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4-14 陰陽師からの警告


翌日の早朝。


周りの山々が、紅葉で秋の風景に成りつつある通学路を、幼馴染みの香住(かすみ)と一緒に歩く。


10月に入ったばかりの日差しは、まだ強い方ではあるが、風が冷たいので、上手くバランスをとっている様だ。


秋の収穫祭(しゅうかくさい)も近いのだが、今年の神楽舞(かぐらまい)は、神使(しんし)桔梗(ききょう)さんにお願いしてある。


何故なら、旧暦の神無月(かんなづき)には、国津神(くにつかみ)として神在月(かみありづき)出雲(いずも)へ入って置かねばならないからだ。


中間テストもあるって言うのに、陰陽師(おんみょうじ)とか、オロチとか、本当にやる事が山積みになっている。


そんな忙しい毎日でも、せめて今日の通学が、朝から走らずに済んでいるのは、ささやかな幸せだった。


というのも、朝早くから香住(かすみ)の悲鳴で叩き起こされたからだ。



「まったく……心臓に悪いから止めてよね」


隣を歩きながら、文句を言ってくる幼馴染みの香住(かすみ)



そう、昨日……丑の刻参(うしのこくまい)りを目撃し、簡単な事情聴取とか、色々あって帰って来たものの、連戦の疲れもあって、お風呂に入ったまま寝てしまったのだ。


そのまま風呂の中で寝ている僕が、溺れているのだと勘違いし。僕を迎えに来た香住(かすみ)が悲鳴を上げて、眼が覚めたと言うのが、今朝の出来事。



「だいたい。水神の龍に成った僕が、水の中で溺れる訳ないでしょ」


「そんな事言っても、水の中で息できるのを忘れてたんだもの……普通、吃驚(びっくり)するってば」


うん、実は僕も忘れてたよ。



息苦しく無いし、暖かいしで……そのまま寝ちゃったんだ。


全身が柔らかい布団にくるまってる様な感じだったし。水神の龍が水の中に棲むって言うけれど、あんな感じなんだろうなぁ。



「案外悪くないかも?」


「バカ! 本当に心配したんだから! もう二度とやらないでよ」


「でもさ、朝まで水に()かってたせいで、(みそぎ)の時間も省略できたし、お陰で走らなくて済んでるんだよ。ちょっとお得な気分」


だいたい、心臓に悪いだって? そんな程度で、香住(かすみ)緋緋色金(ひひいろかね)で出来てる様な、頑丈な心臓が、止まる訳ないでしょに。


言うと投げられそうだから、言わないで置くけど……



千尋(ちひろ)もやっと、水の中の居心地の良さに、気が付いたか」


僕の頭の上に乗った、小さいセイがそう言ってくる。


「もう、セイさんまで……千尋(ちひろ)は、つい半年前まで人間だったんですよ。水の中に沈んで居れば悲鳴も上がります!」



そう言って頬を膨らませる香住(かすみ)に僕が――――――


「でもさ、香住(かすみ)だって淵名(ふちな)の龍神さん乗せてて、龍の乗り手……いや、乗られ手か? まぁ、ドラゴンライダーとかに成ってるでしょ、もしかしたら水中で息出来たりして?」


「どうだろう……試した事ないけど……例え水中で息が出来たとしても、私は風呂の中で寝たりはしないわよ!」


まあ、そうだわな。今度は、香住(かすみ)の御両親が悲鳴を上げるだろうし。



ウチの場合は、人間の婆ちゃん以外、水氣(すいき)の人外ばかりだものね。水中で呼吸が出来るなんて、普通の事だと思っているから、悲鳴なんて上がらない。


婆ちゃんも驚かないだろうなぁ……水神の龍の事、良く知ってるみたいだもの。



「そう言えば今朝ね、伊織(いおり)さんからチャット型アプリで聞いたんだけど、昨日大変だったんだって?」


「あー。丑の刻(うしのこく)マイラーね。まさか、釘打ち銃(くぎうちじゅう)で撃たれるとは、思わなかったけど」


「マイラーって何よ……それに釘打ち銃(くぎうちじゅう)!? それって大工さんが使うヤツよね?」


「そそっ、それを改造してあったんだって」


普通は安全装置も付いてるので、人に向けて打てない様に成って居る。


それをわざわざ改造して、人に向けて撃つとは……儀式を見られてしまって、呪いが数倍返しで跳ね返ると思い、追い詰められてキレた感じかな?



その後も朱雀(すざく)戦の話など、香住(かすみ)が帰った後の事を話しながら学園へ向かう。


いつもは走っての通学なので、香住(かすみ)とこんなにゆっくり話したのは、久しぶりであった。


話の内容は、女子高生が話す話題じゃないけどね。



まあ、(あやかし)関係でなくても、香住(かすみ)が……新しく出来た隣町のカフェが、人気なんだって。今度行ってみようよ! なんて事、言うはずがない。



そうだな……香住(かすみ)なら……人気のプロレスチケットが取れたんで、千尋(ちひろ)も一緒に行くわよ! 拒否権はなし!! と言うのが、しっくりくる。


他人の趣味に、とやかく言うつもりはないが、僕で技を試すのだけは止めて欲しい。



んー。僕の周りに、女子高生のお手本みたいな人は、居ないのか!?



小鳥遊(たかなし)先輩……は、無理だな。見た目だけは超美人なのに、すごく勿体無(もったいな)い。


試しに、小鳥遊(たかなし)先輩が……新しく出来た隣町のカフェが、人気なんだって……


駄目だ……想像出来ないと、脳が思考を拒否してきた。



小鳥遊(たかなし)先輩だと……父の蔵書の奥で、新しい倶利迦羅剣(くりからけん)を手に入れたわ。千尋(ちひろ)ちゃんも試し斬りに着いて来なさい。(ちな)みに拒否権は無いわ。


……うぁ。凄く鮮明にイメージ出来た。


だいたい小鳥遊(たかなし)先輩に、カフェとか、そう言う単語が合わな過ぎる。



「失礼ね」


「うあっ! 出た!!」


噂をすれば何とやら……小鳥遊先(たかなし)輩が、学園まであとちょっとと言う所で、待ち構えていた。


というか、声に出して無い筈なんですが……思考を読まれた?


「失礼だと思わない?」


「な、何がでしょうか?」


千尋(ちひろ)ちゃん。京で面白い事やってるそうじゃないの! 私に声を掛けないなんて、失礼だわ!」



そっちか!! 思考読まれたと思っちゃったし!! 本当に吃驚(びっくり)したぁ。



「あらぁ、通学路が真逆な先輩、おはようございます」


さらっと嫌味(いやみ)をいう香住(かすみ)に――――――


「おはよう高月(たかつき)さん。高月(たかつき)さんの様な素人(しろうと)が出しゃばって、千尋(ちひろ)ちゃんの足引っ張ったりしたら、大変よねえ」


「お生憎様(あいにくさま)。ちゃんと四聖獣の一人、青龍(せいりゅう)を倒しましたよ」



それを聞いて、先輩は僕へ視線を向けて来るので――――――


「本当ですよ。ちゃんとギブアップで、僕がカウント取りましたから」


極め技は、逆エビ固めだった。



「嘘でしょ……素人(しろうと)高月(たかつき)さんが……」


先輩は相当ショックだったようで、持っていた学校指定カバンを落としていた。


「ふっふっふ。このナックルのお陰ですよ」


香住(かすみ)はそう言って、胸元からアクセサリーを取り出すかの様に、鎖で首から下がったナックルを見せる。


「ちょっと何よそれ! (あわ)朱色(しゅいろ)の金属……まさか!?」


「そうですよ。伝説の金属……緋緋色金(ひひいろかね)です」



そのナックル型の神器は、見た目以上に凶悪だけどね。


今は緋緋色金の製法自体が失われ、鍛冶の神以外では、溶かす事すらできないだろう。


もしかしたら、鍛冶助手として製法を見ていた根小屋(ねごや) 信一(しんいち)さんが、将来に人の手で、神器を打ち上げる事が出来るかも知れない。


ロマンだなぁ。



僕が人間の可能性にロマンを感じていると――――――



「何かと思えば……余り物で創った神器じゃない。私にだって仏道の神器ぐらい、あるんだから」


先輩は、そう言って三鈷杵(さんこしょ)を出し、例の不動明王剣(ふどうみょうおうけん)倶利迦羅(くりから)を見せびらかしてくる。



すみません先輩。余り物の神器の(たま)は、僕が持ってる方なんですよ。


本当の事が言えずに少し泣く。



すると――――――



「朝から元気だな小鳥遊(たかなし)。また変な物を学園に持ち込んで……はい、没収~」


「なっ!! 指導教員の松岡(まつおか)!?」


話しながら歩いていたので、気が付かなかったが、何時(いつ)の間にか校門を抜けようとしていて、生徒指導(せいとしどう)の先生の目に止まったらしい。



松岡(まつおか)()()()()な。小鳥遊(たかなし)……お前も来年は最上級生で、進学か就職だろう? こんなので遊んでないで……」


「それは立派な商売道具です!」


小鳥遊(たかなし)先輩の言葉を聞いて、()れがか? と不思議そうに三鈷杵(さんこしょ)を見回す指導教員。



普通は分からないよねぇ。仕方がない、助け舟を出すか――――――



「先生、それは仏道の法具(ほうぐ)ですよ。もともと密教の法具として、密教の教えと共に、遣唐使(けんとうし)が大陸から持ち帰ったもので、安鎮(あんちん)霊器(れいき)として(もち)いられるんです」


「ほう……瑞樹(みずき)……詳しいな」


「一応、神仏習合(しんぶつしゅうごう)で合わさった事もあるので、仏教の方も少しだけ勉強したんです」


「あぁそうか……お前の処は神社だったな、将来は宮司(ぐうじ)か何かか?」


「そのつもりです。小鳥遊(たかなし)先輩の三鈷杵(さんこしょ)は、ご実家がお寺ですので、お守り感覚で持っているのだと思いますよ」


「なるほど……でも、学問には必要ないモノだからな、放課後に返すから取りに来なさい」


結局没収(ぼっしゅう)されてしまった。



「おのれ~松岡(まつおか)


小鳥遊(たかなし)先輩、教員を呼び捨てにするのはマズイですって……それに、永遠に没収(ぼっしゅう)された訳で無く。放課後には返すって言うんですから、良かったじゃないですか」


これが学園祭の途中なら、出し物の一部です! て事で、通ったかもしれないが、学園祭は9月最終週で終わってるしね。


「だいたい、なんで高月(たかつき)さんの神器がオッケーで、私の俱利伽羅剣(くりからけん)が駄目なのよ」


「さぁ? 先輩の普段の行いが悪いせいじゃ、ないんですかね?」


「もう……香住(かすみ)も追い打ち掛けないの!」


相手が小鳥遊(たかなし)先輩だと罵倒(ばとう)も容赦ないんだから……



まだ納得がいかなそうな、小鳥遊(たかなし)先輩と昇降口(しょうこうぐち)で別れ、僕と香住(かすみ)は1年の教室へ向かう。



「よっす! 今日も二人とも仲が良いねぇ」


「おはよー正哉(まさや)。お前ほどじゃないけどね……」


鴻上(こうがみ)さんと、他の人には見えない座敷童(ざしきわらし)ちゃんが、腰にしがみ付いた正哉(まさや)に、嫌味(いやみ)を返してやる。



(うらや)ましいか?」


「全然……」


人外に好かれるのは、僕も一緒だし。今でもチョーカーに化けたオロチの巳緒(みお)や、頭の上にセイと赤城(あかぎ)さんが乗っかってるからね。


お互い、人間に好かれないのは、何かの呪いなのかと思ってしまう。



そんな正哉(まさや)にしがみ付いた鴻上(こうがみ)さんが、僕のチョーカーを睨むように見詰めてくる。


あ、ヤバっ! どっちが姉に成るのかは分からないが、同じオロチの一部同士。


本来なら我先にと、オロチの心臓を手に入れようとする、ライバルなのだ。


だが、そんな修羅場モードも直ぐに終わる。


何せ鴻上(こうがみ)さんは、もう正哉(まさや)一筋(ひとすじ)であり、オロチの心臓には興味ないとの事。鴻上(こうがみ)さんの(にら)みの眼は、すぐに崩れニヤけた顔で、正哉(まさや)に擦り寄った。


そういう巳緒(みお)の方も、あの廃鉱山の一件以来、心臓を怖がって近寄ろうとしないので、実質この二人は心臓争奪戦からリタイヤしたと言って良いだろう。


僕はそのまま、自分の席に行って1時限目の用意をしていると、机の中から一枚の紙が床に落ちた。


そんな紙切れを見て、セイが念話で――――――


『お? ラブレターか? 可愛い(めす)なら良いな』


『良くねーし! だいたい、願い事かも知れないだろ?』


一応こんなのでも、僕は国津神(くにつかみ)だし。


『いや、これは……(おす)の字ですね』


僕の頭の上から文字を見て、そう言ってくる赤城(あかぎ)の龍神さん。そう言われてみたら確かに、10代女子に良くみられる丸文字とは、かけ離れた文体だった。


『なになに……今日のお昼に屋上にて待つ……』


『果たし状か!! 龍神に喧嘩を売るとは命知らずな奴め!!』


『待て待て待て。果たし状なら、人目の付かない北校舎とか、外の校舎裏とかを指定するでしょうに!』


秋のすごし易い気候で、昼休みの屋上なんか人で一杯だし。そんな所で果し合いなんかしないってば。


そもそも、現代の世に果し合いって……漫画の見過ぎだろ?



『果し合いじゃ無きゃ、何だっていうんだ?』


千尋(ちひろ)さんが(めす)に成ってることだし、人間の(おす)から告白とか?』


赤城(あかぎ)さん、それは無いわー。もっと美人な人がいっぱい居るし。



『もし、俺の嫁にちょっかいを出してきたら、頭から(かじ)ってやる』


ヤメロって……


『まあ、お昼休みに成れば、相手が分かるでしょ』


あれこれ想像していても仕方ないので、大人しく授業を受ける。



そして――――――念願のお昼休み。



僕は屋上への階段を昇って行くが――――――


「なんで、香住(かすみ)小鳥遊(たかなし)先輩も着いてくるんですか!!」


「私はねえ、千尋(ちひろ)の保護者なのよ。相手が誰なのか見届ける義務があるの」


「良いから香住(かすみ)は神器をしまってよ……それじゃあ、先輩は?」


「私は屋上でお昼を食べようと思っただけよ」


ふーん。鞭を持って屋上にねえ……二人とも……武器を装備してあって、どう見てもお昼を食べようとしているようには見えないし。


そんな二人を見て、もう止めようと思っても無駄だと分かったので、相手が死なないよう、僕が気を付けないと……


これから起こる惨事(さんじ)に、足が重くなりながらも、屋上へたどり着くと、その扉を開ける。


屋上は、文化祭の時に、見える子のマイちゃんの友人が、()かれた(あやかし)に投げ落とされた事もあり、新しく背の高いフェンスが取り付けられていた。


一応名目上は、前の背の低いフェンスに上って遊んでいて、落っこちたと言う事に成ってるけどね。


どちらにせよ、怪我が無くて良かったわさ。



さて、呼びだした相手は何処(いずこ)? とキョロキョロ見回していると――――――


「やあ、瑞樹(みずき)君。文化祭以来だね」


そう言って現れたのは、晴明(はるあき)さんの(おい)っ子で、陰陽師(おんみょうじ)見習いの有村(ありむら)浩人(ひろと)君だった。


「あー!! 誰かと思えば、犬神小僧(いぬがみこぞう)じゃないか!!」


「セイ、人目があるから小声でね」


一応セイ達には、姿消しで視界線を曲げる術を掛けてあるけど、声だけは聞こえちゃうからね


「なんだ……呼びだしたのは有村(ありむら)君だったの……じゃあ、お昼にしましょうか」


一気に興味を失くしたように言ってレジャーシートを広げ、弁当を開ける香住(かすみ)達。



「すみません……ご期待にそえる様な者じゃなくて……」


半泣きに成っている有村(ありむら)君の肩をポンっと叩くと、一緒に食べる様に(うなが)す。


僕がレジャーシートに腰かけるなり、直ぐに頭の上から飛び降りて、エビフライに(かじ)り付く龍達。


身体の大きさが小さいままなので、(かじ)り付くと言うより、抱きしめ食いしている。



有村(ありむら)君、はいお茶。で? どうしたの?」


お茶を渡し、呼びだした経緯を聞いてみる。



「あっ、それなんだけど……今朝早く、()れが届いたんだ」


そう言って、スマホの画面を見せてくる。そこには――――――



「おめでとうございます。あなたに1億円が当たりました!! だって……」


「えええぇ!? 間違えた、それ迷惑メールだった! こっちだよこっち」



慌てて画面を切り替えて、再度渡して来る有村(ありむら)君。ドジっ子だなぁ。



「なになに……瑞樹神社(みずきじんじゃ)襲撃計画(しゅうげきけいかく)ぅ!?」


僕の読み上げた文面を聞いて、全員の食べていた手が止まる。


「誰よ! そんな馬鹿なことを、言ってくる(やから)は……」


香住(かすみ)達まで身を乗り出して、スマホの画面を(のぞ)き見して来た所で、有村(ありむら)君が――――――


「それ華千院(かせんいん)本家からのメールでね。どうも今計画しているモノの邪魔に成る……瑞樹(みずき)の龍神とその関係者を、足止めしろって内容みたい。末端の僕らみたいなのには、何を企んでるかまでは知らされてないけどね。おそらく関東住みの陰陽師(おんみょうじ)全員に、メールの通達が行ってるはず」


確かに、メールを要約(ようやく)するとそんな感じだが、中には直接龍神に(いど)んでも(かな)わないだろうから、瑞樹千尋(みずきちひろ)の祖母を拉致(らち)って足止めしろ! なんて過激な事まで書いてある。


馬鹿な奴らだ。婆ちゃんは僕が本気出しても、捕まえられないぞ。逃げ道を(いく)つも用意してる人だからね。婆ちゃん捕まえるぐらいなら、僕を捕らえた方が早いぐらい。


だが、他が問題だ。香住(かすみ)の両親の個人情報や、正哉(まさや)の個人情報まで載っているのが……



「もうお構いなしだな……」


セイが、エビフライを尻尾まで()み込みながら言ってくる。


「それだけ追い()められてるって事でしょ」


しかし困ったな……婆ちゃんは簡単にやられる人じゃないから良いけど、他の人……特に香住(かすみ)の両親や正哉(まさや)の家族なんか、何も知らない一般人だし。


いや、正哉(まさや)の処は大丈夫かな? 座敷(ざしき)ちゃん居るし。あそこを襲撃して、オロチの鴻上(こうがみ)さんが、黙って居る訳無いだろうしね。


問題は香住(かすみ)の両親……


「今回は香住(かすみ)は残りなよ。家で大人しくして居れば、手出しはしないと思うし」


なんなら、西園寺(さいおんじ)さんに連絡とって、襲撃(しゅうげき)がある事を話し、警察官さんを何人かを回してもらえないか、頼んでみるって言うのもある。



そんな時、小鳥遊(たかなし)先輩が――――――


「ちょっと!! これウチの襲撃が書かれてないけど? どういう事!?」


怒鳴りながら有村(ありむら)君に詰め寄った。


「いや、そんなこと言われても……書いて送って来たの、本家の人間だし」


「なんだ? 祓い屋の娘は、戦力外通告されたのか?」


また火に油を注ぐようなことを言うセイ。


巫戯(ふざ)けてるわね……」


「ちょっと先輩! 有村(ありむら)君の首が()まってるってば」


「ぐるぢぃ……」


酸欠で青く成った顔の有村(ありむら)君から、小鳥遊先(たかなし)輩を慌てて引き剥がすと、小鳥遊(たかなし)先輩が――――――


「あったま来たわ!! その襲撃してくる陰陽師(おんみょうじ)達に、密教の神髄(しんずい)を叩き込んでやるんだから!!」


「え? 先輩……それじゃあ……」


高月(たかつき)さんの家は任せなさい、ウチを襲撃のチェックから外した事を、後悔させてやるわ!!」


そう言って立ち上がる先輩。


「ちょっと先輩? まだお昼だし、たぶん襲撃は日が落ちてからですよ」


「ふふっ、だったら今から、俱利伽羅剣(くりからけん)を取り返して置かないとね」


俱利伽羅剣(くりからけん)って相手は人間ですよ。あんな炎で出来たレーザーブレードみたいなので切られたら、死んじゃいますって」


先輩は立ち上がると、そのまま屋上の出入口から、出て行ってしまった。


全然聞いちゃいねえ……


それに、放課後まで大人しく待てば、普通に返って来るって松岡(まつおか)先生も言ってたのに……どうして大人しく待てないかな。



「でも良かったね香住(かすみ)。先輩が居れば怖いもの無しだよ。外に先輩、内に香住(かすみ)ならば、まず安心だし」


千尋(ちひろ)、何言ってるの? 私も京に行くわよ!」


「ええええ!? だって香住(かすみ)の御両親が……」


「大丈夫よ。先輩本人の前じゃ言わないけど、強さだけは信頼できるから。それに、このままやられっ放しって言うのは、私らしくないのよ!!」


そう言って、ナックルで虚空(こくう)を打ち抜く。


香住(かすみ)さん。マジでお怒りですよ。


これは、陰陽師(おんみょうじ)の何名かは、病院送りだな……



「取り合えず、京に着いて来る者は?」


「ふっ! そんなの決まってるだろ。ここに居る全員だ!」


セイの言葉にみんなが頷く中で、有村(ありむら)君が――――――


「あのぅ、ボクは行きませんよ。帰ったら布団被って寝てますから」


「分かってるって。有村(ありむら)君が折角襲撃を教えてくれたんだもの、有村(ありむら)君には手出しはしないよ」


そう言われて、有村(ありむら)君は胸を撫で下ろしていた。



さて、瑞樹(みずき)の地に残る者、全員に知らせて置かないとね。正哉(まさや)とか、鴻上(こうがみ)さんとか……



あと(やしろ)の護りは、神使(しんし)桔梗(ききょう)さんと、荒神(あらがみ)(おおかみ)のハロちゃんに頑張って(もら)わねば。



こうして北関東で、瑞樹(みずき)の者と陰陽師(おんみょうじ)の攻防が、幕を開けるのだった。




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