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1章【第二部】





────全ては表裏一体。



始まれば終わり、生まれたなら死ぬ。


光があれば影がある。


それが世の生業。永遠など、形に残すなんて不可能なのだ。


















「まず世界の話をしようか。」

ユウは静かに話しはじめる。




───ここも、一つの世界として存在する。人がいて、動植物がいて、もといた場所と形態は殆ど変わらない。

ここに名前なんてないが、多くは"影"と呼ぶ。


元いた世界を光としたら、こちらは影になる、


そう、世界は二つあって、一つなんだ。


もともと、一つのものが一つであり得ることは稀だ。

よくわからないだろうが、飲み込むが良いだろうな。


人も、動物も、雄と雌で一つ。

光も影もお互いがなければ存在できない。


この世のもののほとんどが、二つあって一つ。


それは絶対だ。



そしてここは影。


あっちの世界の影。


互いがなければ、どちらにしても存在出来なかった対の世界。


だけど、それを知っているのは影の者だけだ。


なぜだかわかるか?



光は、輝いていることが普通。光が輝けば輝くほど、影は遠くなる。


大きな光の円の中に立っていれば、影なんて見つけられない。

そうゆう事だ。


だがそれは悲しむべきことではない。


影は光に何かしら与えてもらっているし、与えている。


知らずとも、気付かずとも、互いを支え合っている。


知らなくてもなににもならない。



だがな、影は知らなければならない。


光に潜む、陰がいつぞや叫び出すかわからないからだ。


陰とは、言わば魔物のようなもの。様々な姿形をして、光を脅かす。その結果が天変地異や、戦争。正常のものをかき乱していくんだ。


あいつらは必ずこちらで生まれる。どこでどうやって、それはまだわかっていない。


そうして光に潜む。


赤ん坊など、成熟するまでのものは光の中を好み、それが育む。


影の者は、お前のように一定の年になるとこちらに連れ戻される。

影の者はあちらにとって無害だがな。


だが魔物は違う。成熟すれば光を乱す。自分が陰だと悟り、すべてを陰にしようと叫び出す。

それを俺たちは食い止めなければならない。

戦わなければならない。


それは光が乱されることを知らなければ成し得ない技だ。


だから影は光を知る。

そう言われているな。



「─────と、まぁ世界はこんな感じだな。」


一仕事終えた、と言うようにふぅと息をついてユウは話す。


「これはあくまで、伝説みたいなもんだ。実際はもっと違うのかもしれないんだな。

まぁくわしいことはおいおいわかるだろ。─さて、何か質問は?」


悪戯っぽい瞳は、どこかしら楽しんでいるように見える。


まだ、情報を表面的に塗りたくられただけの様に感じる。

だが、これだけ非現実的な事態が目の前にぶら下がっている。嘘でも幻でも夢でもないと、すでに確信していた。


「─あの、さっき"選定"だとか"神様"とか言ってましたよね?

アレは、なんなんですか?

あたし、これからどうなるんですか?」


男は、そうだ、と口の中で言い、それから

「敬語使わなくていーぞ。これから長い付き合いになるからな。」

とニカっと笑って付け加えて話を続けた。



















────さっき、

戦わなければならない、

と言ったろう。


戦うには力が必要だ。


それで俺たちは、自分の中で一番ある素質に特別な力を加えてもらう。



その素質を見いだすのが、オバチャン、─西王母だな。

それが儀式化していて、"選定"と呼ばれる。


素質は3つに分けられる。


【剣】【杖】【盾】


剣は攻撃を。


杖は魔法を。


盾は補助を。


大体こんな感じの素質だ。


剣でも杖の力を使えたり、素質の他の力も使えるが、やはりそれは微力だな。



大物と相対するなら3人一組になるのが基本。


小物ならひとりでも十分。盾は、ひとりだときついかもしれないかな。



そして、選定を受けたあとは、それぞれの神に力をもらう。


神は3人、あの方たちはすべての力を備えているな。尋常ではない力だそうだ。


神は本来地上に存在しない方だ。人とは交わらない。


だが、力を与える時には神直々になさる。それ以外は、世界がどんなになっても決して力は貸してくださらない。







「──ケイはなんだろうなぁ。」

ユウはプレゼントの包み紙を開ける子どものようにワクワクしている。

なるほど、新入りがなんの素質かが気になっていたと言うことか。


「ユウは、なんなの?」

「あ、言ってなかったな。俺は剣だよ。」


そう言うと、腕を少し遠くに離し、掌を天井に向けた。


見てろ、と言うのでじっとみつめると、先ほどくぐった穴の中の色をした光が、掌の中心から溢れてきた。


光はみるみるうちに大きくなり、ユウがグッと握ると、その手には剣、まさしく剣が握られていた。


「こいつが、俺のさ。」


剣の刃は細身だった。日本刀の1、5倍くらいだろう。剣に鞘はなく、黒く艶めいた刃が光り美しかった。



「そんなことも…できるの。」

「そんなこと?」

「うん。なにもない所から剣とか出せて!他にも出せる?」


半ば興奮して質問すると、ユウの顔は少し困っている風だ。


「んーとな、これは力を授かるときにわかる事なんだけど。」

「なに?」

「素質って言ったよな。」

「剣、杖、盾。」

「そう。それって、自分の武器のことなんだ。1人につきそれぞれどれか1つ。自分の力の具現化したものだから決して同じものはない。力が弱まったりすると威力とかも落ちる。素質は、どの形なら力を最大限に引き出せるか、ただそれだけなんだ。」

「表現のしやすさってこと?」

「まぁ、そんな感じかな。─とにかく、百聞は一見にしかずだからな、それについては自分で感じればわかるさ。」


ふぅん、と相槌をうつ。


「ねぇ。ここってみんな言葉通じる?」

「言葉?…通じない奴に会ったことないけどなぁ。」

「じゃあみんな日本語ってこと?」


いや、そうじゃないとユウは言った。


「子どもは光で育つ、と言ったよな。あれは、こっちで産まれた子を光の女の腹に戻して育てさせるんだ。残酷に思うなよ?影の子は本来生まれない子だ。その女が生涯に産む子の数の枠を無理矢理増やしたんだ。つまり、生涯2人しか産まないなら、影の子を入れて3人、ひとりも産まないなら影の子がひとりってこと。」

「なんだかややこしいな。」

「これも慣れだからな、まだいいさ。それでだ、こちらで産まれた子を適当な女に宿す。それが日本人とも限らない。アメリカ人だったり、フランス人だったり。基本的に貧しい母親には宿さない。きちんと育たないと困るから。きちんと育てばどこの国だろうと関係ない。ケイ、今のお前の姿は、光の姿だ。」

「光の姿?」

「そう。子ども時代を向こうで育つから、影の者はふたつの姿を持っている。光の姿のままでは力が使えないが、光に紛れるにはその姿が必要だ。ケイはまだ力を持っていないに等しいからその姿だが、力さえ得たなら姿は俺のようなものになる。ちなみに俺も育ちは日本だぜ。」

「日本人、なの。あたしもそんな風に…。」

そう考えるとひどい違和感をかんじた。それを伝えると最初は皆そうだがすぐ慣れるのだと教えられた。


そのあと、


コンコン、とドアをノックする音がした。


ガタンとドアが開くと、先ほど見た赤髪の門番が、お邪魔します、と薄く微笑みながら入ってきた。


ユウは、ノックなんかして気取ってやがる、と笑いながら呟くように言っている。

そして、ケイ、と呼び、


「こいつが俺の同室の奴、シュン。盾だ。」


また会ったねお嬢さん、とにこやかに話し掛けてくる様子はとても好印象をうけた。


「ユウ、西王母さまだけど、お帰りは明日になるそうだよ。」

その言葉を聞いたユウは、驚いたような、呆れたような顔をする。そして、はぁー、とわざとらしく息をついて言う。


「あんのオバチャン、なんだよ朝市にでも出る気かよ…」


シュンは終始にこやかに


「さぁね。それは教えてくださらなかったけど、『新入りがユウの時のように怒り出さぬよう、きちんと説明してやるがよかろう。』と言われていたよ。」

あのなぁ、とユウは言ったが諦めたように、まぁいい、と言葉を引っ込めた。そして目線をケイに戻し


「今の通りだ。今日はとりあえずここに泊まってくれ。」


なに、変なことをする気はさらさらない、と付け加えて言った。


「色々と説明していたんだろう?ユウだけでは不安だね、俺も付き合わせてもらうよ。」やはりにこやかにシュンが言う。当のヨウは、わかりましたよ、と拗ねたように言っただけだった。

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