表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍神の花嫁 八俣遠呂智編(ヤマタノオロチ)  作者: 霜月 如(リハビリ中)
5章 常陸の大鯰(おおなまず) と 逆さハルカス
112/328

5-03 鍛冶神の弟子


G阜県にある、根小屋(ねごや) 信一(しんいち)さんの鍛冶(かじ)工房前に龍脈を開くと、全員で其処(そこ)へ飛び出した。


街から外れた山の中に工房があるのは、刀や包丁を打つ音で、近所迷惑にならない様にとの配慮である。


一度打ち始めたら、夜中だろうと打ち続けるので、仕方がないのだ。


そんな工房の中から鉄を打つ(つち)の音がしない為、今は休憩中(きゅうけいちゅう)なのかもしれないと、戸を叩こうとすると、急に戸が開いたのである。


「自動ドアだったっけ?」


頭の上にのったセイが、相変わらずアホな事を言う。


「こんな山奥に電気など来てないってば、鍛冶(かじ)工房だけだし薪木(まきぎ)金床(かなとこ)ぐらいしか必要ないでしょ」


食料や飲み水は、信一(しんいち)さんの軽トラックの乗って、スーパーマーケットやコンビニにでも買い出しに出れば、事足りるしね。



僕達がアホな会話をしていると、開いた戸の向こう側から、巨大な(つち)を持った大男の鍛冶屋(かじや)の神、天津麻羅(あまつまら)様が顔を出した。


「なんじゃ……北関東の水龍どもか? 飯が届いたのかと思ったわい」


「あらら、飯じゃ無くてすみません。ちょっと話があって立ち寄っただけなんですよ」


「まっ立ち話も何じゃ……ちょうど玉鋼(たまはがね)を切らせてな、休憩(きゅうけい)して()った処じゃ」


そう言いながら僕らを鍛冶(かじ)工房に入れてくれた。



「あの……水氣(すいき)の我々が、工房に入って大丈夫なんでしょうか?」


(おう)、先ほども言ったが、もう材料切れで店じまいじゃからな。入っても構わん……と言っても、工房の主である信一(しんいち)は、(ふもと)まで飯を買いに出てしまって居るがな」


ガハハハッと笑う天津麻羅(あまつまら)様は、相変わらず豪快(ごうかい)だ。


「すみません。手ぶらで訪問しちゃって……お茶の道具はあるのか……お茶()れますね」


「お湯なら直ぐに沸かしてやるぞ」


そう言って、南部鉄器(なんぶてっき)のヤカンに炎のブレスをして湯を()かしてくれた。


なるほど、普段はこうやって火を当て続け、鉄を溶かしているのね。


普通の鍛冶職人(かじしょくにん)なら(かま)の火を(おこ)し、(ふいご)という装置を使って空気を送り、(かま)の温度を上げて鉄を溶かすのだが……


そこは鍛冶屋(かじや)の神様、火を自分で生成するとは、鍛冶(かじ)のサイクルが早い訳だ。



(ねっ)せられて、(あつ)くなり過ぎたお湯を、水氣(すいき)を操って温度調節をし、お茶を()れる。



ちなみに、信一(しんいち)さんの御爺さんの湯飲みは、伏せたままである。


と言うのも、信一(しんいち)さんのお爺さんは、神器の作成の技を見届けた後、連日徹夜作業の無理が(たた)り、持病の腰痛が悪化して、今は山を下り自宅で療養中(りょうようちゅう)との事。


しかし、実際にその神の御業(みわざ)を目に出来たので、感無量(かんむりょう)だと嬉しそうな顔をしているとの事だった。



そんなこんなで、工房の本当の主である、根小屋(ねごや)さんの一族が居ないまま、話を始めるのだが――――――


「なるほどのぅ、(たけ)の処の(なまず)が……」


「えぇ。その(なまず)を大人しくさせる為に、建御雷(たけみかづち)様の御手伝いをしているんです」


「うーん。地震を止める為に、龍玉(りゅうぎょく)を使うなんざ、面白いことを考える。そいつは上手く行くだろうよ。だが問題は、緋緋色金(ひひいろかね)岩盤(がんばん)か……」


「ええ、そうなんです。あれが邪魔をしていて、攻撃が(なまず)まで届かないんですよ。緋緋色金(ひひいろかね)に弱点とかないんでしょうか?」



天津麻羅(あまつまら)様は、腕を胸の前で組んで一言――――――


緋緋色金(ひひいろかね)に弱点は無い」


あらら……


「じゃあ緋緋色金(ひひいろかね)岩盤(がんばん)を避ける様にして、射線上(しゃせんじょう)から外す様に、横へ動かなきゃならないか……」


予測される(なまず)の攻撃は、横移動中に追加で緋緋色金(ひひいろかね)の岩盤を持ち上げられたり、土氣(どき)の術で邪魔されたり……厄介(やっかい)だな。



僕が緋緋色金(ひひいろかね)岩盤(がんばん)対策を考えて、独り言を(つぶ)いていると、天津麻羅(あまつまら)様が――――――



「待て待て、緋緋色金(ひひいろかね)に弱点が無いと言ったのは、精錬(せいれん)し神器にした後の事じゃ。原石のままなら話は別じゃぞ」


「原石ならまだ打つ手があると?」


「うむ。原石の状態なら不純物(ふじゅんぶつ)も多く(ふく)まれて()るからな、術は跳ね返せても、純粋な物理の攻撃には弱いはずじゃ。精錬(せいれん)前なら金属の結合(けつごう)が、まだ完全に取れて()らぬからのぅ」


純粋な物理攻撃か……なるほど、僕が見様見真似(みようみまね)で撃った雷神剣草薙(らいじんけんくさなぎ)は、剣術が未熟な分をカバーする為に、雷撃多めで撃ったのが裏目に出て、余計に弾かれたって事か。


「しかし、純粋な物理攻撃か……」


千尋(ちひろ)、俺らの水ブレスなら、分類上は物理だぞ」


「でも千尋(ちひろ)ちゃんを(ふく)め、龍神様達のブレスは水氣(すいき)ですからね。緋緋色金(ひひいろかね)を抜きにしても、土氣(どき)である岩盤を打ち抜けるかしら」


小鳥遊(たかなし)先輩の指摘(してき)も、(もっと)もである。



「ならば、簡易(かんい)破城槌(はじょうつい)でも(つく)って(もら)う以外は……」


破城槌(はじょうつい)? あぁ、城門をぶち抜く攻城兵器(こうじょうへいき)か……今なんかは、外国の軍やスワットなどが、敵アジトへ突入する際に、ドアへ向けて使う携帯しやすいタイプが主流であるが、赤城(あかぎ)の龍神さんが言う破城槌(はじょうつい)は、前者の攻城兵器(こうじょうへいき)の方だろう。


さすがに龍脈に入りそうで無いし……それは却下だわ。


僕らが難しい顔で黙り込んでいると、天津麻羅(あまつまら)様が――――――



「何を御主等(おぬしら)そろって、難しい顔をして居るか? 簡単な事じゃろ、(わし)(みずか)(おもむ)けば良い」


「「「「 はい? 」」」」


全員で間の抜けた返事を返す。


「なにを(はと)豆鉄砲(まめでっぽう)を食ったような顔をして()る。(わし)の持つこの大槌(おおづち)は金属を叩くもの、どこもおかしい事ではあるまい」


「そ、そうですが……鍛冶(かじ)の方は、よろしいのですか?」


「材料が無いからのう。さすがの(わし)でも、無の状態から刃物は(つく)れんわ。だからこそ最高の材料、緋緋色金(ひひいろかね)の鉱脈があるなら取りに行かねばな。ガッハッハッハッ」


「理には(かな)ってますが……」


本当に良いのかなぁ。



「それにのぅ、友人である建御雷神(たけみかづちのかみ)(ため)なら、一肌脱ぐのも(やぶさ)かではないのだ」


なるほど、名目上は材料探しと(しょう)して、実の処は建御雷(たけみかづち)様を助けたいわけか。


直に助けるのを手伝うと言えない、実に人付き合いが不器用な、天津麻羅(あまつまら)様らし事だ。


「決行は(しお)が引いて、全員が海底洞窟へ入れる様になってからです」


「いや、信一(しんいち)が戻ったら、直ぐにでも送って(もら)おう。その方が龍脈移動とやらも楽であろう?」


確かに、鍛冶(かじ)で疲れて居る天津麻羅(あまつまら)様は、少し細身になる為。龍脈の入り口に()まらずに済むのだ。


時間が経てば、元の大きさに戻ってしまうので、細身である今の方が、移動が楽に済む。



「では信一(しんいち)さんが戻り次第、事のありましを説明して、鹿島神宮(かしまじんぐう)へ移動しましょう」


そんな事を話していると、ちょうど軽トラックのエンジンが止まる音がした。


「帰って来たな」



天津麻羅(あまつまら)様の言葉に、全員が入口へ目線を向けると、外から戸を開けた人物は、あまりにも酷い顔をした信一(しんいち)さんが、立っていたのだ。


その顔は、まるで連続徹夜明けしたみたいな酷い顔であった。実際徹夜続きなのだろうけどね。



「あれ? 皆さんお(そろ)いで、どうしたんです?」


「あ、いや……実は……」



事のあらましを説明した後。信一(しんいち)さんは――――――


「分かりました。ちょうど出来上がった包丁を、納品しようと思っていた処です」


「すみません。鍛冶(かじ)の邪魔しちゃって……」


「いやいや、天津麻羅(あまつまら)様にも御聞きしたと思いますが、材料が切れましたからね。丁度良かったのですよ……最近は納品しても即完売でして……」


何それ、凄い事に成ってる。


包丁は余程(よほど)(ひど)(あつか)いをしなければ、そう簡単に壊れるモノじゃ無いのに、それだけ需要(じゅよう)があるなんて……



其処(そこ)小鳥遊(たかなし)先輩がスマホを操作していて――――――


「人気なのは、きっと口コミのせいね。根小屋(ねごや)刃物店の包丁は、石も斬れるとか……(うわさ)に尾ひれ(まで)ついちゃってるわよ。神の包丁ですって」


最後の部分は間違ってない。実際に、鍛冶屋(かじや)の神が打っているんだしね。


ただ、石が斬れるまでは、行き過ぎかな……


「何を言うて()る、石も斬れるぞ」


マジカ!! 凄いな神の包丁。ウチの台所にも、一本欲しいものである。


香住(かすみ)も欲しがりそうだ。



「でもそれは、使い手自体が名人の場合ですよね。素人(しろうと)が石なんて斬れば刃が駄目に成ってしまいます」


「うむ、信一(しんいち)の言う通りだな。(いくら)(わし)神業(かみわざ)で打っても、使い手が駄目ならすぐ切れなくなる。どう足掻(あが)いても、材質以上の切れ味には成らんわな」


つまり、本来10と言うポテンシャルを材料が持っていても、11や12には成らないって事か。


人間が10の内、7から8ぐらいの性能を引き出している処を、鍛冶屋(かじや)の神である天津麻羅(あまつまら)様が、10の全開を引き出しているだけで、それ以上は使い手次第(しだい)って事なのだ。



「じゃあ緋緋色金(ひひいろかね)で包丁を打って(もら)えば、凄い事に成りますね」


「うむ。それなら、神器の包丁じゃからのう。じゃが、そこまで硬い食材は無いと思うがな」


確かに、そこまで硬い食材は食えたモノじゃ無いし、調理する意味がない。


それこそ緋緋色金(ひひいろかね)無駄遣(むだづかい)いである。


しかもメンテナンスできる人も居ないし、維持するのも大変だろう。結局は普通の包丁を、大切に使い、こまめにメンテナンスしていく方が良いと言う事だな。



「それにしても、口コミの力って凄いですね。毎回売れてるって言っても、今回みたいに完売し、入荷待ちになった事なんて初めてですよ」


そう言って驚いている信一(しんいち)さんに、小鳥遊(たかなし)先輩が――――――


「失礼ですが、ちゃんと寝てらっしゃいますか?」


「あ、いや……鍛冶(かじ)に作業に入れば、打ち終わるまでは休憩(きゅうけい)も出来ないので、ご飯と仮眠以外は……」


信一(しんいち)さん、目元に(くま)が出来てますよ」


「え? 本当に?」


他人に指摘されることで、ようやく自分が酷い顔している事に気が付いた様だ。


天津麻羅(あまつまら)様、駄目ですよ。人間に同じ尺度で休憩取らせたら、死んじゃいますって」


僕もさすがに見て居られなくて、先輩の意見に乗っかった。



淤加美(おかみ)様も建御雷(たけみかづち)様もそうだったけど、自分たちの加減でやるから人間はひとたまりもない。


僕の場合、龍に成ってたから乗り切れたし、(たける)さんも櫛名田比売(くしなだひめ)(くし)のお陰で半神化していたので、修業を生き残れたが


信一(しんいち)さんは完全な人間なのだから、同じ休憩時間じゃ倒れちゃいます。



「そうか……気が付かなんだ……信一(しんいち)よ。これから友人である建御雷神(たけみかづち)の処へ助太刀(すけだち)に行く。その間ゆっくり休むがいい」


天津麻羅(あまつまら)様。戻ってきてもらえますよね? まだ教わりたい事が、沢山あるのです」


勿論(もちろん)だ。鍛冶(かじ)作業も、途中で投げ出したりする事は、絶対にしないだろう? 必ず戻って来るゆえ、万全(ばんぜん)の状態で待って()れ」


良い師弟愛だなぁ……


とりあえず、信一(しんいち)さんは山を下りて、天津麻羅(あまつまら)様から言われたように、自宅できちんと休むとの事。



僕らは新たに天津麻羅(あまつまら)様をメンバーに加え、一度鹿島神宮(かしまじんぐう)へと戻る事に成った。



本当なら、そのまま京へ向かいたかったが、天津麻羅(あまつまら)様が鍛冶(かじ)疲れで()せている内でないと、龍脈が通れないから、急遽(きゅうきょ)鹿島神宮(かしまじんぐう)へと戻ったのだ。



千尋(ちひろ)殿。お主の龍脈術は、いつも森の中に出るが、何とかならぬのか?」


「すみません天津麻羅(あまつまら)様。龍脈から出る処を、鹿島神宮(かしまじんぐう)へ参拝に来た、参拝者に見られない様にする為です」


16時近いとはいえ、まだ日が出ている為、参道に出る訳には行かないのだ。


龍脈の出口に人が居なければ、問題ないのだけどね。



「なあ千尋(ちひろ)……カラスが威嚇(いかく)してないか?」


セイの(つぶや)きに樹の上を見上げると、そこにはカラスの巣があり、親鳥が威嚇(いかく)していたのだ。


「彼らの縄張(なわば)りか……マズイな」



どんどん仲間のカラスが集まって来るので、鳴き声が凄く会話もままならなくなる(ほど)であった。


そのうち、一匹のカラスが真上から、威嚇(いかく)がてら粗相(そそう)をしてきて、セイの頭に直撃したのだ。


「うわぁ、汚ねえ!! あのバカラス爆撃しやがった!! 焼き鳥にしてやるぞコノヤロウ!!」


「お前は水の龍で、火が吐けないでしょうが!? というか、逆に威嚇(いかく)するなよ!!」


凄い数のカラスの大群に追われながら、本殿へ走る僕達だが、本殿入り口手前で小鳥遊(たかなし)先輩が――――――


(しお)が引くにはまだでしょ? なら私は買い物に行ってくるわ」


「先輩、買い物なら一緒に……」


「身に着けられるライトを買ってくるだけだから。どうせ、海底洞窟の中は真っ暗でしょ?」


なるほど、僕ら龍族は龍眼(りゅうがん)があるので、洞窟の中でも普通に見えてたが、先輩は人間だものね。(あかり)が無ければ戦闘どころではないのだろう。



「了解です。どのみち此方(こちら)は、一度京へ子狐(こぎつね)ちゃんズの(むか)えと酒米(さかまい)を取りに行く約束がありますから、それが済み次第、この鹿島神宮(かしまじんぐう)(おとず)れますよ」


「じゃあ、ここで落ち合いましょ。それと、神使(しんし)桔梗(ききょう)さんからメールが着ていたわよ、一度電話してみて」


そう言って、小鳥遊(たかなし)先輩は街への参道を駆けて行く。



「おい千尋(ちひろ)! カラスが追い着いて来たぞ。早く本殿へ避難(ひなん)しようぜ」


セイの泣きそうな叫びに、()かされながら本殿前に出ると、どうやらカラスは、そこまでは追ってこない様だ。



「神域に入るのはマズイと、本能的に分かっているのじゃろう」


そう言いながら出て来たのは、建御雷(たけみかづち)様と宮司(ぐうじ)さんだった。



「おおっ!! (たけ)! 久しぶりよのぅ、瑞樹神社(みずきじんじゃ)相撲(すもう)を取って以来じゃな」


もう、瑞樹神社(うち)相撲(すもう)で壊すのはヤメテくださいね。



息災(そくさい)のようじゃな天津麻羅(あまつまら)、少し痩せたか?」


「ちょっと鍛冶(かじ)疲れが出ておるだけじゃ。なぁに、直ぐに戻るわい」


相変わらず、遠慮(えんりょ)のない大笑いをしながら、楽しそうに2柱で肩を組み、本殿へ入って行ってしまった。


積もる話は二人に任せ、僕は――――――


宮司(ぐうじ)さんすみません。お電話お借り出来ますか? スマホが融けちゃってて……」


「ならば、社務所(しゃむしょ)の電話をお使いください。さすがに神様が住まう本殿には、電話を引いてませんので」


それもそうか、本殿に回線を引いて欲しいなんて言うのは、ウチの淤加美(おかみ)様か、豊玉姫(とよたまひめ)様ぐらいなものだ。


豊玉姫(とよたまひめ)様は、龍宮(りゅうぐう)まで回線が引けないと言われ(なげ)いていたが、そればかりは仕方がない。深海(しんかい)だしね。


お陰で瑞樹神社(うち)に入り(びた)ってるのだが……出雲(いずも)行きまで居座(いすわ)るつもりかな?



いつも香住(かすみ)が用意してくれるポケットティッシュで、セイの頭に粗相(そそう)されたを汚物を(ぬぐ)ってやりながら、社務所(しゃむしょ)の電話を借りて掛ける。


呼び出し音が鳴る中――――――



「セイだけ粗相(そそう)されて、運が良いね」


「良いもんか! なんで俺だけ……」


(われ)と並んで千尋(ちひろ)さんの頭に乗っていながら、セイ龍だけ……日頃(ひごろ)の行いの差かな?」


赤城(あかぎ)! 日頃(ひごろ)の行いって……」


セイが言い掛けた処で、呼び出し音が終わりったので


僕は(くちびる)に人差し指を押し付け、静かにするようにジェスチャーを送る。



『はい、瑞樹神社(みずきじんじゃ)でございます』


「もしもし、桔梗(ききょう)さん? メールくれたみたいだけど?」


千尋(ちひろ)様。御無事でしたか!? 京の貴船(きふね)で龍の巫女をしている、小川(おがわ) 伊織(いおり)様から電話がありまして。四聖獣(しせいじゅう)玄武(げんぶ)様が訪れ、千尋(ちひろ)様が()られないとの事で、心配しておりました。今、どちらに?』


そうか、結界の視察に行くはずが、(たける)さんの死んだメール騒ぎで、急遽(きゅうきょ)行先変更してしまったからね。


四聖獣には行先変更を言ってなかったし、心配させちゃったか……



「えっと、事の始まりは……(たける)さんのメールからなんです」


此処(ここ)(いた)った経緯(いきさつ)を、桔梗(ききょう)さんに()(つま)んで話す。



『今度の相手は(なまず)ですか?』


「そうなんだ……本来なら瑞樹(みずき)神佑地(しんゆうち)外の事なんだけど、大地震が来れば関東全域に被害が出るので、北関東も他人事(ひとごと)じゃないからね。だから手伝う為に、鹿島神宮(かしまじんぐう)に居るんだけど……これから(しお)が引く前に、宇迦之御霊(うかのみたま)様にお願いした、酒米(さかまい)を取りに伏見稲荷(ふしみいなり)(まで)行ってきます」


『でしたら、その前に平安神宮(へいあんじんぐう)御寄(およ)りください』


平安神宮(へいあんじんぐう)? あそこは麒麟(きりん)さんが居る場所じゃ?」


『はい。麒麟(きりん)様が是非(ぜひ)()って話があるとの事です。他の四聖獣(しせいじゅう)もそこで待つと』


麒麟(きりん)さん……何かあったのかな?



神使(しんし)桔梗(ききょう)さんとの電話を切ると


僕らは一路(いちろ)、京の平安神宮(へいあんじんぐう)へと、龍脈を開けるのであった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ