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龍神の花嫁 八俣遠呂智編(ヤマタノオロチ)  作者: 霜月 如(リハビリ中)
1章 夏休み クローンオロチ
23/328

22 追ってきた過去

ルビを忘れていたのでルビ振り修正です。

西園寺さんと藤堂さんを奧の客間へ移した後



滅菌、止血等、僕の出来る手当てが終わって居る為、あとは安静にして自力の回復を待つしかないので、結局は看ていることしか出来ない。



それならばと、裏手の不時着現場へ行き、煙が(くすぶ)っていたヘリコプターに、念のため水を掛け爆発による2次災害を防ぐ


こういう時、水が操れるのは便利だ。バケツに汲んで往復する必要もなく、小川の水を空へ巻き上げ雨を降らせる


水量が少ないので、町全体って訳には行かないけど、ヘリの上だけなら簡単なものだ



神社裏手からの帰りがけに、半壊した境内を見て溜め息をつく


幸い、拝殿、本殿共に無事ではあったが、絵馬掛けとか灯籠等が、後ろの竹藪ごと一掃されて、随分と見晴らしが良くなってしまった。


御霊(みたま)入りの神器、恐るべし威力だ


しかし、建御雷(たけみかづち)様の御霊(みたま)入りでこの威力ならば、他の神様ならどうなるんだろう


水神の淤加美(おかみ)様なら水がでるのかな?


だとするならば、天照大御神(あまてらすおおみかみ)様なら、『太陽剣』とか『光の剣』とかになるのかも


それはそれで格好は良いけど、もうウチの境内で試し打ちするのは止めていただきたい



この壊れた境内の石畳とか諸々(もろもろ)━━━━━━



西園寺さん処の『八荒防(やこうぼう)』で、修繕費(しゅうぜんひ)出ないかなぁ


駄目なら、小鳥遊(たかなし) (たける)さん処の実家の御寺へ請求しちゃる



修繕費(しゅうぜんひ)幾らに成るだろう……


恐ろしい金額が脳裏に浮かび、目眩でクラクラする



僕は、ふらつく足取りで玄関へ向かうと━━━━━━━━



『千尋。よもや(わらわ)との約束……忘れたわけではあるまい?』


淤加美(おかみ)様が、念話で釘を刺してくる


分かってますって。こちらも粗方(あらかた)片付いたし、西園寺さん達は、朝まで目が覚めない様なら、病院へ電話しましょう……


救急隊員さんに、何か聞かれた時の言い訳を考えないと……



容態を再度確認した後。僕は台所へ立ち、エプロンを着けて約束の芋を揚げる


淤加美(おかみ)様の術で、部屋着として使っていた、中学のジャージを溶かされてしまい、巫女装束のままであるが、その上にエプロンとか……何か、コスプレみたいだな


台所だけなので、誰に見せるって訳でもないけどね


約束通り、揚げた芋に溶かしバターを掛ける


自分で作りながら何だけど、見てるだけで胸焼けが……油で揚げただけでも高カロリーだと言うのに、バターまで掛けているのだから、人間ではたちまち病気になるぞ


だいたい、思念体の淤加美(おかみ)様は、幽霊みたいな存在なのに


食べたモノは……いったい、何処に消えてるのかな? 本当に不思議な御方だ


貴船神社の本体へ、カロリーが送られてたりして


知らず知らずの内に太らされる本体……それも悲惨だなぁ



『余計な事は考えんでも良いわ!』

念話で怒られたし


『また僕の思考を勝手に読みましたね』


淤加美(おかみ)様の分霊が、僕の身体に同居して居るので、思考を勝手に読まれる事がある


ゲームの相手をさせられて、初心者の淤加美(おかみ)様に僕が勝てないのは、そういう理由があるのだ



『ほれ、遠慮なくもっと掛けぬか』


『えええ!? もう十分バターは掛かってますよ。これ以上はベトベトに成るだけだし、マヨネーズとかケチャップで食べた方が、良くありません?』


『では、その仕様で他にも作るのじゃ』


え? バター掛け以外にも作れと?


人使いならぬ、龍使いが荒すぎる。


ただでさえ気温が高いのに、天ぷら揚げてて台所は熱風地獄ですよ


いくら、水龍が火や水に強いとは言え、消し炭に成らないってだけで、熱いものは熱いと感じるんですからね!


まあ、今回は約束をしてしまった僕が悪いんだし、仕方はなしに、我慢して芋を揚げる



出来上がった、高カロリーの化け物を皿に(よそ)り居間へ行くと━━━━━━



居間では、小鳥遊(たかなし) (たける)さんが飯を頬張って居た


「おい、お代わり!」


そう言って空のお茶碗を突き出す(たける)さん


あれだけ神社をぶっ壊して置いて、遠慮なしかコノヤロウ……


尊さんの妹である、小鳥遊(たかなし) (みどり)先輩がお茶碗を受け取ろうとしたが


「いや、(みどり)……お前に盛らせると飯が飯じゃなくなるだろ……(みどり)に装って貰う位なら、自分で持ってくるから良い」


いくらなんでも、ご飯を(よそ)るだけで、毒物に変わらんだろ……


━━━━━━変わらない……よね?



「お兄様……今何と(おお)せられました?」


あ、いつも以上に丁寧な言葉……(みどり)先輩マジで怒ってるぞ。


「ふんっ! 今日のお握りを、忘れたとは言わせんぞ! お前の飯は不味(まず)……ぶほぉ」


「今のは聞き捨て成りません! 姉様に謝りなさい!」


先にキレて蹴りを入れたのは小百合(さゆり)ちゃんだった


小百合(さゆり)、てめえ! 何しやがる!」


「姉様はバカ兄の為に、心を込めて一生懸命握ったんですよ!」


「心を込めてじゃなく、毒を込めての間違いだろ! だいたい、小百合(さゆり)(みどり)の飯を食った事があって、言ってるんだろうな?」


「うっ! ぐぬぬ……」


お!? 小百合ちゃんピンチ。さすがに黙り込んでしまった


大好きな姉の援護はしたくも、料理の腕前は肯定できそうにないって事か


緑先輩は、実家の母親に料理を教わろうとして、匙を投げられただけはある



「小百合……ありがとう、もう良いわ。お兄様……私の鞭を受けたくて仕方がないって顔ですわね」

そう言って、腰に丸めてぶら下げてあった鞭を外す緑先輩


ちょっ……ここウチの中なんですけど、居間なんですけど



「ふっ……いつも遣られてばかりだと思うなよ! 今の俺には神器(これ)がある!」


そう言って草薙剣(くさなぎのつるぎ)(御霊(みたま)無し)を掲げる尊さん


神器を扱うためには神格が必要である為、櫛名田比売(くしなだひめ)の疑似神格を創り出せる(くし)を外してない意味が分かったわ。相変わらず下らない事に使うねぇ


二人がお互いの武器を構えて睨み合う


「ちょっと待った! 兄妹喧嘩は、他所で遣ってよ! 境内だけじゃなく、ウチの中まで壊す気ですか!?」


そう言いながら二人の武器を没収する。これ以上壊されてたまるか!


僕が武器を取り上げると、大人しく座る二人。武器に狂気化(バーサク)の呪いでも、掛かってるんじゃ無いだろうな……


(たける)さんが、女体化を解いて無いので、同じ顔が3人並んで居るが、やっぱり中身が男だけあって、尊さんは胡座(あぐら)をかいて座るから、パンツが見えてるし


先程、(みどり)先輩が着替えさせたトランクスだけどね


例えトランクスでも、女の子で居る間は、少し気を使った方が良いと思う


だいたい、なんでトランクスが見えるんだろうと思ったら、僕の尻尾抜き用に香住が縫い直し、緋袴をスカートタイプに改良された緋袴改になってるし


(みどり)先輩の事だ、わざと着せたな……巫女装束いっぱい在るから良いけど



空に成った茶碗に、オカズだけ持ってきては、寂しそうに食べてる(たける)さんが可哀想で、仕方なく━━━━━━



「ほら、貸してみ。僕が持ってきてやるから」


お、おう……と面を食らった様な顔の尊さんを他所に、台所へ御椀を持って行きご飯を(よそ)


正直、これ以上ウチを壊されたく無いので、彼方此方(あちこち)彷徨(うろつ)かれたくないのだ



新たに盛った茶碗の飯を渡すと、掻き込みながら胃の中へ消えていく御飯とオカズの茄子


その向かいで、揚げ芋バターを食べながら、配管工メーカー2の自作コースを、建御雷(たけみかづち)様と九頭龍(くずりゅう)様に()らせる淤加美(おかみ)様……


二人の食べっぷりを見ているだけで、胸焼けが酷く、御飯が喉を通らない


と言うより(たける)さん、(くし)差したままで女体化しているのに、あの細身の何処へ御飯が入っているんですかね


僕なんか、確実に食べれる量は減ったけどなぁ


やっぱり個人差があるのかも?


テレビで、たまーにやる大食い番組も、女性の大食いファイター多いし


そう考えると、女性が必ず少食と言うのは、間違ったイメージなのかもね


僕が食欲を無くしてお茶を(すす)っていると━━━━━━


「おい、雨女。お代わり」


食欲旺盛で何よりだが……


「2杯目のお代わりは、そうっと出してください」


「おう、今度からそうする。お前の御飯全然減ってないけど、食って良い?」


「今、新しいの持ってきて()るけど?」


「ん? 残すの勿体無いから此れで良い……あ、新しいお代わりも(よそ)ってくれ、それ食ったら少し寝るから」


戦闘して、飯食って、寝るって?


何処(どこ)の戦闘民族だよ!!


でっかい猿に、変身したりしないだろうな……巨大化してウチまで壊したら、僕もさすがに逆鱗に触れるぞ!


巨大(たける)VS(ぼく)の構図が脳裏に浮かんだけど。良く考えたら、僕は巨大化出来ないし


プチっと潰されて終わりそうだ


そんな悲惨な最後を考えながら、御飯を装って居間へ戻ると、尊さんにお代わりを渡してやる……実質4杯目だし


「先輩達は、この後どうするんです? 泊まるなら布団敷きますけど」


僕の言葉に、ピクリと反応する香住


「あらそうねぇ、泊まって行こうかしらね」


わざと香住を意識して言うところが先輩らしい


姉様が泊まるなら、私も泊まります! と姉第一主義の小百合ちゃん


そこへ━━━━━━━━


ダン!! と音を立て、空に成った牛乳のコップをテーブルへ叩き付けた香住が


「私も泊まるわ!」


「泊まるって、香住……神社の石段降りて、すぐ家じゃ……」


「なによ! 私じゃ泊めてくれないって言うの?」


そう言うわけじゃ無いけど、先輩の家は、ウチからだと山手方面へ小一時間掛かるので、泊まるのも分かるが


香住の家は、石段で手間取られても、5分あれば御釣りがくる


ウチで、押し入れから布団出してる間には、家へ帰れるし


「別に泊まるのは構わないけど、皆同部屋だよ」


部屋自体は余っていても、全然使わない部屋は、前もって換気しないと、カビ臭くて寝れたもんじゃ無いからだ


あらかじめ分かって居れば、換気して置くんだけどね


そう説明すると━━━━━━━━


「別に良いわ、千尋ちゃんの部屋で寝るし」


ちょっ、先輩! そう言う事をいうと……


「ふ~ん。千尋の部屋ねぇ。私もそこで良いわ」


「いやいやいや、狭いし! 僕の部屋6畳間だし」


ベッドと勉強机と衣装箪笥あるんで、実質4畳間弱位しかスペース無いし


案の定、小百合ちゃんまで僕の部屋にって言い出す始末


今日はさすがに、九頭様との模擬戦闘やったし、疲れているから寝たいんですけど


今夜の徹夜に成るであろう女子会に、ゲッソリしていると━━━━━━



「ふう、ごっそさん。5日ぶりの、まともな飯だぜ」


九頭龍山での修行中に、何食べてたか知らないけど、この食いっぷりから見て、殆ど食べてなかったのかも……砂漠へ放り出された身としては、ちょっとだけ同情する



爪楊枝を咥えて、満腹だと腹鼓を打つ尊さんに



「尊さんは、帰るんでしょ?」


「何で俺だけ『泊まるんでしょ?』じゃねーんだよ! 3枚におろすぞ雨女」


「いや、尊さん男だし。夜道でも平気かなと思って」


「まだ櫛外してねーから、女のままだ!」


「結構女の身体、気に入ってたりして?」


茶化すように言うと


「馬鹿か! 修行中ずっと女の身体だったせいで、座って用をたす癖がついちまったんだぞ! 女体化解くと神器使えなくなるし、再生力も落ちるから疲れも抜けねーし……」


うぁ、さっきの食べっぷりから考えて、九頭龍山中を、飯も食わずに、追い回されてたんだろうな……


僕の時もそうだが、本当に神様の修行って鬼畜過ぎるわ


もう少し、人間基準で修行内容を考えて欲しいものだ。



まあ、尊さんの着替えは、妹の緑先輩が持ってきてるって言うし


問題は、男の尊さんを何処で寝かせるか……



それを思案していると━━━━━━━━



千尋(ちひろ)様。怪我人の片割れが、目を覚まされました」


神使(しんし)桔梗(ききょう)さんがそう言って居間へ入ってくる


僕は、知らせてくれた桔梗(ききょう)さんにお礼を言うと、さっそく奥の客間へ向かう


どっちだろう……怪我の程度から言えば、西園寺(さいおんじ)さんだろうな


そう予想を立てながら、襖をノックして声を掛けると、やはり返事は、西園寺さんのものであった。


「大丈夫ですか?」


「やあ……千尋君……本当にすまないね」


西園寺さんが、痛ててっと言いながら、起き上がろうとするので、無理をしないよう、寝たままで良いですよと布団をかけ直してあげた。


「何があったんです?」


「それは、今から説明させて貰うけど、(いち)……いや淳一郎(じゅんいちろう)の容態は?」


藤堂(とうどう)さんは、随分と酷い怪我でしたが、傷だけは血液を操って止血しました。ただ……流れてしまった血液が多過ぎて、輸血をしないと駄目だと思います」


他にも、ちゃんとレントゲンを撮ってみないと分からないけど、肋骨にもヒビが入ってるかも知れない事を伝え


病院へ電話するかどうかも、迷ったと言ったら


「そうか、電話されなくて良かったかも……ヘリの不時着を説明しなければ成らないし。大事にすると、奴等に生きていることが、バレてしまうからね」


そうすれば、再度刺客を差し向けて来るからと、儚そうに微笑んだ


「奴等って、いったい何に終われているんです?」


八嶋技研(やしまぎけん)の第三課、課長の息子、沼田(ぬまた) 克彦(かつひこ)


沼田克彦(ぬまたかつひこ)……どっかで聞いた名前だな……」


僕が思い出そうと必死になっていると━━━━━━


沼田(ぬまた)……まだ悪さをしていたのね」


そう言って小百合(さゆり)ちゃんが部屋に入ってくる


小百合(さゆり)ちゃん、知ってるの?」


瑞樹(みずき)先輩は覚えていませんか? 7年前……猫を虐待して、私に罪を着せた上級生を……」


「まさか!? 名前は知らなかったけど、アイツが沼田克彦(ぬまたかつひこ)!?」



妙な処で、過去と繋がり、吃驚する僕



また色々と厄介な事に成ったな……




猫虐待の話は、千尋も7年前に関わっているので知っていますが、龍神セイルート後の話なので、司の事は知りません。



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