縊鬼の事
「此は夜窓鬼談という水彩画の書物でね。」
藍染が指を指しながら縊れ鬼を説明してくれた。縊鬼とはこう記されている。
縊鬼は死神にも似た妖怪であり、首吊り(縊死)を誘発する恐ろしい妖怪でもある。絵本百物語における死神の説明にも「首吊りなどを誘う」と書いてあることから、絵本百物語の死神も縊鬼を描いたものかも知れない。
だが、しかし代わりの死者を自ら連れてくるには条件があり、その条件というのが「自分と同じ死に方で」ということらしい。
すると藍染がこんなことを語り出した。
「俺はね、死の世界は夢の中で永遠と幻を一生見続ける桃源郷で有り、無への回帰が自然の摂理では無いかと考える。だからね同じ現実世界でも違う視点から見れるのでは無いかと考察する。」
此が彼の倫理的観点から見た合理的な死の考察で有り、彼の陰陽術言霊でもある。そう考えてみれば人の人生は無限ではないし、いつか桜のように完全に散るだから其処に価値観が生まれるのだろう。 人は、世の中の全ての自殺を必ずしも悲しいとは思わない。
それは何故か?
自分とは関係ないからだ。
しかし自分の友人の自殺は悲しいと嘆き苦しむ。
それは何故か?
自分に関係があるからだ。
だから僕の学校の生徒や教師は哀しまないのだ、其は全くの赤の他人なのだ。教える側と教わる側の関係であってそんな深い密接な関係ではなあのだ。だがそれはあくまで僕(教師)としての見解であるから肉親の目線で見たら違う視点が見れるだろう。
僕はこの人に学校を託して良いと思った。
「御願いです。もう死人は増やしたくないのです。」
僕は正座をし頭を下げた。だが 藍染が頭を掻き考え込んだ。そりゃそうだ。この事件を解決し憑き物を落としたとしたら死ぬ人は止められる。此れには支障は無いが事件を解決するには時間が掛かる。するとその間にまた死人が現れる其は仕様がない。
「楠君と云ったっか。その依頼承るが、直ぐに解決できないと見た。地道に行こう。
俺と楠は現地へ向かう。東方頼みがある。」
そう云って此の事件に立ち向かうのであった。
続く