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夢現  作者: 夜乃 ユメ
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懐旧

そんなわけで彼女とはあの日以来会っていない。僕人生上もっとも濃密で刺激的だった日常はあの日だった。


「久しぶりだね、私がいない間元気にしていましたかね」


「本当に久しぶりすぎて何も言えないよ。どこほっつき歩いていたんだか」


「まぁ少々私の人生上にバグが起こったものでして。再起動のボタン探してたんだけど気づいたら電源落ちてあじゃぱー、みたいな感じかな」


「よくわからないからこれ以上の追及はやめておくよ」


「ははは、ぜひそうしてくれい!」


 今までに出会ったことのないような系統の女性である箕輪あやめこと、霧里あやめは、再開してもその独特の雰囲気と挙動で僕の中にあった思い出をコンマ0.5秒で思い起こさせる。香りで記憶が呼び起こされるというが、インパクト大である人間の挙動でも懐旧の情は十二分に沸いてくることが今わかった。正直なところ、なぜ彼女が失踪し、今になってここにいるのかという疑問は溢れてくるわけだけれども、それを深く聞くのは僕という人間性的にありえないので、黙っておこう。


 「私新人だし、わからないことめちゃくちゃあるから、よろしくお願いしますね先輩」


と嫌味のような感情をこめて言ってくるが、ここで相手にしたら相手の思うつぼなので無視を決め込み何も言わずにいた。成長したと思う、主に彼女の扱いについて。多大なるブランクはあるけれども。




「ねぇねぇ、おなか減ったからどこか食べに行こうよ!」


「君は本当に変わらないな。いつもいついかなる時も食べることしか頭にないのか」


「そりゃ、人間腹が減っては戦はできぬ、なんて言葉があるぐらいだから食べ物のこと考えないとやってらんないでしょ」


「誰もが大食いで常時食事のことしか考えていないなんて思わないでくれよ」


「言葉を考えた人と同じような類の人間の話ですぅ。類は友を呼ぶのだよ。しかしまぁよく私が食べることで頭がいっぱいだなんて覚えてたね」


「あんなに食べる人は僕人生上でもそうはいなかったからだよ」


というのは嘘だ。おそらくほかの人間Aが大食漢であったなら僕はきっとそのことを記憶していない。彼女だったからこそ、彼女に興味があったからこそ覚えていたのだと思う。絶対にこの隣にいる女性にはそれを打ち明けたりしないけど。



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