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龍神の花嫁 八俣遠呂智編(ヤマタノオロチ)  作者: 霜月 如(リハビリ中)
2章 2学期開始 東奔西走
31/328

2-02 担当決定

正哉(まさや)、学園祭どうすんだよ」


東北行きを宣言する正哉(まさや)に、冷静になれと(さと)すのだが


「無論、両方とも成立させる」


「あのね、斎藤(さいとう)君。中学校の修学旅行と、ウチの学園祭の時期が丁度被るのに、両方とも出るなんて不可能でしょ」


香住(かすみ)の言うとおり。そもそも、そこまで追いかけて、妹さんをストーキングする必要ないだろ? いい加減にしないと、家族でも訴えられるぞ」


「馬鹿野郎! 紗香(さやか)のヤツ……夏休みのお祭りで、男の友達が居たんだぞ!」


夏祭りまでストーキングしてたのか……警察に追われたのに、懲りないヤツ


「はぁ……紗香(さやか)ちゃんだって15でしょ。彼氏の一人や二人居ても当たりま…………ふっ……居ないわね…………」


「高月……自分で言ってて、自分にダメージ受けんなよ」



なんか今、香住(かすみ)にジーっと見られた様な……


「ほ、ほら。香住(かすみ)にだって、いい人が出来るよ」


僕がそう言うと、正哉(まさや)香住(かすみ)がヤレヤレと頭を振る


なんだよその反応……



「とにかくだ、その野郎を亡きものにするしか方法がねーんだ」


「待て待て待て、正哉(まさや)がそこまで出張らなくも、小百合(さゆり)ちゃんが着いてるでしょうに」



この学園の2年生である、小鳥遊 緑(たかなし みどり)先輩の従姉妹の小鳥遊 小百合(たかなし さゆり)ちゃんと、正哉(まさや)の妹の斎藤 紗香(さいとう さやか)ちゃんは親友で、紗香(さやか)ちゃんの部活が無い日は、だいたい一緒に居るのだ


その紗香(さやか)ちゃんも、夏の大会で敗退してしまった為。時間が開いて、二人共ほぼ毎日一緒に受験勉強をしているはず


受験と言っても、この学園と系列が同じなので、そのまま簡単なテストで上がれるのだ。入学と言うより、学年末テスト感覚である


寧ろ、廃校になった隣街からの編入組の方が大変で、テストも難しいと聞くからね。難しい編入試験を合格しているので、編入組の方が実際成績良いし


そう言えば鴻上(こうがみ)さんは、隣街からの編入組だったな……


紗香(さやか)ちゃん達は地元組だから、余程酷い成績じゃなければ、神経質になる必要はないのだが……元々、二人共仲が良いからね。微笑ましいほどベッタリだ


今風に言えば、『(とうと)い』ってヤツかな


そんな小百合(さゆり)ちゃんが、親友の紗香(さやか)ちゃんに、悪い虫が着くのを黙って見ているわけが無い



「ああ……あの性格のキツイ、紗香(さやか)の友人な。確かにあの子なら、紗香(さやか)を野郎の手から護る役を、任せられそうだが……あの子、紗香(さやか)が本気で好きな相手だと、応援しちゃうだろ」


「まぁ、それが親友じゃないか? 僕だって正哉(まさや)に好きな人が出来たら応援するし」


ガタン! と机を蹴る音を立てて、僕を睨む鴻上(こうがみ)さん


親友の恋の応援も許して貰えないのかよ……


それとも、正哉(まさや)と他の女の子をくっ付け様とするのが、気に食わないのか? 別に正哉(まさや)をシスコンから真っ当な道へ引き摺り戻してくれるなら、鴻上(こうがみ)さんでも応援するよ


筋金入りのシスコンなので、生半可では無理だろうけど……



取り敢えず、鴻上(こうがみ)さんの方は極力見ないようにして、話を続ける


小百合(さゆり)ちゃんの許しが出るぐらい、好印象の男の子なら問題ないじゃん」


「駄目だ! 俺が許してねえ!」


正哉(まさや)……お前は娘を嫁にやりたくない父親か!」


「俺が親父に見えんのかよ!? 兄に決まってるだろ!」


「威張って言うなよ……どうすれば認めるのさ」


「そうだな……俺より強くて、紗香(さやか)を守ってやれる奴だな」


「分かった。じゃあ僕と勝負して、僕が勝ったら紗香(さやか)ちゃんを自由に修学旅行行かせて、正哉(まさや)は残って学園祭に出るように」


「待て! 龍神になった千尋(ちひろ)に勝てる訳ねーだろ! スポーツテストで、幅跳びの砂場を越えたり、握力計を握ってぶっ壊す様な奴じゃないか!」


仕方ないでしょが、龍と人間でフィジカルステータスが違うんだもの


でも、鴻上(こうがみ)さんの攻撃は、受け止めるのがやっとなんだよね


何か武術とか、やっているのかな?



「じゃあ、体力使わないのでも良いよ。水に顔つけて息を止めるのとか」


「よーし。それなら良いぜ」


掛かったな正哉(まさや)。僕、一応水神の龍なんだよ。だから水中で息出来るんだよね


はい、そこ! 両生類とか言わない



「おい千尋(ちひろ)、それはあんまりだろ……」


頭の上に乗せた、元龍神のセイが余計な一言を言う


「馬鹿、余計な事を言わないでよ! 黙っていれば、学園祭におとなしく出るんだから」


「だがな、正哉(まさや)の奴は妹の為なら窒息しても、水から顔を上げんぞ」


うぁ、言われてみれば、そんな気がする



「と言うか、やけに正哉(まさや)と仲が良いじゃないか……前は『小僧』とか言ってたのに」


「うむ。正哉(まさや)とは、巨乳について語り合った仲だ。それに俺ももう龍神ではなく、ただの龍だしな……」


仲が良いとは思ったけど。案の定、ろくでもない理由だった。



「あ、あの……さっきから、瑞樹(みずき)君の頭の上にある人形。喋ってませんか?」


しまった! 富沢さんだか富川さんだか……黙って静かにしているから忘れてたよ


急遽、念話に切り替えて


『セイ! 見えなくなる術掛けてないの?』


『ん? 正哉(まさや)の奴に、妹の報告をしに来たんだ。見えなくなったら出来んだろ』


ヤバっ! じゃあ、ずっと見えてたんじゃないか!


幸い、他のクラスメイトは、学園祭の担当を言い合いしていて、気が付いていないようだ



「えっと……富……」


「富岡です」


「そうそう、富丘さん。この人形が喋った様に見えたのは、腹話術だから」


言い訳が苦しいか……


「そうなの? 瑞樹(みずき)君、腹話術上手いんだねって動いてたじゃない!!」


うあ、バレてるし


「いや、本物みたいに、動く人形なんだって……」


「ふ~ん」


あぁ、疑いの眼差し……どうしよう



そこに━━━━━━━━


「とにかく、千尋(ちひろ)は料理担当で、メイドはさせませんから。どうしてもと言うなら、代わりの料理人を捜してきてよね!」


机をダン! と叩き。自分に注目を集めてから、そう啖呵を切って話を強引に戻す香住。女子達から声援と拍手が贈られている。正直、セイから話題が()れて助かった


女子の拍手喝采(はくしゅかっさい)とは逆に、男子からのブーイングが凄いのだが、料理や飲み物が回らなきゃ、カフェ自体の存在意義が無くなるのだ


その辺を分かってか、最後は仕方なく引き下がる男子陣


これで文化祭の方は、担当が決まった


後は、女子がメイド服作り。男子は教室の飾り付けと言うことになり


僕達、料理担当の3人は、メニューの作り直し……ハンバーグなんて挽き肉捏ねてる時間無いし、却下! オムライスも外そうとしたが、正哉のきっての頼みと言うことで、数量限定にして出すことに


正哉……お前客じゃなく店側の人間なんですがね。忘れてないか?


メニューは大幅に減らし、飲み物はコーヒーと紅茶とオレンジジュースに緑茶


食べ物は、ショートケーキにサンドイッチとスパゲッティ、数量限定でオムライスに決定した


下ごしらえは、前日の夕方にすると言うこと等、打ち合わせをし


解散する頃には、すっかり夕方になっていた。


元々、始業式だけの半日で終わるはずが、ウチのクラスだけ夕方帰宅である


やっと解放された帰り道を4人で帰るのだが、なんで鴻上さんが……隣街だし、バス通学じゃないのかよ……


下手な事を言って、また鴻上さんに絡まれるの嫌だし。僕は黙って歩いていると━━━━━━



「でも、決まって良かったわね。ウチのクラスだけよ、2学期まで出し物が決まらなかったの」


そう言う香住に━━━━━━


「出し物は決まってたんだ。担当が決まらなかっただけだぜ」


正哉(まさや)が知れっと言葉を返すが、誰のせいだよ……


斎藤(さいとう)君達男子が反対してただけでしょ」


「うっ……だって千尋(ちひろ)のメイド姿、見たかったし」


そういう事を言うと……ほら、鴻上(こうがみ)さんが僕を睨んでるし。せっかく黙ってるのに、巻き込まないでよね



「大丈夫です。斎藤(さいとう)君の為に、私がメイド服を着ますから」


鴻上(こうがみ)さんは、そう言うと、正哉(まさや)の腕に自分の腕を絡ませるが、まだ季節は残暑。暑くて堪らないのか、鴻上(こうがみ)さんの腕を振りほどく正哉(まさや)


あんっ。と残念そうに呟くと、正哉の隣に並んで歩き出す鴻上(こうがみ)さん


凄い執念だ……


そんなやり取りをしながら歩いていると、やがてウチの神社の鳥居が見えてくる


「私は千尋(ちひろ)の処に寄っていくわ、桔梗(ききょう)さんから料理の質問があるらしいから」


そういって香住(かすみ)はスマホのメールを見せる


「お~。桔梗(ききょう)さん、さっそくスマホ使ってる。良いことだ」


せっかく買ったのだから、活用して貰わないとね


「元々タブレットPCを使い慣れてたから、応用が効いて早いみたい」



「んじゃ、俺は帰るわ。妹の紗香(さやか)が心配だし」


正哉(まさや)は、相変わらずのシスコンぶりである


鴻上(こうがみ)さんも正哉(まさや)にくっついて行ったので、香住(かすみ)と二人で石段を上り、境内に付くと僕のスマホが鳴り出した


相手は……西園寺(さいおんじ)さん?


「はい、千尋(ちひろ)です。西園寺(さいおんじ)さんお久しぶりです。傷の具合はどうですか?」


『やぁ、千尋君。久しぶり。お陰様で、傷はもうすっかり治ったよ。イチ……いや、淳一郎(じゅんいちろう)はまだ(あばら)が痛むみたいだが、順調に回復しているよ。ありがとう』


良かった。肋が折れてるのに狙撃しに来たり、色々と無茶するから、心配したよ


小百合(さゆり)ちゃんが襲われそうな処、助かったけどね


「で、今日は回復の報告ですか?」


『いや、実は収監していた沼田(ぬまた)が、何者かの手引きで脱走したんだ』


━━━━━━━━えええええ!?


マジか!? 手引きっていったい誰が……


沼田(ぬまた)一派の残党か!?



また大変なことになった。




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