2-06 痴女じゃないから
すみません、体調回復しませんので短めです
処変わって、北関東の瑞樹神社
2学期の始業式から、これと言って何事も起きず、翌週末に学園祭を控えていた
そんな日曜日の朝に、珍しい顔を発見する
「あれ? 正哉じゃないか……ウチに来るなんて久しぶりだね。妹さんのストーキングは諦めたの?」
「だー、ストーキングじゃねえっての! 護衛だ!」
護衛ねぇ……
「でも本当にどうしたんだよ。あっ、学園祭のメイドカフェのメイド服は着ないからな」
あの後、何度か香住とシュミレーションしたけど、富川さん? いや……富永さんだか……3人ローテーションでも、かなりギリギリな感じだった
料理担当、盛り付けとか飲み物担当、下げたお皿の洗い物担当などなど
もしかしたら、当日お昼休憩もなしかもしれない
洗い物ぐらいは、他の女子でも出来ないのかと有志を募ってみたら、数名が名乗りを上げてくれた
━━━━━━━━が、時間を測る為に練習でやってみたところ、だいぶグラスや皿が減ってしまったのだ
割れた破片で怪我人が出無くて良かったが、家庭科の教員には、割ったモノのお叱りを受けることになってしまい、結局僕ら3人で回すことに……
圧倒的に料理場のスタッフが足りない。そんな状態で、僕が給仕へ出る訳にはいかなかった
「いや、その事じゃねーんだ……セイの旦那は居るかい?」
今日の正哉は、何だか歯切れが悪い。何か企んでいるのかな?
「……セイの奴なら、徹夜で録画したアニメの編集してると思うよ」
本当にそういうところは、凝り性というか、マメなやつなんだよな……少しは神社の方の手伝いもしてくれたらいいのに
ん? 待てよ━━━━━━━━
セイと正哉? 取り合わせが妙だ
「じゃあ、あがらせて貰うぜ」
そう言って、玄関をくぐろうとする正哉の肩を、僕は手を伸ばして掴む
「正哉、ちょっと待った! 僕を遊びに連れ出すって、何時ものパターンなら分かるけど、セイに用事ってなにするのさ」
ジーっと正哉を見つめていると、目を反らしたので、明らかに何か隠しているのが見てとれる
「な、なんだ千尋、チベット砂狐のような目で見ても、今日は忙しいからダメだぞ」
「その忙しいからダメは、何時もなら僕の台詞なんですがね」
大体は強引に連れ出されて、断われた試しはないけど……
「たまには、困らせてる方へ回るのも良いもんだろ」
良くないよ!
「困らせてるって自覚あったんかい!」
「ふっ、舐めるなよ千尋。高月ほどじゃ無いにせよ、お前との付き合いは、2番目に長いと自負している。千尋の困った顔も可愛いんだぜ」
おまっ! コノヤロウ……
確信犯だったんかよ
遊びに出るのは、また今度なっと言って、ウチへ入る正哉の後ろを着いていく
廊下を突き当たった角で歩みを止めると━━━━
「千尋……何でシューティングゲームのオプションみたいに着いて来るんだよ!」
「そこは、オトモの猫にして欲しいな、可愛いし」
「主人より強いオトモが居るかよ!! だいたい、千尋は龍なんだし狩られる側だろ」
「僕なんか下っ端も良いところ。淤加美様の足元にも及ばないよ」
淤加美様は水だけでなく、風雨も操れるからね。上手く雷雲を喚べば雷も落とせそうだし……それを考えると、天候を自在って凄いな
「古龍クラスを引き合いに出されても、俺困るんだが……セイさんって龍神じゃなくタダの龍に成ったんだよな?」
「そうだね。ただ長生きしてる分、経験値入ってるから、単純な水の放水だと僕よりセイの方が強いよ」
切れ掛かってた生命力も、龍玉で回復したしね
「成る程……賢者から魔法使いにクラスダウンしても、魔法使いレベル99なら戦士のレベル1より接近戦が強いって事か」
「レベル1は酷くない? せめて5位にしてよ」
セイは、瞬間の出力なら龍神だった頃と同じらしいけど、その威力を維持できないって言ってたな
まあ、今では、これまで契約で縛られてた分、第二の人生ならぬ神生を謳歌している
「そうか……じゃあ問題無く龍脈を開けるんだ……良かった」
「持続力が無くなっただけで、セイはアレでも龍だからね……て、龍脈? まさか、龍脈で妹さんを追う気なんじゃ?」
「うっ! そ、そんな事……」
目が完全に泳いでるし、東北まで行く気だな
僕は、正哉のズボンのポケットから出ている紙に気が付いて目をやると、正哉が慌ててポケットの奥へ押し込んだ
「正哉、それ中学の旅行のしおりだろ?」
「違うね。これは……あれだ……駄菓子屋に良く売っている、指から煙がでる紙だ」
「ああ、あの『ようかいけむり』ね。あれ紙に付いてる『五酸化ニ燐』が指の水分に反応して煙が出るんだよ」
「知らなかったそんなの……本当に変な事詳しいな千尋、理系だっけ?」
「いや、不思議な事があると調べてみるんだよ」
「ただの雑学君じゃんか」
雑学君で悪かったな
「懐かしいから、やらせてよ」
僕は正哉のポケットへ手を突っ込む
「わぁ、やめろ! それは俺の愛棒だ! えっちー」
「ほら! いい加減観念して、出せってば」
僕と正哉が、じゃれあって居ると━━━━━━
「千尋……お前という奴は、俺という婚約者が居るくせに、他の雄と……」
面倒くさい時に現れるセイ
「ガチ泣きするなよ! 別に浮気してる訳じゃないから!」
「あんたの嫁さんに襲われる」
「正哉、お前誤解されるような事を……」
頭にきた僕は、抵抗する正哉のズボンを力ずくで脱がせると、ポケットから旅行のしおりを取り出した
やっぱり東北へ行く気だったか━━━━━━
「千尋様、味をみていただ……」
「き、桔梗さん!? これは別に……」
良く見たら、現状は最悪だった。ズボンを剥ぎ取られパンツ1つで泣いてる正哉と、泣きながら床に『の』の字を書くセイの間にズボンを持って佇む僕
「し、失礼しました」
そういって、逃げるように去っていく桔梗さん
あぁ……絶対誤解してるよ
「僕、別に痴女じゃないからね!」
悲痛な叫びが、こだまするのだった




