦場だけで三千を持ち込んだというからな。」

「…す、数万丁ですか。」

「であるから正面から決戦を挑むことはなかなか難しいのだ。まあこの仙台まで攻めてきたらまだ策は考えてあるのだがな。」


 と政宗は江戸の世になってからずっと研究を続けていた江戸幕府を仙台城下に引きずり込む作戦を思い出しながら話した。


「正面切って戦うのも困難、平伏したら米沢30万石のみ、ではにっちもさっちもいきませんなぁ。」


 と鮭延秀綱は天を仰いた。


「とはいえ、座してすべてを失うのは我慢がならぬ。であるがために皆に来てもらって策を練ろうというのだ。」


 と政宗は一同に言った。


「それにな、ここからは絶対の秘密にして欲しいのだが。これから……」


 と言って伊達政宗は前の人生の経験に基づいた今後起こるであろうこと、を話した。


「そ、そのようなことが。」

「御屋形様はいかようにしてそのようなことをお知りに?」


 と目を回す一同を前に政宗は言った。


「出羽三山のご加護である。」


 そう言われて、諸将はなんとなく納得がいった。


「「「はっ!」」」


「しかし信長にそのようなことが……」

「あの人当たりのよい羽柴様がそのようなことに……」

「我慢の塊の様に見える家康様が……」


 などとそれぞれうなずいていたが、じき頭を整理して今後の方策を話し合い始めた。


「信長にすべてを渡すわけには行きませんがかといって反抗的な態度を明白にするとかえってこちらに全力で攻めてくるかもしれませんな。」

「仮に信長が『高転び』に転んだとして、羽柴様には悪いですが、今の状況で羽柴様が上り詰められますと羽柴様と小田原北条との関係以上に交渉の落とし所がどうしようもないですな……」


 云々。


「ようするに。」


 と片倉景綱は言い出した。


「『高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に』、ということですか。』

「それでは何も決めてないのと同じだ!」


 鮭延秀綱に突っ込まれた。


「しかし、逆に考えますと信長の圧力は、いっぺんに引き受けるような悪手を打たなければ数年で過ぎ去る、ということになりますな。」


 といつのまにかその場にいた黒脛巾組の大町宮内が言った。


「おお、宮内か。なにか良き策が?」

「ございます。」


 と言って大町宮内が言い出した策は驚きのものであった。政宗はそれに応えて言った。


「よし、それで行こう。」


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