僕はエロ本が読みたい
「僕はエロ本が読みたい」
声に出して実感した。僕はエロを求めている。
中学二年男子の僕にとって、エロ本とは手の届かない存在だ。しかし見たい読みたい感情が抑えられない。
女体が見たいのだ。つまりおっぱいが見たいのだ。とどのつまりはおっぱいが触りたいのだ!
しかしそれも叶わない。いや、叶えている同級生も一部にはいるのだろう。おっぱいを触るだけでなくもっとその先にまでいっているのかもしれない!
ただただ憎らしい、一部の男子が複数の女子とそういう感じになる現象など消滅すればいい。
話が逸れた。僕が何を言いたいのかというと、
おっぱいを見たい、だが本物は見れない触られない、ならばどうすれば良いかということである。
それにはどうすれば良いか。
エロ本を買うのである。
言葉にすれば単純だ。だがこれはとても厳しいミッションである。
同級生に見られるかもしれない。店員が若い女性かもしれない。それどころかエロ本を中学生が買うことを咎められるかもしれない。
そんなことが起きれば恥ずかしくなっておしっこを漏らしてしまうだろう。
だから僕は一つの妥協点を見つけた。
性描写のある全年齢の漫画を買うのである。
そこには少年シャンプーのお色気枠では不可能な甘美で艶やかな世界が広がっているだろう!
夢が広がっているだろう!
ミッションを行う店舗は決まっている。自宅の最寄り駅から二駅離れた本屋だ。古本を扱っており、レジにいるのはいつもお爺ちゃん店員なのだ。さらには袋が紙袋で中身が見えなくなる。下調べは十分だ。
その本屋で、「二人エイチ」を買うのだ!
予算の都合上中古で買うことになるがそれは仕方がない。よく聞くのだ、兄貴の二人エイチを読んだクラスメイトがめっちゃエロかったと自慢しているのを。
それが遂に僕の手に……。気分は高まるばかりである。
さあ、ミッションスタート。
まずは店員の確認。
「OK……」
普段通りお爺ちゃん店員、いつものように少し震えている。
次にターゲットのチェック。
商品に興味がないふりをしながら横目でブツを目視。
「巻数は飛び飛び……まあいいだろう」
ストーリー はどうでもいい、そこにエロ、おっぱいがあれば。
再び売り場へ。
適当な巻を片手で目線を向けないよう素早く手に取る。
「よし……」
後は会計だけである。ツワモノは健全な雑誌で挟むビーエロティーサンドという技を使うらしいがそんな予算はない。
バーコードを店員側に向け、レジがスムーズに進むよう工夫する。
ここで一つ失敗に気付く。お爺ちゃん店員のレジ速度が遅い!
一つ一つの所作がまるでコマ送りのように感じる。今この瞬間にでも知り合いが近くを通ったら……。
しかし、杞憂に終わった。レジも終了し、紙袋に入った商品を受け取り、家に帰る。
帰り道に誰かとエンカウントする可能性もあったが、無事、家まで辿り着けた。部屋に直行である。
さあ、遂にエロがこの手に。おっぱいがこの手に! いや揉めるわけではないが、比喩表現だ。
僕は紙袋を床に置き、手を打ち拝んだ。
僕はエロに対しては礼をもって接したいのだ。
開封の儀。
震える手、乾く口内、膨らむ胸ともう一箇所。
僕は、ページを開く。
「これ全巻カバーの中身ヴェルセルクだ……」
イタズラされて中身が入れ替えられていた、中古の哀しみだ。
僕な少年シャンプーのトラベルを読んで寝た。