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龍神の花嫁 八俣遠呂智編(ヤマタノオロチ)  作者: 霜月 如(リハビリ中)
1章 夏休み クローンオロチ
26/328

25 伊米神社

昨夜は、作戦を女性陣にしか、話してなかったので


他の意見も聞きたいからと、全員が集まる翌日の朝食後に作戦を話したら、良いんじゃないか? とゴーサインを頂いた。



ただ佐伯(さえき)さんから、地元の方が有利なんじゃないっすか? とも意見を頂いたが



確かに、高低差のある斜面で傾斜を利用でき、尚且(なおか)つ龍神湖の水もあるし、(ふもと)には自衛隊の相馬原(そうまがはら)駐屯地まであるので、偽オロチへの攻撃支援もして貰えるだろう



しかし、デメリットもあり。傷だらけの西園寺(さいおんじ)さんと藤堂(とうどう)さん、二人が居る神社の鼻先で、戦いに成るという事であり、沼田(ぬまた)一派に見付かれば人質……もしくは、研究所で見た事の口封じをされてしまう可能性がある



他にも、相手はオロチのコピーであり。何処(どこ)までオリジナルに迫っているか分からないけど、少なくともオリジナルは、武甲山や旧碓氷の戦いで、通常兵器は効かなかった


となると、人間側で戦力となるのは、(たける)さんの持つ神器『草薙剣(くさなぎのつるぎ)』と、藤堂(とうどう)さんの使っていた対神用ライフル位しかないのだ


その人間側の切り札である(たける)さんが、上手く民家へ当てずに解放神器を放てれば良いが……本人は、やってみなけりゃ分からねぇ! との事で、頼もしい回答を頂いた


そう、龍神湖は火口に溜まった水で出来ているカルデラ湖のため、登りきると平な部分が多く、傾斜を利用できるところは限られてしまう



相手が、湖の東側にある山へ登れば別だが、彼処(あそこ)の神佑地は……木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ)なのだ



木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ)の神格としては


姉の石長比売(いわながひめ)と同じく『山神』を持ち


他にも、美しい容姿では想像もつかないが、『火神』、『酒造神』という神格を持つという、日本の古い女神なのだ。


まあ火神は、燃える火の中で出産したのが、きっかけで付いたらしいが……


夫の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を信用させる為とは言え、無茶をなさる



当時、DNA検査なんて無かったから、『お腹の子は、本当にオレの子?』なんて言われてはねぇ……今なら離婚訴訟モノだ


だからと言って、火中で産んで見せて神子を証明するとか、考え方が斜め上を行くお方だ。


火だって神を焼き殺すのに……


一例をあげるなら、国産みで有名な伊邪那美(いざなみ)様も、事故とはいえ、火傷で黄泉(よみ)行きになってるからね、火も馬鹿に出来ないのだ。



そんな、戦とは無縁の木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ)に、戦場と成るから場所を貸して! などと言っても貸してはくれまい。



それよりは、N県、湯沢町、苗場山の稲作神である天香山(あめのかぐやま)(みこと)……別名『高倉下(たかくらじ)』様となら、建御雷(たけみかづち)様と縁が深いと言うことで、建御雷(たけみかづち)様に説得をお願いした



何でも大昔、東征の時代、毒に冒された天皇と兵士達を助けるため、建御雷(たけみかづち)様が1振りの霊剣を地上に降ろし、高倉下(たかくらじ)の夢に出て、霊剣を降ろしから持ってけと言って、毒に冒された天皇他兵士の命を救ったと言う


そう言う事で、建御雷(たけみかづち)様は恩人であるため、建御雷(たけみかづち)様本人が行けば、嫌とは言わないと思う……だからと言って、滅茶苦茶には出来ないけどね



住民や観光客の避難の方は、何時もなら西園寺(さいおんじ)さんの仕事であるが……


今回の西園寺(さいおんじ)さんは、沼田(ぬまた)一派の目が、何処にあるか分からないので、表立って動けない


その為、佐伯(さえき)さんが代わりに、住民の避難を行ってくれる事になった。



場所は、これで良いとして、作戦の流れだが━━━━━━━━


「頂上で、僕が囮になります。崖ギリギリまで引き寄せますから。(たける)さんは、少し下った斜面から傾斜の角度を利用し斜め上空へ、神器解放の雷神剣草薙(らいじんけんくさなぎ)を放って下さい」


「放てって……雨女、お前はどうするんだよ」


「僕は『漆黒(しっこく)』を(まと)ってますから、チャンスなら一緒に撃っても構いません」


たぶん、悠長に避けてる時間は無いだろう


むしろ、漆黒(しっこく)を上手く使い、偽オロチの視界をギリギリまで塞いで、避けられないようにした方が、良いかもしれない。


何せ、雷神剣草薙(らいじんけんくさなぎ)は、1度きりの大技なので、避けられたら終わりなのだ


連発して撃つには、東洋のエリクサーと呼ばれる、『変若水(をちみづ)』でも呑まねば無理だろう


僕の方は、最悪漆黒(しっこく)を貫通されても、消滅レベルのダメージじゃなければ、龍神の再生力で再生される筈……その場合、残りの夏休みは、療養で終わりそうだけどね



尚、沼田(ぬまた)の方は、小百合(さゆり)ちゃんと小鳥遊(たかなし)先輩の二人に任せて……大丈夫だよね?


死なせたりしないよね? サディストな二人だから心配になる



作戦はそんな感じかな?


今だに目の覚めない、藤堂(とうどう)さん以外の全員に、作戦を説明すると



佐伯(さえき)さんが申し訳無さそうに手を上げて━━━━━━



「質問があります。誘き寄せの餌にする、オリジナルのオロチは、どうやって捕獲するんすか? 何か良い方法でもあるんです?」


「それは、お寿司を出前したから……」


僕の言葉に、佐伯(さえき)さん以外が『あぁ……』と納得している


「お寿司って……今、朝食を頂いたばかりっすよ」


「いやね、朝はピザ屋がやってないのよ。だからお寿司なんだけど……」


意味が分かんないっす、と肩を(すく)める佐伯さんだが


丁度、(くだん)の寿司が到着する


「ちわー。寿司をお持ちしやした」


僕は注連縄を手に取ると、出前の寿司桶を持って、玄関に立って居る、オリジナルオロチの壱郎(いちろう)君を、注連縄でぐるぐる巻きにして、居間へ引き()って行く。


「これで、オリジナルのオロチも用意できました」


「えっ!? こんな簡単に……」


「おい……ちょっと待てや! 寿司を届けただけで、何で縛られてんのよ? それと、そこの雄龍! 寿司食うなら代金払えよ!」


僕の後ろで、寿司桶に手を突っ込み、マグロの握りを頬張るセイに、オロチが怒鳴っているけれど、セイ本人は、どこ吹く風である



しかし、セイ……朝御飯を、2杯飯で食ったばかりなのに、よく食えるな……あっ、香住まで一緒に食べ始めてる。この二人のエンゲル係数は、半端じゃなく高いな



取り敢えず、あの二人は放置して。蛇拐(へびさら)い~と(わめ)(ちら)らす壱郎君に、偽オロチの事を話す



「ああん? オレの偽物だと? そんなモン人間に創れんのかよ?」


「うん。クローン技術って知らない?」


「知らん! だが、くろお……何とかって言うのが在れば、複製が創れるって事なのか?」


「クローンね。DNAって言う設計図があれば、複製は可能なはず」



植物だけでなく、動物でも実験が行われており、クローン羊のドリーとか有名だよね


他にも、ヤギや豚やネズミも成功していて、古いモノは1800年代後半に、成功させた学者も居ると言うから、驚きである


そんなクローン技術でも、人間だけは複製を禁止される方向に、世界規模での法整備が進んでいるが(日本では2000年に規制法が出来ています)


部分的なクローンは、拒絶反応が現れないので、再生医療に役立てられるとして、研究が進められていると言う


完全体の人クローンが、禁止扱いに成っているのは、複製された側の人権に関する問題が大きく、社会的に認められなかった場合、『奴隷』にされたりなど、酷い扱いを受けるからだ。


今回のクローンオロチは、生体兵器として使われる為、人権……いや蛇権もなく、酷い扱いを受けていると言えよう


そう考えると、やはり偽オロチを放って置くわけにいかない



説明を一通り聞き終わった壱郎(いちろう)君が━━━━━━


巫山戯(ふざけ)やがって……そんな紛い物にヤられて堪るかよ! おい! 雌龍、オレの縄を解け!」


「解けって、お前逃げるでしょ」


「逃げねーよ! オレも一緒に行って、紛い物をぶちのめしてやる!」



偽オロチへ、敵意を剥き出しにしている事から、縄を解いても大丈夫だろうと判断し、縛りを解いてやると━━━━━━



ちょっと、1本電話させてくれと、バイト先に電話し、ペコペコ頭を下げながら、スマホを握り謝る姿は、とても人間臭く、神話の八俣遠呂智(やまたのおろち)とは思えない


しかし、壱郎(いちろう)君……スマホを使いこなしているな


バイクの免許も取るって言っていたし、現代の文化に馴染んできている所が、適応力の高さを物語っている


スマホと言えば、僕が持っていたスマホも、碓氷で融けてしまったままで、2学期が始まるまでには、何とかしなければ……香住と、買いに行く約束してたけど、どうなったんだろう……



そんな事を考えていると━━━━━━



小鳥遊先輩のスマホが鳴るのだが、直ぐに切ってしまう


「先輩、彼氏ですか?」


「いえ此処(ここ)のところ、何故か頻繁に、塩谷(しおや)さんから電話が来るのよ」


隣でお茶を啜って居た、兄の尊さんが突然お茶を吹き出す


何やってるんだか……


塩谷(しおや)さんって、彼氏さんじゃないんですか?」


「いいえ、塩谷(しおや)さんは兄の通う大学の同級生でね……ちょっと、()()()。お話があります」


そう言いながら、逃げようとしている兄、尊さんの服を掴む


()を着けて呼んでるから、先輩怒ってるな……



「馬鹿! (みどり)、変なとこ掴むな。ズボンが脱げたらどうすんだ」


「お兄様、なぜ塩谷(しおや)さんが、私の携帯番号を知っているのですか?」



ジーっと睨まれて、最後は観念したかのように、話し出す



「じ、実はな……初めて(くし)を差し、女体化した時に……塩谷(しおや)の奴を、女姿でからかってやろうとしたら、妹の(みどり)そっくりだったんで、(みどり)と間違えられて…………いや、ほら、(くし)の事は、関係者以外に部外秘だろ? だから中身が俺だって説明出来なくて……つい……」


「よーく分かりました。それでお兄様は、男の姿の時に、私の携帯番号を教えたと?」


先輩は、腰に丸めて掛けてある、鞭の留め金を外すと


「ふっ、昨日も言ったが、もう昔の俺じゃあ…………あれ?」


「お兄様。探し物は、この(くし)ですか? 知っていますよ。此れがないと、疑似神格(ぎじしんかく)が得られず、草薙剣(くさなぎのけん)は扱えないって」


そう言いながら、邪悪な微笑みを浮かべて、鞭を撫でる先輩と、悪魔のような妹に、恐怖する(たける)さん……


まあ、帝釈天(たいしゃくてん)の真言を乗せずに、普通の鞭で使うなら、神社(ウチ)も壊れないし良いか


尊さん、朝からずうっと男の姿だったのに、(くし)差して無いの、気が付かなかったのかな?



「ちょっ! 緑! 少しは兄を(うやま)……ひあぅ!」


先輩の鞭が、兄の尊さんの背中に振るわれる


「うふふ、良い声で鳴くのですね、お兄様」


「ま、待て! マジで洒落に成らないっひいい!! 本当に……ほああ!!」


「良い、良いわよお兄様! もっと無様に鳴いて御覧なさい!!」


もう駄目だ……あの二人は色々と手遅れかも……



瑞樹神社へ響く鞭の音と、尊さんの悲鳴を他所に━━━━━━



婆ちゃんへ、八嶋(やしま)技研への『挑戦状メール』をお願いする


「婆ちゃん、どこから送ったか分からないように、お願い出来る?」


此処から送ったのがバレると、ウチが襲撃されて、昏睡状態の藤堂(とうどう)さんが、逃げる事が出来ずに危ないからだ


婆ちゃんからは、任せておけ! と頼もしい返事を頂いたので大丈夫だろう


今時珍しい年配者で、パソコンが達者という凄い人。僕のパソコンは、頻繁にパスワードを破られているから、プライベートも何もない状態だし


他にも、変な所へハッキングしてないか、心配になる位パソコンに精通していて。ウチで一番の使い手は、婆ちゃんがであることに、間違いはない



後は現地で偽オロチと沼田(ぬまた)を待つだけなのだが……


「どうして、皆行きたがるんだよ!」


非戦闘員の香住(かすみ)とか、危ないだろうに……本当なら、小百合(さゆり)ちゃん達も置いて行きたいぐらいなのに、沼田との因縁があるからと、仕方なく承諾したのだ


他にも、元龍神セイや、荒神狼のハロちゃん、九頭龍様まで行くと言ってるし


遊びに行くんじゃ無いんですからね!


さすがに、神使(しんし)桔梗(ききょう)さんは、残ってくれると言うので、留守中の事は全て一任したが、他の者は羽目を外し過ぎだ


香住は、後から来るって言っていたが、どうやって来るんだろう……


危ないから来るな! と言っても、強情な香住(かすみ)の事だ。余計、意固地になって聞かないだろう……なので、注意喚起程度にして置くのが良い。



皆聞き分けが悪いので、行きたい者は連れていく事にし


リュックサックに、水の入ったペットボトルと、『漆黒』を使った後に、闇に融けてしまう事が分かっている、着替えの巫女装束を摘める。


融けるのは毎回の事ながら、どうにか成らないものか……


漆黒を解いた後に、丸裸なので、痴女認定されないかと気が気で無いのだ


新しい技か術を編み出すまでは、漆黒が1番使えるので仕方がない。


昼間という事もあり、人目を避けるため、裏手にて龍脈を開けると、皆が龍穴から湧き出る光の筋に、飛び込んで行く


「婆ちゃん、桔梗(ききょう)さん、西園寺(さいおんじ)さん、行って来ますね」


見送りに来たメンバーに、声を掛けてから龍脈へ飛び込む



僕の背中へ、『御武運を』と声が掛かったが、返す間もなく龍脈のなかを進み


到着したのは、N県 湯沢町 伊米神社である。



此処、伊米神社こそが、稲作神である天香山(あめのかぐやま)(みこと)……別名高倉下(たかくらじ)様を祀る神社であり、苗場山を神佑地としている神様なのだ



高倉下(たかくらじ)よ、()られるかな?」


建御雷(たけみかづち)様が呼び声をあげると、社の中から、高倉下(たかくらじ)様が顔を出す


「た、建御雷(たけみかづち)様!? どうなさいました?」


「まあ、事情は中で話そう。茶ぐらい出るのであろう?」



建御雷(たけみかづち)様は、そう言って、ずかずかと社へ入って行ってしまったのだ。


説得はお任せしよう……



あとに残された僕達は、戦場に成るであろう、苗場山を眺めながら現場の散策をし、作戦を更に練るのであった。




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