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第1部 * 1 *


「ただいまー」

 お盆休みのため実家に帰省した小陽こはるは、面している道路に街灯が少ないために夜の闇に溶け込み気味の玄関を入った。

 本当は、もっと早い時間に来れるつもりでいたのだが、電車が混み過ぎていて、乗る予定だった便の何本も後の便に、やっと乗れたのだ。

 入った瞬間、

(……あれ? )

 玄関に鍵は掛かっていなかった様子なのだが、家の中は暗く静まり返り、イイイイイイイイイイ……と、耳鳴りなのか電化製品か何かの発する音なのか区別のつかない静寂の音だけが聞こえる。

(鍵かけ忘れて出掛けちゃったのかな……? )

 そんなふうに考えながら玄関を上がり、廊下をほんの数歩 進むと、玄関からは階段の陰になって見えないダイニングのガラス扉に明かりが見えた。

 その時、ガラス扉が開き、3つ年下、13歳の妹・星空せいらが仏頂面で出てきた。

(あ、いたんだ……)

 星空は、大股早歩きで小陽の脇を通り過ぎ、玄関で靴を履いてドアを開ける。

 時刻は、もう19時過ぎだ。

「っ? どこ行くのっ? 」

もう こんな時間なのに、と驚き、追おうとした小陽の鼻先で、

(っ! )

ドアは閉まる。

(お父さんとお母さんは、どうして黙って行かせるのっ? )

 小陽は踵を返し、父や母がいると思われるガラス扉を入った。

 そこに父はおらず、母がひとり、ダイニングテーブルで食事をしていた。

 その向かい側には、酷く中途半端に食い散らかされた食器類。そのうち茶碗と箸が星空専用の物であることから、そこで食事をしていたのが星空であると分かる。

 母は無表情で静かに食事を続け、食べ終えると、フワッと立ち上がり、自分の物と星空の分の食器をまとめ、手に持ってキッチンへ。

 小陽は、母のすぐ傍をついて歩く。

 静かに静かに、やはり無表情で皿を洗い片付ける母。

 やがて片付け終え、キッチン、ダイニング、と、順に明かりを消しつつ廊下に出て、明かりをつけず暗いままの廊下、階段を、まるで幽霊のようにフワフワ……と音も無く歩き、2階の寝室へ、スウッと吸い込まれていった。

(…お母さん……。どうしちゃったの……? )

 小陽の知っている母とは まるで別人のようなその様子に、心配になりながら、ひたすらついて歩く小陽の目の前、母は足元からゆっくりと崩れ、自分のベッドと父のベッドの狭い隙間にペタンと座って正面のサイドボードに腕を伸ばし、上に置かれた木の縁のシンプルなフォトフレームを手に取った。

 そのフォトフレームの中では、小陽が微笑んでいる。

「…小陽……」

 注意深く聞かなければ聞こえないほどの小さな声で、母は小陽の名を呼び、フォトフレームの小陽を抱きしめた。

(ホントに、どうしちゃったんだろ……? )

考えて、小陽はすぐにハッとした。

(もしかして、あの日から ずっとこんななの……? )

 あの日、とは、小陽が、小陽の今いる、そして両親や妹の暮らす この世界、肉体のある人々が生きる、ここ、物界ぶっかいで肉体の死を迎えた日のこと。

 そう、先程 小陽は、母の様子を、まるで幽霊のよう、と表現したが、ここ物界で一般的に言うところの幽霊、なのは、本当は小陽のほうなのだ。




 野原小陽のはらこはるは49日前に肉体の死を迎え、肉体の無い人々の生きる世界・心界しんかいへ引っ越した。

 今は、お盆のため帰省している。

 四十九日の後に最初に訪れるお盆・初盆だ。

 小陽は生まれつき心臓が上手く機能せず、出生後間もなく、医師から、半年も生きられないだろうと宣告を受けていた。

 それが どうしたワケか、その心臓は16年間も持ち堪えた。

 もちろん、健常者のようには生活できない。ずっと病院暮らしで、たまに許可をとって両親と妹の暮らす家に外泊させてもらう以外は、外に出掛けることも無い。しかも車椅子だ。

 16年も持ったのは、そのためかも知れない。また、ある程度の年齢になった時に、自分の体について きちんと説明されていたのも良かったのだろう。自分でも気をつけることが出来たから……と言っても、隠れてコソコソ夜更かししたりしない、とか、何かをする前には必ず ひと呼吸おくとか、その程度のものだが。


 あの日……。

 朝から検査続きだったためか何だか疲れてしまった小陽は、自分の病室に戻り、昼食をとった後、珍しく昼寝をした。

 そして、ふと目を覚まし、半身起き上った時、

「……? 」

違和感を覚えた。

 体が妙に軽い。

 いつもに比べ、とても楽に起き上がれたのだ。

 首を傾げつつ、ベッド脇に置いてある車椅子に移るべく体の向きを変え、脚をベッドの下におろしてベッドの縁に腰掛ける格好になる。……その動きも軽い。

 もうひとつ首を傾げながら、車椅子に手を伸ばした小陽。

 瞬間、視界の隅、ベッドの上に何か不自然なものがあるのが映った気がし、何の気なく そちらを見た。

(! )

 そこにあったのは、ベッドの下におろしていたはずの自分の脚。

 脚だけではない。きちんと振り返って確認してみると、自分が目を閉じ静かに横たわっている。

 驚いたが、すぐに状況を理解した。

(…わたし、死んだんだ……。多分……。だって、前にテレビで見た。死んだ時、宙に浮いて真上から自分を見下ろす感じ。わたしは浮いてないし真上からじゃないけど、でも、似てる……)

 状況は理解したのだが、

(……)

何だか、気持ちがついてこない。

 何だか実感がわかない……と言うか、何の感情も今のところ無く、「ふーん……」といった感じ。

 とりあえず、しっかり正面から見てみようと、ベッドに横たわっているほうの自分と向き合うべく、小陽はベッドから下りて立ち上がり、

「っ!!! 」

また驚いた。

 フラフラしない。

 床についた両足には しっかりと力が入り、頭のてっぺんまでの全身をバランスよく支えている。

(何っ? この力強い脚はっ! )

 ほとんど歩くことの無い自分の脚。手で何処かに掴まるなどしなければ、本来は立っていられないはず。それが、必要なかったのだ。

 確かめるように、両足でギュッギュッと床を踏みしめる。

 力が漲り、発散しなければ自分が弾け飛び散ってしまいそうに思えて、突き動かされるように無意味に動き回らずにいられず、初めはベッドから下りたその場でピョンピョン跳びはねクルクル回った。次第にノッてきてベッドから離れ、少し広くなっている部屋の入口のほうへ移動し、テレビの中のアイドルを真似て踊る。

 意に反してだが、嫌ではない。

 今まで力が入らず動けなくてもどかしかった。

 両親や星空や看護師たちの、おそらく本人たちにとっては普通な何気ない力のこもった動作のひとつひとつを見るにつけ、憧れていた。

 嫌なワケがない。嬉しくてたまらない。

(すごい! 軽い! 力強い! 楽しいっ! )

 もう勢いがついて止まらない。止められない。

 力は発散されるどころか次から次へと湧いてきて、自分自身が純度100%のエネルギーの塊である錯覚さえ起こした。

 ダンスなどでは到底治まらない。スーパーボールのように、四方の壁に向かって行って ぶつかっては跳ね返り、を繰り返す。

(楽しい! 楽しい楽しいっ! )

 特に、窓側と入口側の間の移動が距離が長く楽しい。

 空間を切り裂かんばかりの勢いで、入口から見て左の壁に当たって跳ね返り、小陽は右の壁へ。

(よし! 次は角度的に窓側から入口側のコースに行けるっ! )

 そこを、

「っ? 」

 誰かに正面から抱きつくような格好で受け止められた。

 壁にぶつかったのと変わらない状態なのに跳ね返ることを許されなかった分の衝撃があった。

 小陽を受け止めた人物は、大きく息を吐きながら、小陽の背に回していた手を緩め、体を放す。

 その人物は、眼鏡をかけ白いワイシャツにカチッとしたグレーのズボンを合わせた服装をした、やや小柄な20代前半くらいの真面目そうな青年。

 青年は営業スマイルを浮かべ、

「失礼。何度も声を掛けたのですが、聞こえていないようでしたので、強引に止めさせていただきました」

「あ、はあ……? 」

 小陽は頭の中が「?」だらけで、中途半端な返事になってしまった。

 青年は構わず続ける。

「僕は心界役場住民課案内員で日向三郎ひなたさぶろうと言います。…えーっと……」

言葉を完全には途切れないようにしつつ、肩から斜めにかけていた肩掛けとしては大きめの鞄の中をガサゴソ。ややしてA4サイズの紙を取り出し、それに視線を落として、

「野原小陽さん、16歳。現住所、西塔さいとう市立病院A病棟803号室。転入事由、心不全」

読み上げてから視線を小陽に戻し、手元の紙の向きを変え、シャツの胸ポケットから出したボールペンと共に差し出し、

「間違いが無ければ、ここにサインをお願いします」

サイン欄を指さす。

 小陽は途惑った。間違いが無ければ、と言われても、と。

(…確かに、わたしは、野原小陽って名前で16歳。この病院の名前は西塔市立病院で、この病室の部屋番号はA病棟803号室だけど……。『てんにゅうじゆう』って……? )

 サインをするしない以前に、とりあえず、てんにゅうじゆう、という言葉の意味自体が分からないため、聞いてみようと、

「あの……」

 小陽が口を開いた、その時、入口のドアがコンコン。ノックされてから開き、

「小陽ー」

大きめの紙袋を手にした母が入って来て、ベッドに目をやると急に小声になり、

「あ、お昼寝? そっか、今日は朝から検査があったんだっけ? 疲れちゃったんだね」

 母は音をたてないよう気を遣っている様子で、手にしていた紙袋の中から洗濯済みのタオル類と下着とパジャマを順番に片手で持てる分だけ出しては、所定の位置に仕舞っていく。

 仕舞い終え、部屋の隅から折り畳み椅子を引っ張って来、ベッドの枕側に置いて、フウッと息を吐きつつ腰掛ける母。空になった紙袋を畳んでサイドボードの上に置いてから、ベッドに横たわっているほうの小陽の顔を間近から覗いた。

 直後、

「…小…陽……? 」

表情を曇らせてガタッと椅子を鳴らして立ち上がり、

「小陽! 小陽っ! 」

横たわる小陽に覆い被さるようにして肩を掴み、揺さぶった。

 母は、今にも泣き出しそうな表情で、枕元のナースコールのボタンに縋るように手を伸ばし、押す。

 すぐさま主治医と看護師2名が駆けつけた。

 駆けつけざまベッド脇から小陽を一瞬だけ見下ろし、看護師2名を振り返って、何やら指示を出す主治医。

 それを受け病室を飛び出して行った2名の看護師は、ちょっともしないうちに大掛かりな感じの機械を2人がかりで押して戻って来た。

 そこからは、泣き顔の母が隅で見守る中、主治医と看護師があれやこれやと動き回り、室内はにわかに騒がしく。

 ややして、大きな動きをしなくなった主治医。

 看護師2名は機械を片付け運び出す。

 静けさ取り戻した室内で、主治医、胸ポケットからペンライトを取り出し、小陽の左右の瞼を押し開いて光を当てた。

 それから、腕時計を確認。

「17時27分。ご臨終です」

「……っ! 」

母が、声になりきらない声で何かを叫び、横たわっているほうの小陽に駆け寄って、その胸の上あたりに抱きつくように覆い被さって顔を伏せ、肩を打ち震わせる。

「…お母さん……」

泣いている母につられて、小陽も泣きそうになった。

 一礼して退室する主治医。

 ほぼ入れ替わりに、

「お姉ちゃーん! 」

その場の沈んだ空気を一掃するような明るく元気な調子で言いながら、入口のドアを開け、中学の制服姿の星空が入って来た。

 ドアを開けるために片手を空ける必要があったのだろう、小さな片手で何とか頑張ってソフトクリームを2個持ち、学校の鞄は小脇に抱えている。

 ドアを閉めてから、星空はソフトクリームを1個、空いているほうの手に移し、ちょっとホッとした様子を見せつつ、

「病院の前のたい焼き屋さんがね、今年もソフトクリームを始めたの。お姉ちゃんの好きなイチゴ味と、今年の新商品のみたらし団子味を買って来たんだけど、お姉ちゃん、どっちがいいー? 」

(へえ、みたらし団子味っ? おもしろーい! )

 小陽は、ごく普通に星空に歩み寄り、

「じゃあ、わたしは」

選ぼうとしたが、目の前で、ソフトクリームは2つとも星空の手を離れて落下。

(あっ! )

 小陽は咄嗟に手を伸ばして受け止めようとしたが間に合わず、ソフトクリームは床に落ちてグシャッとなった。

(あーあ、もったいない……)

 それほど多くないはずのお小遣いをはたいて買って来てくれた星空は、もっとガッカリしてるだろう、もしかしたら泣くんじゃないかと思い、小陽は、恐る恐る星空を窺った。

 すると星空は、ベッドのほうを見て固まっていた。

 星空の視線の先にあるのは、横たわっているほうの小陽と、その傍らで泣く母。

「…お…姉、ちゃん……? 」

 星空は足を引きずるようにして、ゆっくりとベッドへ歩いていく。

 ベッド脇、母の隣まで辿り着き、呆然と立ち尽くして、横たわっている小陽を見下ろす星空。

 30分ほどが経ち、病院の人が連絡してくれたのか、父がやって来た。

 母は相変わらず、横たわっている小陽の上に顔を伏せて肩を震わせ、星空は放心状態。

 父は無言で背後から母の肩を抱いた。

 暗く重たい沈黙が、室内を押し包んでいる。

「…お母さん、星空、お父さん……」

 小陽は悲しくなってきた。父が、母が、星空が、悲しんでいるのを見ていたら、何だか、とても悲しくなってきた。

 先程も、一度は、母の泣いているのにつられて泣きそうになったが、星空の明るさに紛らわされていた。

(皆、わたしが死んで悲しんでる……。わたしが、悲しませちゃってる……)

 小陽は、おそらく1時間半から2時間くらい前、自分が死んだのだと気づいた瞬間のことを思い起こす。

(……わたしは、自分が死んだことを、特に何とも思わなかった。多分、自分がいつ死んでもおかしくないって、いつも思ってたからだよね?

 皆は違うのかな? 皆は、わたしと過ごせる時がいつ終わるか知れないから、きっと長くないってことも分かってたから、わたしと過ごす時間を大切に、わたしに優しくしてくれてたんじゃないの? …悔いの残らないように、悲しまなくていいように……。

 足りなかった? タイミングが悪かった? あるよね、そういう時。わたしも正直、星空がせっかく買って来てくれたソフトクリームを、星空と一緒に美味しく楽しく食べてからがよかった、とか、ちょっと思ってる。

 …何か、悲しいよ……。自分が死んだこと自体は何とも思わなくても、そのせいで皆が悲しんでると思うと、これまで、いつもわたしに優しくしてくれた大好きな皆を、わたしが悲しませちゃってると思うと、悲しくなっちゃう……)

 横たわっているほうの小陽の傍で悲しむ3人を、小陽は、胸を締めつけられるような気持ちで、

(…そんなに泣かないでよ……。分かってたことでしょ? わたし、頑張ったよ? 初めにお医者様から言われてたより、ずっと長く生きたよ? 

 星空みたいに勉強やスポーツで頑張って何かしらの結果を出すようなことは無かったけど、頑張ったんだから、そんなに泣いて責めないでよ……)

ほんの少しの腹立たしさを持って見つめた。

 その時、

「…あの……」

背後から遠慮がちに声が掛かる。

 ハッとし、振り返る小陽。

 そこには、小陽が自分の死に気づいた後、軽くなった体に浮かれて遊んでいた時に突然現れ、日向三郎と名乗った青年。

 おそらく、さっきからずっと、この病室内にいたのだろうが、存在自体すっかり忘れていた。

 忘れてしまっていたことが正直に顔や態度に出ていたか、日向三郎青年は、

「心界役場住民課案内員の日向三郎です」

自己紹介し直した。

(…そこまで忘れてはない……いや、存在を忘れていたくらいだから忘れてたのかもしれないけど、少なくても存在を思い出したのと一緒には思い出してたけど……)

 日向三郎の生真面目な態度が何だかおかしくて、小陽は、ちょっと笑ってしまいそうになりながら、そう言えば、と思いだす。「てんにゅうじゆう」とは何なのか聞こうと思っていたのだ、と。

(……って言うか、その前に「しんかい」って? 地名? 「やくば」は、あの事務手続きなんかをする「役場」でいいの? そこの「じゅうみんかあんないいん」って、何する人? )

 日向三郎の言ったことが、ほぼ丸ごと分からない小陽。そのまま口に出して聞いてみると、日向三郎は答えて曰く、

「心界について説明する前に、まずは、これまであなたの暮らしていた この世界・物界ぶっかいについて説明します」

「ぶっかい? 」

「はい。人は皆、誰でも、生まれる時には肉体を持って生まれてきますよね? 」

 分かりきったことすぎて、小陽は逆に返答に困り、途惑いつつ、

「……『よね』って、まあ、そうなんじゃないですか……? 」

「はい。そうなんです。……すみません。聞かれても困りますよね? 」

(また、「よね? 」って聞いたけど……)

 心の中で小陽がツッコんだのが聞こえでもしたように、日向三郎はハッと口を押える。

「すみませんっ。多分、癖なんですっ。聞き流してください」

(うん、わかった)

 小陽が頷いたのに頷き返し、日向三郎は、小さく咳払いをひとつしてから、

「肉体を持って生まれる場所は、ここ物界と決まっていて、皆が皆、ちょっと不便な肉体と共に、ここで人生をスタートします。

 肉体は前世での行いに対する一種のペナルティのようなものであると言われています。稀に肉体を持たずに人としてではなく全く別の非常に恵まれた場所に転生する方もいらっしゃるため、そのように言われているのですが、その方は、前世において我が身を擲って世のため人のために尽くすなどされた本当に特別な方ですので、まあ、どちらが通常かと言われれば、肉体を持って物界に転生のほうが一般的なパターンであると言えます。

 ただ、ここで間違えてはいけないのは、肉体は与えられること自体がペナルティであって、どのような肉体を与えられるか、例えば外見の美醜や障害の有無、障害まではいかなくても肩が凝りやすかったり虫歯になりやすかったりする肉体の癖は、ランダムなものであるということ。不便な度合いの大きな肉体を与えられた方が、度合いの小さい肉体を与えられた方に比べ、前世を問題のある生き方をしたのではないということです。前世で犯罪などを犯した者は、物界に転生しない……それ以前に、犯罪を犯したのが物界で生きている間のことであれば、肉体を失った時点で、他の大多数の方々とは行先が別になりますので」

(……)

 小陽は頭がクラクラしてきた。

 今、日向三郎が説明している物界、というのは、これまで小陽自身が暮らしてきた、そして、まさに今いる、この場所のことのはずなのだが、今いちピンとこず、話についていけなかったのだ。

(…わたしが、ずっと病院の中で暮らしてたせい……? 他の、病院の外で生活してた人たちなら、ちゃんと分かる話なのかな……? )

 しかし、この話が、これからの自分にとって大切な話の、まだほんの導入部に過ぎないであろうことを分かっているため、何とか理解しようと一生懸命に耳を傾ける。

「不便な度合いの大きな肉体を与えられていた方ほど、肉体の死を迎えて肉体から解放された時の感動は大きいのではないでしょうか?

 肉体の問題は肉体の問題でしかないため、解放された瞬間、例えば、目の見えなかった方は目が見えるようになりますし、耳の聞こえなかった方は聞こえるように、手足の本数の足りなかった方などは、足りなかった分が現れるんです。高齢になってから肉体を失われた方の場合は、まだ若く元気に動けていた頃の姿と動きに戻ったりもします」

(…肉体の死を迎えて肉体から解放された瞬間、っていうのは、さっき、わたしが自分が死んだことに気づいた時のこと、だよね……? 

 ああ、それでわたしも、今まで重たかった体が急に軽く……?

 ……って、あれっ? じゃあ何で、この日向さんって人は眼鏡なんだろ? )

 それをまた、そのまま口に出して聞いてみる小陽。

 日向三郎は、ちょっと笑って、

「ああ、これは伊達なんです。僕、肉体のあった頃はずっと眼鏡をかけていたので、無いと何だか落ち着かなくて」

言ってから、話しを戻す。

「肉体から解放された後に向かうのが、あなたも今から行く場所・心界です。そこで転生までの残りの人生を過ごします。

 心界で過ごす期間は人によって違い、一般的には、肉体の死亡日から起算して、最短で7カ月。長くて35年です。人を指導する立場である指導階級の資格を得ると大幅に遅れますが」

(転生……。残りの人生……。つまり、肉体の死は、別にわたしの死じゃなくて、わたしの人生は、まだ続いてる。

 わたしが本当にいなくなるのは、いつか転生……他の人として生まれ変わる時、ってこと?

 それで結局、心界っていうのは地名で合ってたんだよね? しかも、今からわたしが行く場所の? )

「僕のような住民課案内員の仕事は、物界で肉体の死を迎えた方を物界まで迎えに行き、無事に心界まで連れ帰って、肉体の死亡日を含めて49日間、その後の心界での生活に困らないよう、行政の管理する転入者研修センターで寝食を共にしながら、心界で生活する上でのルールやマナー、一般常識を教え、就職活動や住まい探しをサポートすることです」

(行政の管理する施設を使うということは、「やくば」はやっぱり、あの役場のことでよくて、仕事内容を聞く限りでは、そこの「じゅうみんかあんないいん」は、おそらく漢字に直すと「住民課案内員」。つまり、役場の職員)

「言うまでも無いと思いますが、念のため。僕が、小陽さんの担当案内員です」

(そうですね。そうじゃないかと思ってました)

小陽は日向三郎の役場の職員であるという肩書きに、もともと特に警戒していたワケではないが、すっかり安心したこともあり、その真面目を絵に描いたような態度のおかしさに、心の中で、親しみを込めた笑いと共にツッコむ。

 同時、

(……? )

そんな自分の気持ちを、ちょっと不思議に思った。

 出会ったばかりの相手に、この安心感。どこがどう安心かと聞かれても困るのだが……。無事に心界まで連れて行かなくてはならないため、この安心させる感じは、案内員という仕事上持っている必要な技能だったりするのかも、と思った。

「仕事上の関係ですが、暫くの間、四六時中一緒にいることになりますので、実のお兄さんに接するようなつもりで、気軽に、サブローとでも呼んで下さい」

「サブロー、さん? 」

「はい」

早速 名を呼んだ小陽に、日向三郎は、営業的にではなく、自然に笑んだ。

「『てんにゅうじゆう』って何ですか? 」

「ああ、本人確認用紙についての質問ですね? 簡単に言うと、肉体を失うことになった理由や原因です」

(あ、そうなんだ。「転入事由」か……。じゃあ、心不全で合ってるんだよね? 多分。お医者様じゃないから、ちゃんとなんて分からないんだけど……)

 小陽は心配になり、

「もし間違ってたら? 」

「転入事由が間違っていても、特に問題無いです。用紙に記載されていることは、年齢にしても現住所にしても転入事由にしても、本人確認のための参考であって、肉体を失ったご本人が、確かに自分のことであると確認出来さえすればいいんです。

 大事なのは、人違いをしないことと、肉体の死を迎えられたご本人に、きちんと納得の上で心界へ来ていただくことなので」

 日向三郎は、ずっと手にしたままではあったが いつの間にか自分のほうへ引っ込めてしまっていた用紙とボールペンを、再び小陽に差し出し、

「サインさえいただければ、もう心界へ出発できますが、会っておきたい方とかいらっしゃいますか? 心界へ行ってしまいますと、肉体の死亡日である今日を含めて49日間はお会いになれませんので」

(へっ? )

 日向三郎の言葉に、小陽は驚いた。

(会えるのっ? それって、49日経てば会えるってことだよねっ? …会えなくなると思ってた……。何か、嬉しいっ……! )

「ただ、出来れば、そろそろ出発したほうがいいです。今日の最終便が20時に出るのですが、それが行ってしまうと、明朝まで待つことになりますので」

「最終便? 」

「心界行きの電車の最終便です」

(へえ、電車……)

 意外な移動手段に、小陽は、また軽く驚きつつ、チラッと壁の時計を確認した。19時15分。

「小陽さんの場合、49日間経った翌日から お盆休みに入ってしまうので、必要なことを全て49日以内に絶対に終わらせなければ、何かと不都合が生じてしまうんです。だから出来るだけ時間を有効に使ったほうがいいと思うので……」

(不都合……)

 20時に出る電車というのが、ここからどれくらいの移動時間のかかる場所から出ているのか分からず、どの程度急いでいるのか、また、何かと生じてしまう不都合がどのようなことかも分からないが、そろそろ出発したほうがよいと、少なくとも現時点では唯一の頼るべき存在であるサブローさんが言うのなら、と、

「大丈夫です。会いたい人なら、全員、今この部屋の中にいるので」

 すると、日向三郎はホッとした様子で、

「そうですか! よかった! 外国に住んでいる友達に会っておきたいとか言われたら、正直どうしようかと思いましたよ! 」

明らかに機嫌を良くしながら、用紙とボールペンを更に小陽の近くへと差し出す。

「それでは、サインをお願いします」

「フルネームですか? 」

「あ、はい。日本人の方は、ほとんどの場合そうなります。ミドルネームなどがあるお名前の場合は、その部分は省いていただいて結構なのですが」

 日向三郎の返事の「あ、はい」までを聞いてから、後は聞きながら、小陽はボールペンを受け取り、彼が手で支える用紙にサインを済ませた。

「ありがとうございます。では、早速、行きましょう」

 何だかちょっと張り切り気味に言い、小陽から返されたボールペンを元通り胸ポケットに仕舞い、用紙を鞄に仕舞って、入口のドア方向へ向かう日向三郎。

 小陽も、そのすぐ後ろについて歩き出しながら、49日間会えないということなので、もうひと目と、横たわっているほうの自分の傍らにいる家族を振り返る。

 星空は放心状態という感じではなくなっていたが、変わらず、小陽を見下ろし、母は疲れたのか肩を震わせることはやめ、ただ小陽の上に顔を伏せ、父は、母の肩を抱いたまま。

 会えるらしいから また来るね、と小陽は、父・母・星空に向けて心の中で言い、視線を進行方向へ移した。

 瞬間、

(! )

日向三郎がドアを開けずに通り抜けて病室を出て行くのを目にし、驚く。

 驚いたが、

(……そっか、サブローさんは、これからわたしが行く世界の人で、つまり、幽霊だもんね)

すぐに納得し、自分も続こうとした。

 しかし、ドンッ!

 通り抜けられず、ぶつかって跳ね返り、床に尻もちをつく。

 日向三郎が慌てた様子で、やはりドアは開けないまま戻って来、

「すみません! うっかりしてましたっ! 」

床に尻をついたままの小陽に手を差し延べた。

「あなたはまだ、心体しんたいとして不安定ですので、物界の建物の壁などを通り抜けることが出来ないんです。

 あと半日もすれば、逆に物界の物質には触れなくなって、触るためには訓練が必要なようになるんですけど」

(…心体……? 話の前後関係からして、これからわたしがなるはずの状態のこと? サブローさんが、完全な状態ってことかな?

 通り抜けれないのは、そう言えば そうだ、うっかりしてた……。サブローさんみたいに通れるつもりになってたけど、わたし、さっき自分で壁にわざとぶつかって遊んでたっけ……)

 そこまでで、小陽は、あれっ? と思った。サブローさんは通り抜けられるのに、どうしてわざわざドアのところから出たんだろ? うっかりしてた、っていうわりには、ドアからじゃないと出られないわたしに無意識に合わせて? と。

 日向三郎の手を取り、立ち上がらせてもらいながら聞いてみる。

 日向三郎は考え深げに自分の顎をつまみ、

「無意識……。…無意識は無意識でも、習慣、ですかね……。心界の建物は、心体として安定しても通り抜けることが出来ないんですよ。ですから当然、ドアから出入りすることになるので……。

 だって僕、そう言えば、そんな必要無いのに、この病室に来るのにも、正面玄関を通ってエレベーターに乗ってきましたからね」

「そんな必要無い、って? 」

「外から、一瞬で、この病室内に移動出来るんです。本当は。

 だから、僕ひとりなら、電車の時間も気にしないんですけど。一瞬で行けるので」

(…それって……。漫画やアニメの中で時々やってる、瞬間移動とかテレポーテーションとかいうヤツ……っ? スゴイっ! )

 小陽は驚き、また期待を込めて、

「心体として安定すると、そんなことも出来るようになるんですかっ? 」

「いえ、訓練が必要です」

(…なんだ。ガッカリ……)

「それに、これを活かせるのは物界でのみです。

 小陽さんは、もしかしたら、心体や心体として過ごす心界での生活を、何か特別なもののように想像されているのかも知れませんが、心界は心体が生活するのに適した環境となっていますので、物界で肉体を持っている状態で生活するのと全く変わらないですよ」

(……そうなんだ)

 日向三郎の言ったことは当たっていた。小陽は、心体や心界を特別なもののように考えていた。

(…だって、幽霊なんだよ? 心界は、幽霊ばっかりいる場所でしょ? そりゃ、超人じみた人だけが暮らす特別な感じの世界を思い浮かべるでしょ? まあ、わたしにとっては、今のこのわたし自身は充分超人だけど……。

 あ、でも、このエネルギーが漲ってる感じも物界にいる時特有で、心界に行った途端に治まったりするのかな……? )

「さあ、行きましょうか」

言って、日向三郎は再びドアに向き直った。

 その時、

「これでお母さんは、あたしだけのお母さんだ」

横たわっているほうの小陽側にいる3人の沈黙を破り、星空の声がした。

 小陽が振り返ると、横たわっている小陽から顔を背けている星空の苦しげな表情が見えた。

(…星空……)

 「これでお母さんは、あたしだけの……」その言葉を聞いて初めて、小陽は星空の気持ちを知った。寂しかったのだ、と。

(星空は、いつも元気で明るくて、わたしに優しくて……。

 今日だって、ソフトクリームを買ってきてくれた。昨年の秋、たい焼き屋さんがソフトクリームの販売を終了するって聞いたわたしが「また来年も食べたい」って言ったのを、きっと憶えててくれたんだと思う……。

 寂しかったなんて、全然気づいてあげられなかった……)

 小陽は唇を噛んだ。

 体の弱い小陽は、自分の望む望まないに関係無く、当然の如く母を独占してしまう。

(…そうだ。星空はわたしより3年遅く生まれて……。生まれた瞬間から、下手すると、お母さんのお腹の中にいた頃から、自分のことを後回しにされ続けて、どんなに寂しかっただろう……)

 初めて、そんなことを考えた。

(お母さん、星空を抱きしめてあげて。いい子いい子してあげて。「そうだよ。星空だけのお母さんだよ。今まで寂しかったよね? これからは、いっぱい甘えていいよ」って言ってあげて)

 小陽は期待を込めて母を見つめた。

 しかし母は、

「何て酷いこと言うの! 」

言って、星空に蔑んだ目を向ける。

「お母さん! どうしてっ? 」

小陽は思わず叫んだ。

(星空の気持ちが分からないのっ? そりゃ、お母さんだって、わたしが死んで悲しくて、今はそれで胸がいっぱいなんだろうけど……)

 星空に目を向ければ、凍りついたように母を見ている。

(「何て酷いこと」って……でも、星空が、わたしが死んで良かったなんて思ってないことくらい分かるよね? 星空がそんなこと思うわけないし。

 大体、本当にそう思っていたら、その言葉……「これでお母さんは、あたしだけのお母さんだ」を言うのに、わたしから目を背けたりしない。星空だって、わたしが死んで悲しくて、悲しすぎて、悲しみと真っ直ぐに向き合えずに出た言葉なんじゃないかって、わたしは、そう思うんだけど……。

 それに、星空が寂しい思いをしてたのは事実だし……)

 暫しの沈黙が流れた。

 星空はフイッと母から目を逸らし、

「……お姉ちゃんの代わりに、あたしが死ねばよかったね」

言い捨てて病室を出て行く。

「星空! 」

小陽は急いで星空の背中を追いかけ、星空の開けた入口のドアを一緒に通って廊下へ出た。

 「お姉ちゃんの代わりに、あたしが死ねばよかったね」そんな悲しい台詞を言わせて、やっと、母も星空の気持ちに気づいたらしく、星空を追う小陽の視界の隅に映った母は、途方に暮れた様子で、その目にはっきりと後悔の色を浮かべていた。

 すぐ後ろについて出たはずが、廊下に出た星空は大幅にスピードアップしたようで、小陽がほんの一瞬だけ母に気を取られている間に随分と遠くまで行ってしまい、その背中は、長い廊下の隅でエレベーターを待っていた。

「星空! 」

小陽は、この8階にやって来て停まり開いたエレベーターに星空が乗り込むのを正面に見ながら走り、滑り込みセーフ。

 ドアは閉まってしまったが、すぐ後からドアを通り抜けて日向三郎もエレベーターに間に合った。

 星空は、俯き傷ついた獣のような目をして、ドアを正面に静かに力無く立っている。

 小陽は星空とドアの間に割り込み、両腕を伸ばして、そっと星空を包み込んだ。

「星空、ごめんね」

母を独占してしまい寂しい思いをさせてしまったことへの謝罪と、病気の自分を気遣って我慢し、寂しさなど感じさせずにいてくれた優しさに、

「ありがとう」

 姿は見えなくても、声は届かなくても、今の小陽なら、まだ星空に触れられる。

 あと半日もすれば、小陽は、今まで小陽の生きてきたこの世界……物界と呼ばれているらしいこの世界の物質には触れなくなると、日向三郎が言っていた。

 「物質」には恐らく人間も含まれるであろうと、小陽は考える。

 本当にそうならば、小陽が星空に触れられるのは、今だけ。次に会うのは早くても49日後なのだから、その時には確実に触れられない。訓練をすれば触れられるようになるとも、日向三郎は言っていたが……。

「星空……」

小陽は、やはりそっとだが、深く、更に深く、胸に星空を包む。

 小陽が触れているというだけで、星空側に触れられている感覚があるかどうか分からないが、ただ抱きしめ、「ごめんね」「ありがとう」を、心を込めて繰り返した。

 突然、星空がフッと顔を上げる。

「…お姉、ちゃん……? 」

驚いた表情で呟く星空。

(…星空……。わたしがここにいるって、気づいた……? )

 その時、

「っ? 」

急に、星空を包む小陽の腕や胸から、星空の感触が消えた。

 見た目には変わらず星空を抱いているのに感触だけが消えたので、小陽が首を傾げていると、

「心体として安定したんです」

日向三郎が口を開いた。

「え? でも、まだ半日なんて経ってないですけど? 」

「個人差がありますからね。まあ、それにしても、これは相当早いですが……」

(…そっか……。安定したんだ……)

 納得した小陽の腕の中で星空は再び俯き、

「…気のせいか……。何か、あたし馬鹿みたい……」

呟いて、丁度1階に到着して開いたエレベーターのドアを、小陽を正面から突っ切って出て行った。

(っ! )

 小陽は衝撃を受けた。自分の体を突っ切られるなどという初めての体験に。

 そのため一瞬、ボーッとしてしまってから、ハッとし、

「星空! 」

星空を追って駆け出そうとする。

 しかし、

「ダメです! 」

背後から伸びてきた日向三郎の手に二の腕を掴まれ、止められた。

「もう時間がありません。行きましょう」


 その後のことを、小陽は知らない。

 母の態度に星空を可哀想に感じ追いかけはしたものの、特に心配などはしていなかったこともあり、電車に遅れると困ると、日向三郎に急かされるまま行ってしまったから……。

 心配していなかったのは、まだ中学1年生の星空のこと、感情のままに飛び出して行ったところで、辺りはもう暗い。すぐに心細くなって両親の許へ戻るだろうと考えていたことと、母が星空に言ったことを後悔した様子だったのを見たためだ。

 星空がそう時間を置かずに戻った後、母がきちんとフォローして円く収めるだろうと思い込んでいた。




(もしかして、そう出来なかった? 円く収めれなかった? …それで、もしかして、あの日からずっと、こんななの……? )

 小陽の見つめる先で、母は、ベッドとベッドの狭い隙間に蹲り、フォトフレームの小陽を抱きしめたまま動かない。

「…お母さん……」

 あの日の回想を一通り終えた小陽、時計の秒針の音がやけに大きく聞こえて、ふと目をやれば、23時。

(…もう、こんな時間……っ? 星空は帰って来てるっ? )

 小陽は廊下へとつながるドアを頭だけで振り返った。

(帰って来てない、よね……? 考えごととかしてたって、玄関の音がすれば、さすがに気づくし……。帰って来てない。星空も、お父さんも……)

 父のほうは、小陽が外泊で この家に来ていた時には早く帰って来ていたとしても、本当は普通に、このぐらい遅いのかも分からないが、星空のほうは明らかにおかしい。

(捜しに行かなきゃ……! )

 母に背を向け、小陽は寝室を出た。


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