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龍神の花嫁 八俣遠呂智編(ヤマタノオロチ)  作者: 霜月 如(リハビリ中)
6章 隠神刑部狸(いぬがみぎょうぶたぬき)と検体N
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6-22 幽世側の道後温泉


天照(あまてらす)様と女将(おかみ)湯名(ゆな)さんが話をしている間、僕は受付に居るもう一人の(すずめ)さんに――――――


「あのぅ……ここって日本銀行券使えますか?」


「え? 日本銀行券? あぁ! 現世(うつしよ)側の人間が造った通貨ですね。使えません」


マジカー


「じゃあ支払いは、なにで?」


「各種電子マネーが使えますよ」


「使えんのかい!! 一気にハイテクだなオイ!!」


「日本銀行券は、現世(うつしよ)へ換金に出ないといけないので、当然人間に見付かるリスクも増えてしまい、手数料に危険手当も入ってしまうんです。そうなると金額が大きくなってくるので、日本銀行券で支払う神様は()りません」


「なるほど、それで電子マネーか……しかし、どうやって決済してるんです?」


「実は小さい穴を開けて現世側から光回線を引いてるんですよ」


すごい事してるな。



「ちなみに、泊まり無し。温泉と食事だけで、お(いく)らぐらい?」


「えっと、日本銀行券ですと……このぐらいです」


算盤(そろばん)をパチパチ弾くと、それを見せて来る受付の雀。


そこは電卓じゃないのかい!! て――――――


「高けえ!!」


国産の高級車が買えるじゃんか!!


泊まっても居ないのに、この値段かよ!! もう現世(うつしよ)側の人間が経営する温泉行こうかな……



「あ、でも。神様はみんな御神徳(ごしんとく)で払われますよ」


御神徳(ごしんとく)? あぁ、御利益(ごりやく)のことですね。そんなので良いの?」


「そんなのって……神様だけが与えられる特別な徳ですよ。お金なんかに替えられない程の価値があります。えっと……失礼ですが、本当に神様ですか?」


「あはは……そう見えないよね。まだ国津神に成りたてなんだよ。つまり僕は元人間なの」


「そうでしたか、疑ってしまい申し訳ありません。それで少し人間の匂いがするんですね」


ギクギク。


たぶんそれ、後ろの香住(かすみ)と先輩の事だ。


でも、こう言っておけば怪しまれても、元人間だからと言い訳が立つので。結果オーライという事に。



「ここって神か神使以外は入れないって聞いたけど、元人間の神でも良いの?」


「良いですよ。だって、それを言い始めたら、太宰府(だざいふ)に祀られて居られる天神様も元人間ですし、京にも崇徳院(すとくいん)様や早良親王(さわらしんのう)様が神として祀られてます」


全員怨霊(おんりょう)に成った人たちだけどね。


ちなみに首都にも、将門(まさかど)様が東の守護神として祀られてる。



「ところで、恥ずかしい話なんだけど。神徳(しんとく)の出し方が分からないんだけど……」


「あぁ……成りたてでは仕方がありませんよね。私も神様ではなく神使なので良く分かりませんが、天照(あまてらす)様にお伺いしてみてはいかがでしょうか? もしくは、その頭の角からして龍神様なのでしょうから、同族の古神、淤加美神(おかみのかみ)様に聞いてみるとか?」


淤加美(おかみ)様かぁ、僕の中に居るから聞いてみるね。寝て無いとは思うけど……」


「ええええ!? 淤加美神(おかみのかみ)様が中に()られるのですか?」


「えっと淤加美(おかみ)様の子孫らしいんだ。それで龍神に……あ、でも国津神(くにつかみ)の就任はちゃんと受けたから。勝手に神を(かた)ってる訳じゃ無いんだよ」


普段は自分は神様だ! なんて言いふらすモノでも無いしね。


現世でそんな事したって、お医者さん紹介されるだけだし。


霊力のある相手に、角が見られてバレるのは多いけど、自分から神だなんて言ったのは、ここ幽世の道後(どうご)温泉が初めてだろう。それも人間とバレると厄介な事になるって聞いて仕方なく……


「あのぅ。だったら、龍神様専用の水風呂を用意できますが? 水の神様だから、お湯は苦手でございましょう?」


「御厚意はありがたいけど、さっきも言ったように元人間なので、お湯にも慣れてるから大丈夫ですよ。それに今回は天照様の付き人と言うか、付き神として来てますから離れる訳には……」


「あっ、そうですよね。天照(あまてらす)様の眷族(けんぞく)御一行と台帳にありましたし、天照(あまてらす)様から離れる訳にはいきませんよね。何か御要望がありましたら、お申し付けください」


受付の(すずめ)さんは、そう言って深くお辞儀をした。


なんか良い子だな。色々と気を回してくれるしね。


もう片方の(すずめ)さんと姉妹だったりして。



千尋(ちひろ)、何をしておる。さっさと行くぞ」


いつの間にか会話が終わった天照様が、廊下の先でこちらを振り返って待っていたので、受付の子にお礼を言うと慌てて後を追いながら、僕は――――――


「いやぁ、天照様が話し込んでる間に、支払い方法を聞いてたんですよ」


「それは気にせずとも良い。ここの支払いは妾が全部もとう。女将、神徳をこのぐらいでどうじゃな?」


天照様は片手を開き、ジャンケンで言うパーの形を出して女将に突き出した。


「ええ!? 天照様、例えお泊りだとしても貰い過ぎでございます」


「なーに、余りは心付けとして取って置けば良い」


心付け? あぁチップ代の事か……


神徳の価格帯がいまいち分からない。


すると、事の顛末を聞いていたのか、僕の中の淤加美様が念話で――――――


『その辺はハッキリせぬぞ、授ける神によっても貰うモノによっても、神徳の価値は違うしな』


『そうなんですか? 基準が無いと困る気がするけどなぁ』


『価値はそれぞれ……例えば、天照殿は太陽神だけあって、神徳は太陽にちなんだものになるのじゃ。太陽の加護で作物の出来を良くしたり、洗濯ものを早く乾かし、お日様の香りが強く成ったりな』


『桔梗さんが来るまで、家事全般をやっていた僕には、後者が嬉しいかも』


早く乾かなかったとしても、お日様の匂いは良いね。


『ちなみに、水神の龍である妾の神徳は、恵みの雨による作物への恩恵とか、雨を降らせることで空気中の埃や雑菌を洗い流したり、温泉なら湯の出を良くしたりとかじゃな』


『あ~確かに雨上がりの澄んだ空気は良いですよね。ただ湿気るから湿気を嫌うモノ……カビると困るモノとかを扱う時は、あまり良くないけど』


『そう、それじゃよ。相手によっては神徳の価値が変わるというのはな。例え恵みの雨でも家事をする者には食材が湿気ってカビるし、洗濯物も干せないしで良くあるまい』


確かに家事をする者には良いイメージは無いが、農繁期の農家さんには雨は降って貰わねば困るモノだから雨の価値は上がる。


『なるほど、それで授ける神と相手によって御神徳の価値が変わるんですね』


『うむ、そう言う事じゃ。それともう一つ、土産は揚芋でよいぞ』


ちゃっかり土産を要求とか、淤加美様は抜け目が無いな。


淤加美様も天照様と同じ様な喋り方だが、言葉の抑揚が微妙に違うんだよね。


何と言うか……天照様は優しい日差しの様なイントネーションだけど、淤加美様は古龍だけあって猛々しいと言うか、強い感じに発音をする。


戯け! とか怒らせる僕とかセイが悪いんだけどね。


それも本気で怒ってると言うより、何処か楽しんでいるような節もあるし。


淤加美様の遠い子孫が、育って行くのを見るのが嬉しいのかも知れない。実際どんな龍に成るか楽しみだとまで言われた事があるからね。


自分自身の事とは言え、千年を余裕に超える淤加美様が、どう育つか分からないと言っているのに、僅か16歳の若輩の身である僕が分かるはずがない。


まっ成る様に成るさ。


そんな事を考えながら、白鷺女将である湯名さんの案内で、長い廊下を何度か曲がりながら進むと、湯と大きく書かれた暖簾の前へ出る。


「こちらが大露天風呂になって居りまする。中は八大龍王神様でも入れるぐらい広くなってますから、迷子になられぬ様、お気を付けください」


露天風呂で迷子とか、初めて注意を受けたぞ。


小さい御子さんなら兎も角、大人が風呂で迷子になるとか、現世では絶対にありえないだろう。


ごゆるりと……そう頭を下げる女将さんの横を通り抜け中に入ると、僕はある事に気が付く。


「……中が、男湯女湯に分かれてない……」


「それは混浴だからな。さっき貰ったパンフレットに書いてある」


僕の頭の上に居たはずのセイが、いつの間にか大人サイズになって居り、手には旅行会社が発行するようなパンフレットを持っていた。


どうせ、僕が雀さんの受付と話している間に、他の神使から貰ったのだろう。


もう驚かないぞ。


電子マネーが使える時点で、何処かにパソコンもあるのだと思う。


それでパンフレットを作ったんじゃないかな?


パンフレットを開くと、一見さん大歓迎と書かれている。


……幽世側は人間来れないし。例え迷い込んでも、神々専用なのにどうしろっていうんだろ。


幽世側で建物は古風な造りなのに、進んでいるのか遅れているのか良く分からん温泉宿だ。



中は湯気が上がっており、温泉独特の臭いを放っていた。


小鳥遊先輩は、目を輝かせながら服を籠に脱ぎ捨てると、露天風呂に走って行ってしまう。


いつもは大人な振る舞いの先輩が、年相応……いや、もっと幼い少女の様に見えるのは、普段は見せない(はしゃ)ぎようだからかも知れない。


人間には入れないって処に入ってるのだから、気持ちは分かるけどね。



「これ、小娘。あまり奥に行くでないぞ、女将も言って居ったが、迷子になると帰って来れぬぞ」


天照様が先輩に注意を促すと、はーいと湯煙の向こうから返事だけが聞こえて来た。


声の反響からして、露天風呂が相当広いと言うのは分かるが、これだけ湯気が凄いとせっかくの露天風呂からの景色が何も見えないだろう。


温泉宿の女将さんが、八大龍王様が入れるぐらい広いと言っていたけど、広ければそれだけ湯が冷えるのも早いわけで


その湯冷えを無くすために、熱めのお湯をかけ流しで入れてるのかも知れない。


だから外気との温度差で、湯気も凄いのだろう。



そんな事を考えて居ると、香住が――――――


「お先に~」


「早っ! いつの間に脱いだんだよ」


「千尋が考え込んで動かないから、また色々ツマラナイ事考えてたんでしょ? 千尋の悪い癖」


「僕は理論派なの」


香住は僕の言葉を聞き流す様に、早くおいでよ、と言いながら湯煙の向こうに消えていった。


あの行動力は、羨ましい時もある。



僕は急いで後を追う為に、巫女装束を脱ぎ始めると――――――


「なんじゃ、千尋はまだ脱いでおらぬのか?」


「そう言う天照様は早……うおおおっ、少しはタオルで隠してくださいよ!」


「ん? 別に女同士じゃし、問題あるまい」


「大ありです! 僕は元男ですよ」


「今は雌の龍であろうが?」


「そうですけど……」


「だいたい神々は裸など気にせぬぞ、酒呑んで騒いで起きたら裸だったと言うのもよくある」


「人間だとありません!!」


酔うと気分が高まり脱ぎだすと言う、脱ぎ上戸と言う方も居られるようだが


僕はまだ未成年だし、御酒など呑んだことが無いので良く分からない。



まぁ神話の、天岩戸に天照様が引き籠った時は、天宇受賣(あめのうずめ)命様が岩戸の前で酒飲んで踊りあかしてたらしいが


踊っている間に気分が高まり裸に近い姿だったと言う記述もある。


古神様達が裸を気にせず、酒呑んでどんちゃん騒ぎと言うのも、その辺からきているのかも知れない。


「良いから背中を流してくれ」


「えぇ!? 建御雷様は……」


見ると褌一枚になった建御雷様が、胸の前で腕をクロスさせてバツの字を作って居た。


どうやら無理だと言う事らしい。


「千尋が居なければ建御雷に頼んで居ったが、やっぱり妾のお気に入りの希少種と裸の付き合いがしたいのじゃよ」


裸の付き合いって、本来そう言う意味じゃ……まぁいっか。背中なら裸を見なくて済むし。


カエルの絵が描かれた黄色い桶でお湯を掬うと、天照様へかけ湯をする。


なんと言うか、何千年も存在されて居られるのに、肌の張と言うか水を弾くのが凄い。


玉の肌とは良く言ったモノだ。


さて、石鹸は……


なぜかプラスチックの手押し式ポンプ容器で、ボディソープが何種類か用意されていた。


変な部分が現世製だな……


とりあえず、香りの良さそうなボディソープを選ぶと、泡立てて背中に擦り付けた。


「天照様、力加減はこんなもので良いでしょうか?」


「おお、こそばゆいのぅ。じゃが良い気持ちじゃ……もうちょい下……う~ん、そこそこ」


天照様が手の届かない背中の痒い所を、僕に指示を出す。


太陽神だから部分的に乾燥してるのかな?



そんな時、湯霧の向こう側から――――――


「なんですってぇ!!」


「あら御免なさいね」


香住と先輩の声がする。


人間とバレないように、少し大人しくしててくれないかな?


と思いきや、湯舟のお湯が持ち上がり、高波になって溢れて来た。


何事!?


すぐにセイから念話が着て――――――


『いや、波のあるプールを再現しようとして失敗した』


『アホ~怒られるだろ!』


『すっごい広いから、いけると思ったんだよ』


イケてもやるなよ。


しかし、セイの高波にお陰で、喧嘩していた二人も流されて来たので、喧嘩は収まったようだ。


「あ~洗いっこしてる。私も混ぜてよ」


「洗いっこって……天照様の背中を御流ししてただけだよ」


「せっかくだし、みなも洗って行くとよい」


「ま、待ってください。天照様に直接人間が触れても大丈夫なんですか?」


太陽神だし火傷しないだろうな……


「う~む。何かあった時にマズイのぅ、幽世側では人間の医者は居らぬし……ならば妾はもう背中を千尋に洗って貰ったから、後は自分でやるので良いぞ。本当は前も頼もうとしていたがのぅ」


前も洗わせる気だったんかい。危なかった……


香住達の背中も洗ってから、自分も身体の砂埃を落とし、戦いの疲れを湯に浸かって癒していると――――――


「ああああああ!! 瑞樹千尋!?」


甲高い目障りな声……


「盗人ツインテール」


「誰が盗人ツインテールよ!! 私は水葉という名前があるんだからね!!」


「だって盗人だろ? 八咫鏡(やたのかがみ)を返せよ」


「返すもんですか! 欲しいなら力ずくで取り返して見せなさい!」


「僕は力ずくでも別に良いけど……お前、八咫鏡持って無いのに戦えるの?」


僕の言葉に、はっ! と脱衣所の方を振り返る水葉。


どうやら脱衣所にに置いてきたらしい。三種の神器なのに不用心な奴め。


「ぐぬぬ……」


「ほら、泣いて謝るなら今の内だぞ」


水葉は悔しそうな顔をしていたが、突然何かを閃いたような悪い顔に成り――――――


「そう言えば、瑞樹千尋と一緒に居た人間が居るようだけど、ここって人間が入って良いんだっけ?」


「おおっと、それ以上は言いっこ無しだ。お互い平和に行こうじゃないか」


「ふ~ん、どうしよっかなぁ。私が声をあげれば、あの人間達は終わるんだけど?」


「甘いな。声をあげる前に、八咫鏡が無ければ術反射ができない水葉を、闇で融かす事も出来るんだけど? 幸い水はふんだんに有るしね」


こっちは鏡が無くても、常時発動(パッシブ)で術反射が効いてるから、水さえ有ればどうとにでもなる。


「…………分かったわ。ここはお互い平和的に行きましょう」


自分が不利だと思ったのか、僕の提案にのってくる。


調子の良いヤツめ


僕も本気で戦おうと思ってる訳では無い。ここで戦って温泉宿に迷惑掛けたくないしね。


「そう言えばさ、水葉は水風呂行かないの? 水龍はお湯より水のが好みでしょ?」


かけ湯をして湯舟に浸かる水葉に、そう問いかける。


「別に……せっかくの温泉だし。お湯に浸からなきゃ勿体無いじゃない。そういう瑞樹千尋だって、お湯に浸かってるくせに」


「僕はほら、元人間だったからね。お湯の方が入り慣れてるんだよ」


「ふ~ん。それで自分自身で水が出せないのか……」


「そういう事。だから、こんな半端な龍神の僕を倒しても、自慢に成らないよ。お母さんに自慢したいならもっと他の……」


「母様に自慢の娘だと思って貰いたいのよ……亡くなられる前に」


そう言って、目頭の涙を拭う水葉に、何て声を掛けて良いのか分からずに居ると――――――


突然僕の中に居る淤加美(おかみ)様が姿を現した。


「おい、御津羽(みつは)の娘よ。今なんて言ったのじゃ?」


「母様が病気で……もう長くないの」


「馬鹿な!? 妾の妹である御津羽(みつは)が、そんなに軟な訳なかろう!? 貴船に居る妾の本体の尻尾には、姉妹喧嘩でついた噛み跡が残って居るぐらい強い奴だったのじゃぞ!! そう簡単にくたばるモノか!!」


「でも……日に日に弱っていくんです。 その原因を知りたくて、高天ヶ原から八咫鏡(やたのかがみ)の分身を持ち出し、占おうとしたんですけど……上手く行かなくて……」


それで八咫鏡(やたのかがみ)を持ち出したのか


八咫鏡(やたのかがみ)を占いに使うなら、()んだ水と神酒が必要じゃ。あと、舞を踊れるものがな」


「神酒なら、今日一日の他に、残り2日で出来上がりますよ」


「そう言えば千尋が、醸造の神である大山咋神(おおやまくいのかみ)と、神社の裏手で酒造っておったな」


「じゃあ残りは、舞姫と澄んだ水ですね」


「澄んだ水は貴船(きふね)の水を使えば良い。残りの舞姫……やはり天宇受賣(あめのうずめ)命じゃな」


天宇受賣(あめのうずめ)様と言うと芸事の神で、猿田毘古(さるたひこ)様の奥さんですよね?」


「うむ。天津神で高天ヶ原に居るはずじゃが……もう時期、旧暦の神在月じゃからな。出雲へ行くために、もう地上に降りて居るかも知れぬ」


「どのみち、神酒が出来るまでは2日掛かりますから、その間に天宇受賣(あめのうずめ)様の祀られてる神社を探してみましょう。日本中に結構な数があるんですよね」


僕と淤加美様が今後の指針を放していると、水葉が――――――


「どうして私の母様の為に、そこまで……」


「それは妾の妹じゃからな。まだ黄泉へは逝かせぬぞ」


「ですね。乗りかかった船と言うヤツですよ」



『豪華客船か?』


セイが念話で茶化してくるので、湯けむりに隠れて近くで聞いて居たのだろう。


この暇人め、沈んでたまるか! と念話を返しておく。



そんな僕らの前で、水葉はありがとう……と嗚咽を漏らしながら、小さく感謝を述べたのだった。




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