表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

ザマミロウファンタジー~他人の不幸は蜜の味~

作者: よよよし

――――"エド"がログインしました。


MMORPG "ファンタジーオンライン"


アクティブユーザーは100万人以上にも上る大人気ゲーム

自由度の高いゲーム性と綺麗な映像


一人でまったり素材集めするもよし、仲間を集めて巨大な敵と戦うもよしの良ゲー



『おつかれー』


『遅いわよ』


『おつー』



最後にやって来た戦士職の「エド」


そんなエドに対してトゲのある言葉で攻める

魔法職の「チョコレート大福」


そんな二人をニヤニヤしながら眺める盗賊職の「こんにゃくゼリーりんご味」


3人は4年以上前からの知り合いで、

時間があえばこうやって集まって攻略に勤しんでいる。


今回のイベントはサービス開始1周年記念


約1か月にわたって開催されるこのイベントは、

ある程度の日数区切りで様々なイベントがある。


今日は、レアなドロップアイテムの確立が上がる。

また、素材の売却金額が倍ほどになる。


更に、9時から24時間限定で

クイーンレッドドラゴンの討伐任務を受けることができる、


レッドドラゴンの討伐で稀に出現するクイーンレッドドラゴン。

その確率は5%程度、またクイーンレッドドラゴンから取れる素材

"真紅の魔核"の取得確率が2%ほど。


そんな素材の使い道は多岐に渡る。

武器や防具の素材・強化にしても良し、錬金術の素材にしても良し

ネックレスや指輪のようにアクセサリーとして使うも良しの万能品


ユーザーなら誰しも喉から手が出るくらいの代物。


そんなモンスターが確定で出現かつ"真紅の魔核"のドロップ率が10%

初級から上級のユーザーが血眼になって参加するイベントだ。




『悪い悪い、んじゃ出発前にアイテムの確認すっか』


『ええ』

『そうだな』




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





『いたぞ!』


『周り込め!一斉に攻撃するぞ!』


『ええ!』



・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・



・・・・



『……ふぅ、なんとか勝てたな。』


『ええ、魔力もギリギリ』


『俺はアイテムすっからかんだぜ』



『『『………………』』』



『はやぶさ切り!』


『麻痺霧!』


『デス!』


それぞれが牙を剥き出しにして襲い掛かる。

それには理由がある。




モンスターを倒して得る報酬には3種類あり


「モンスターを剥ぎ取って得る素材」

「任務完了で得る素材」

「特別報酬として8つの素材」がある。


8つというのは、最大8人チームで任務を受けることができるため

全員に1つずつ受け渡るようになっている。


1人で討伐すると一人占め出来るのだが、難易度が高すぎるため

一部のガチユーザー以外は何名かのチームで討伐している。


その特別報酬には特殊な仕様があり、それは


"討伐後には30秒のクールタイムがあり、それが終了した時点で生きていること"


例え死んだとしても、20秒後には復活出来る。

復活前にクールタイムが終わってしまうと特別報酬がもらえなくなる。


そしてもらえなくなった特別報酬はランダムで誰かの物になる。


…基本的にクールタイムはモンスターの剥ぎ取りで終了するし

わざとするユーザーがいれば晒されて他のユーザーから後ろ指をさされることになる。


それでも彼らは"お互いに自分よりいい素材が出るのが許されない"



『はぁーー、仲間に即死魔法打つとか頭おかしいんじゃねえのか?!』


『あんたこそ、真っ先に首狙って来たじゃない!

 それとあんたは相変わらず麻痺なんてねちっこいやり方するわね!』


『30秒後ぴったしで死んでもらうにはこれが一番確実だからな

 お前こそ、魔力ギリギリなんて抜かしながら上級魔法なんて打ちやがって』



『っちぃ、これならどうだ!光速剣!』


『っく、リフレクター!あー、まどろっこしい、ファイヤーストーム!』


『危な!容赦ねえな、ならこっちも煙幕からの影移動と痺れナイフだ!』



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



『こいつらまたやってるよ………』


一緒に討伐に来たユーザー達5人。戦士職3人と魔法職2人

たまに一緒に任務をする仲で、彼らの落としあう行動はよく目にしている。


『こいつら自分の職の上級技を使いやがって、

 敵に使ってたらもっと早く終わってたろうに…』


『てか、時間的に剥ぎ取り分も損してるよなこれ』


『それに特別報酬は誰にいくかランダムでしょ?

 倒した人に行くわけじゃないのに…』


『…わかってやれ、それ以上に1つでも素材を渡したくないんだよ』


やれやれと溜息をつく、戦士職達




『…それにしても彼らは本当にお強いですね。

 ドラゴンを倒してる時も思いましたが、プレイヤースキル相当ですよね。』


若い魔法職が呟くと、ベテラン魔法職が答える。


『彼らのプレイヤースキルは相当なものだよ。

 ランキング1位を取ったこともあるし。』


『ランキングと言えば…黄金蜥蜴でしょうか?

 たしか1位って、ガチ勢の人じゃなかったですか?』



黄金蜥蜴から入手できる特別な素材を集めることを目的としたイベント


3日間限定で、素材数によっては限定アイテムをゲット出来る。


素材数だけでなく、"討伐時間"および"討伐数(・・・)"もランキングに掲載される。



『討伐数で圧倒的な1位だったのさ。2位が180体に対して

 彼らは250オーバーだったからね。最初聞いたときは腰を抜かしたもんさ。』


ふふ、と小さく笑うベテラン魔法職


『ふえー…なら素材数と、討伐時間なんかもランキング上位じゃないんですか?』


『私も素材をあやかろうと思って一緒に任務に行ったんだけどね。

 いつものように、殺しあいが始まったんだが様子がおかしくてね。

 聖者が光ったと思ったら次の瞬間、大爆発して

 黄金蜥蜴含むすべての生物を殺して任務クリアしたんだ。』



自分の命を代償に、回りに大ダメージを与えるアイテムがある。

3人は死ぬ直前にアイテムを使うように設定した上で殺しあいをしていた。



『誰か1人が死んで発動すると爆発に巻きこまれて死亡。

 連鎖的に爆発、んで討伐って論理さ。

 だが、自分は死ぬから討伐の素材を剥ぎ取る時間もないし

 報酬も少なくなるから素材数は稼げない。

 それよか誰が一番最初に死ぬか、誰が一番素材数が少ないかが

 彼らにとっては大事みたいで。あとで聞いた話だと24時間連続で狩り続けてたらしいよ』


『そんなに……もうイベントの意味を見失ってますね…』


『…討伐時間1位のやつらはあいつらのやり方を知って

 パクったらしいって噂だぜ。』


剥ぎ取りを終えた戦士職の3人が会話に加わる。


『ゼリーの奴が寝落ちした後に、エドと大福が揃ってゼリーを殺したら

 それがトリガーになって全員死亡、任務失敗って聞いたな。』


『睡眠は大事なんやなって……』


はたから見ているユーザ達は遠い目をしていた。





『…彼らプレイヤースキルだけじゃなくてレベルも相当高いですね

 戦士と盗賊なのに回復魔法や状態異常回復も使えるんですね。』


若い魔法職が呟いたのを聞いたベテラン魔法職が答える。


『そうだね、普通は魔法職が回復及び支援を行う。

 でも魔法職のレベルを上げれば回復魔法を使えるし、

 アイテムも使えないことないからね。』


『えっ、彼らは自分職+魔法職もレベル上げてるってことですか?

 それって効率悪いんじゃ……』


『そうだね、彼らなら自分の職だけレベルを上げていれば

 最上級の技も使えるだろうね。』


『なら、なぜなんでしょう…?

 あっ、お互いに殺しあうから…』


悲しいかな、諦めたような表情をする若い魔法職


『……それもあるが、大福が言ってたんだけど

 「私の回復一つであいつらが死ぬかどうか決まる。

 こんな気持ちいいこと他にない」って。

 そしたらもう、あいつらは血眼になって魔法職のレベルを上げたみたいだぞ』


なんとも言えない顔になるベテランの魔法職


『うわぁ…、チョコレート大福さんさすがだなぁ…』


『あっ、だから彼らは出発前にアイテム厳選してたんだな。

 どの回復アイテムを持っていくかで』


自分の体と同じくらい大きな大剣を持った戦士職がはっとしながら言う。


『あー、それに関してだが回復だけじゃなくて

 対人アイテムもあるみたいだぜ。

 昔のイベントで一緒に任務に就いたんだが、その時

 エドのやつが戦闘中に対人地雷を仕掛けてて、それを

 ゼリーのやつが踏んで、死んでたな。

 最終的にモンスターの剥ぎ取り出来なくて、絶対に許さんって言ってたよ。

 そっから、対人アイテムも厳選してるみたいだ。』


同じく筋肉の凄い戦士職が答える。


『もしかして、前回のイベントか?』


『そうそう。レアアイテムが欲しかったんだって。

 でも、エドの仕掛けた地雷が関係ないユーザーが踏んで死んだ時は

 そのユーザーぶち切れて、戦士のやつ素材巻き上げられてたよ。

 ゼリーと大福は大爆笑だったけど。』


『俺それ知ってるわ、大福のやつ

 同じことしようとして前線に来たもんだから敵にワンパンされてたな。

 どうしてもやりたいから何度も前線突っ込んで、挙句の果てに他のユーザーを

 巻き込んで、激怒したユーザーが大福の名前晒してたよ。』


サル顔の戦士職がケタケタ笑いながら言った。


『そっから大福のやつは即死魔法を取得してたみたいだ。』




大剣が思い出したような顔をしてみんなの方に向いて


『イベントと言えば、今回のイベント直前に各アイテムの

 素材集めを手伝ってたんだ。2時間くらいして

 そろそろ最後にするかって話をしてたら、ゼリーのやつが

 それまで回収してた素材を調合につぎ込んで、超高威力の爆弾をエドに向けて使ってたよ。

 大福の奴は気づいてたらしく、とっとと安全地帯に転移してたよ。

 そして、エドを殺した後ドロップアイテムはすべて焼却する鬼畜っぷりには震えたよ。

 貶めるために、ここまでするのかって…』


おぅ…と小さな声が上がる……



『だよなぁ……大福の奴もすることエグくてな。

 やつら、中身はあれだがレベルやスキルは申し分なくて

 たまーに、他のチームから支援依頼があるんだよ。』


筋肉が目を閉じながらポツポツ喋りだす。


『報酬として、レアアイテムを譲るって条件でな。

 それを大福のやつが、依頼じゃなくてフレンドに誘われたことにして

 「フレンドに誘われた。高難易度のダンジョンだから一緒に行こう」ってエドとゼリーに相談して

 2人は了承して、ダンジョンに向かったんだ。

 道中小競り合いはあったが、ダンジョンは無事攻略。大福のやつは攻略報酬とは別に

 レアアイテムを独り占めしたんだよ。

 後々、依頼だったことがエドとゼリーにばれてな。あの時の大福のせこさは見上げたものだったよ。

 1円単位で交渉してたからね。さすがの2人も眉を顰めてた。』


あっ、もしかしてチョコレート大福さんが、影で「セコイヤ」って呼ばれる理由って…


若い魔法職が、それほど遠くない場所で戦っている大福に向けてかわいそうな視線を送る。



サル顔の戦士が言う。


『そういえば、最奥の悪魔事件知ってるか?』


『いいえ、知りません…』


若い魔法職が首を傾げながら答える。


『あーー、あれか。くく、思い出すだけで…』


筋肉の戦士職が笑いを堪えるように声が震える。


サル顔はそれだと同意しながら続ける。


『一部のユーザしか知らないことなんだけどな

 海岸エリアにある、中難易度ダンジョンなんだがな、

 最奥にあるのが、そこそこレアアイテムでな、高難易度のダンジョンでとれるアイテムくらいの価値があるんだ。

 これといった強いモンスターはいないんだが、

 規模が大きくて最奥に行くまでに1週間はかかるんだ。

 んで、最奥の手前で聖者が上位悪魔召喚のアイテムを使ったんだ。

 もちろん、エドとゼリーを殺すためにね。』


『えっ、それって聖者さんも危ないんじゃないですか?』


『そうなんだけどな、聖者は悪魔退治の上級魔法を使えるから問題ないと思ってたんだろうね

 でも、1つ想定外だったのが、上級悪魔も(・・・・・)レベルアップ(・・・・・・)するんだ。

 そしたら、上級魔法じゃ削り切れなくて聖者も仏さんになったのさ。

 それに悪魔は倒さない限りいなくならなくてさ、あとはもう地獄絵図よ。

 最奥だから簡単に行けないわ、しかもくっそ強えから倒せないわ。

 レアアイテムが一時は10倍まで値上がりしてたんだよ。』


『あーー!!私あの時どうしてもそのアイテムが欲しくて

 素寒貧になりました…』


『そらタイミングが悪かったな…』


『…最終的にはどうなったんですか?』


『最終的にはガチプレイヤーが倒してたよ。1人で。』


『さすが、ガチプレイヤー…

 でもそこまでやったら、他のユーザから恨まれるんじゃないですか?』


『あー、そういえば昔あったな

 他ユーザから嵌められて、モンスターハウスに閉じ込められてた。』


戦士職の1人がニヤニヤしながら、話に入ってくる。


『何チームかでダンジョン攻略しててな、他のチームのやつらが

 モンスターハウスに転移する魔法陣があるのを黙っててな

 見事その罠に嵌ったんだよ。さすがにダンジョンの奥じゃなかったけどな』


思い出すかのように苦笑いする筋肉


『突破できず、みんな揃って仲良死だったよ

 悪魔の件で多少は反省してたみたいで、やり返すようなことはなかったって話だ。』


『まぁ、あいつらも他のユーザを巻き込まないようにしてるみたい出しな』




任務終了の時間が迫る。

チョコレート大福の魔法が戦士をとらえ、戦士の剣がこんにゃくゼリーりんご味を貫き

盗賊のトラップがエドを襲う。


3人が大ダメージを受けたと当時に、体が光出す。



それを見ていた戦士・魔法職たちは

これからどうなるか一瞬で気づく。同時に3人と逆方向に走る。


間に合えと上げた声も爆発音にかき消される。


次の瞬間、その場には誰もいなくなる。そして任務終了のメッセージが流れる。


誰もレアアイテムをゲットすることなく終わるイベント


その日の夜には某掲示板で3人のユーザ名が晒されていたのはまだ別の話



爆発落ちなんてサイテーですね。すいません。


やっと振り仮名の方法を覚えました。


3人で話を進めるはずが外野が予想以上に盛り上がったので好きにさせました。


クスっとなればうれしいです。


3人の話も面白かったので次回投稿したいです。


今回も活動報告書きます。のちのち御覧ください。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ