2-05 暗躍する者達
すみません。この間から、体調が悪く文字数少な目です
今回は京都勢だけの話となります。
K都府、某所
まだ残暑厳しい、9月の中旬を越えたばかりなのに、ドテラを着込み鍋を囲む3人の姿があった。
8月末に、沼田氏を助け出したは良いが、ラボが出来るまでは、特にすることもないため、こうして鍋を突ついているのだ。
「前回は京風すき焼きでしたから、今回は鍋にしてみました」
狐巫女のお玉さんが、小皿と卵を渡してくるその手には、毛糸の手袋が装備されていた
「季節の上では秋とは言え……この寒さ、尋常じゃありませんな」
そう言いながら、ドテラの下に白衣を着込んだ沼田が卵を小皿に割り入れる
研究所じゃあるまいし白衣など脱いで、もっと厚手の服を着込めば良いのに……
どうやら、沼田本人の拘りで、白衣だけは絶対はずせないとの事。外せないって……その白衣、呪いでも掛かって要るのか?
「この寒さも仕方あるまい。火之迦具土が身体を維持するために、周囲の温度を奪っているからな……」
ガスコンロの炎を全快にして要るが、沸騰するのに時間が掛かってしまう
と言うより、ガスコンロが負けそうだ
お玉さんの狐火も出してもらい、どうにか鍋がグツグツ言い出した
セルジュが開けた大穴のお陰で、屋内の温度が少しだけ上がったが、屋敷の周りの気温が少し下がってしまった。まぁ低体温症で病院行きになるより良いので、穴はそのままである
「あ、晴明様。こちら煮えましたよ」
そう言いながら、鍋の白菜や椎茸や豆腐を装る狐巫女
「おい! なんで野菜ばかり寄越すのだ? セルジュが新たに送って寄越した、宮城の牛肉はどうした肉牛は!?」
「お肉はまだ煮えてませんよ」
新しい肉を鍋に投入しながら知れっと言う
「お玉さんや……自分の小皿に山盛りになってる物体は、煮えた肉じゃ無いのか?」
「これは椎茸です」
このアホ巫女は……高級肉を椎茸と言い張るか
すっ惚ける、お玉さんの頬を引っ張っていると━━━━━━━━
「それで、私を監獄から連れ出したのは、何か思惑があるのでしょう? ラボまで造って下さるし……そろそろ、お聞かせ願いたいのですがね」
沼田が箸を置き、そう切り出した
「実は、神話のオロチを複製した、貴方の手腕を貸して欲しい」
「ほう……それでこの沼田の力を借りたいと?」
「今の現状を見てもらった通り。迦具土神に実体がない為、周囲の温度を吸収しやっと身体を保っている。そこを何とかして貰いたい」
「つまり、迦具土神の実体を創れと?」
「出来ぬか? プロフェッサー沼田」
「……難しいですな……オロチの場合、遺伝子情報をオリジナルから採取できましたが、迦具土神は既にオリジナルが霊体というか……思念体になってしまって居ます。DNAを採取出来るか……」
それに、DNAが採取出来たとして、迦具土神を培養するのに、培養液が沸騰してしまうだろうとの事だった
「そうですか……プロフェッサー沼田でも無理ですか……」
「むむっ!? 私に不可能はありません! 確か……神話で迦具土神の身体は、沢山の神に成ったと書かれています。なら分離した神々を複製し、迦具土神に与えれば良いのです」
「簡単に言われるが……どうやってDNAを集める?」
「ふっ、愚問ですな。来月になれば簡単に手に入ります。それも全員分」
来月……10月は━━━━━━━━
「ハロウィンですね!」
肉を頬張りながら、横槍を入れるお玉さん
「違うわ! アホ巫女! 神在月ですよ!! 出雲へ行けばDNAなど取り放題。何せ日本中の神々が集まるのですからな」
成る程、確かに名案ではあるが、下手をしたら神々に塵にされるぞ
「う~ん、検討して置こう。DNAは髪で良いのか?」
「出来れば口の中の粘膜が良いですね。人間や動物とは違った塩基配列なので、しっかりしたモノ程、複製の精度は上がりますから」
ますますDNA採取が難しくなったな……
セルジュが東北で頑張っているのだし、我等も神在月前に出来ることをやっておこう
「神を複製する為、他に必要な物を書き出してくれ」
「ならば助手が欲しいですな。私とは別に収監された助手で、名前は……八月一日君。彼が必要です」
「ほう、その助手君はどこに?」
「場所は分かりませんが、彼が居なければ神の複製は無理です」
ふむ。八荒防の内部にいる潜入員に連絡を取ってみるか
西園寺の奴め、自分の組織に裏切り者が潜んでいようとは、思いもよるまい
「さて、今は鍋を楽し……おい! 肉が無いではないか!」
「ほんほうだ……ほうひはんへふはね」
肉を口いっぱいに詰め込み、リスのように膨らんだ頬で肉を食うアホ巫女
「本当だ、どうしたんだって? お前の食ってるそれは何だ!」
なんと言う食い方……高級牛肉が勿体無い。もっと味わって食べれば良いのに
「ふう。美味しかった」
「晴明殿、全部食われましたよ……」
「……プロフェッサー沼田。あの巫女解剖して良いから」
「え!? ちょっ。メス握って……冗談ですよね? お肉買ってきますから許してください!」
泣きながら、お肉を買いに行くお玉さんの背中を見送り、スマホを取り出すと、潜入員に連絡をとるのだった。




