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金髪、青目の美人エルフに転生!  作者: 鏡田りりか
第四章  ソフィアの国、レルフィア
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第五十六話  嘘みたいな光景

 ふぅ。久しぶりだなぁ。お出かけ。


 今日、急にお休みがもらえた。理由は簡単。ジェイドが「私の負わせた傷、ちゃんと直してくれないと……」と言って稽古をやらせてくれなくなったのだ。うん、気持ちはわかる。でも、午前中、暇になってしまった。

 ということで、森を散歩。ここにはたくさんの精霊がいるんだ。

 精霊は、魔力にとても似ている。ふわふわと光のように漂っている。でも、意思がある。生きているのだ。


 その子達と、私は遊んでいた。

 私の家系は火の家系。当然赤い精霊が多い。

 でも、私は土魔法が好きだ。加減がしやすいから。だから、橙色の精霊も多い。って、似たような色ばっかだな。


「じゃあ、そろそろ帰ろうかな」


 私は誰にでもなく言うと、街に向かって歩きだした。






 状況が理解できない。理解しようとしていないのかもしれない。

 何があった? 何が起きた? どういうこと? なんでこんなことに?


「嘘、嘘、嘘……。どう、いう、こ、と……?」


 門を越えると、目の前は真っ赤に染まっていた。正確には、真っ赤な人が転がっていた。嘘みたいな、そんな光景だった。

 なんとか悲鳴を押し殺し、暴れる鼓動を押さえつける。呼吸をするたびに血の匂いがふわりと香る。


「とにかく、何があったか聞かなきゃ……」


 私はなんとか立ち上がって自分の家に向かい走り出す。

 転がるように、必死に走る。こんなことなら、家を真ん中に立てなければよかった。でも、ここにしたのは私じゃないけど!


 私の家の一階、司令室。私はまるでアニメのように思い切り扉を開ける。思ってたより音が小さかったが。前にでながら、中に問う。


「何があった!」


 中にいたのは、思っていたようりずっと少なかった。スカーレット、クララ、ナタリア、ニコライだ。フェリたちも、ジェイドたちもいない。

 私の姿を確認したスカーレットは、そのまま泣き崩れた。残念だが、それでは何があったのか、まるでわからないのだけれど。


「ほかの、ものは、どうした」

「アラーナは、隣の部屋で寝てる。魔力切れ、だよ……」


 泣くのを必死にこらえたようにクララが言う。

 これ、は? 何? 何? 何……?


 ともかく、少し落ち着こう? よし、もう一度。

「そのほかはどうしたんだ」

「うっ、わかんないんだよ。クララは右手怪我して、私とお兄ちゃんは矢が切れて、戻ってきたけど……」


 ナタリアは泣きながら訴える。つまり……。


「みんな、いないって、事?」


 少しの沈黙のあと、少し落ち着いたらしいスカーレットが言う。

「わからないんです。ここにいる人しか、どこにいるのかも、生きているのかも。でも、多分、もう……」


 私は後ろに下がろうとして、椅子にぶつかり、思い切り転んだ。でも、そんなことは気にならない。わかりきっていても、いざ言葉にされると、怖くて。もう、……それこそ、どうしていいのかわからない。


「ジェイドも、インディゴも……? ルアンナも、フェリも、レオンも、ヴェリも、サウルも……」


 おかしいじゃないか。私が出たときは、何もなかったはずなのに。

 もう、なんで、なんで、こんなことに…………。


「あぁ、うん……。大天使アークエンジェルが攻めてきた。スカーレットが見つかっちゃったんだ。ジェイドが囮になって、スカーレットはここまで逃げてきた」

 ニコライが淡々と教えてくれたが、そんなこと、もうどうでも良かったし、何も頭に入っていなかった。


「うぅ……。今日に限って……。どうして、私……」


 今日の行動が悔やまれる。さっきまで呑気に精霊と遊んでいたんだ。

 でもでも。こんなことをしている場合ではない。私は唇をかみしめて前を向く。


「動かないで。絶対に。わかったね?」

「え、でも、ソフィア様は……」

「いいから! 絶対に、動かないでって言ってるの!」


 立ち上がった私は、後ろの方を向いて、開け放たれた扉から外に駆け出した。なにか声が聞こえた気がしたけど、聞き取ることはできなかった。






 大きな魔力の反応はひとつ。場所は私の秘密の特訓場。リーダーのみんなは知っているけどね。

 問題は、私の魔力量。莫大な量だけど、神級を覚えた私としては、まるで足りない!


 見えた。艶やかな長い銀髪を宙に漂わせ、自らの羽で空に浮かんでいる。


「おや、まだ生き残りがいたんだね。もうみんな死んだかと思ってたよ」


 もう気づかれた。まだ遠いっていうのに。私はエベリナからもらった大切な杖をしっかりと握り締め、大天使アークエンジェルも前に立つ。


「随分荒らしてくれたね? ここは私の国だよ?」

「ふうん。ソフィアか。それはちょっと手を出しにくいね。でも、仕方ないか」


 眩しい光が辺りに溢れる。何だ、目くらましか? ともかく、私に敵意を持っていることは間違いない。

 あ、よく見れば、光線か。周りの光が強すぎてわかりづらいけど。


 まずは一発。小さめに。火光線ファイアレイ。撃ち方は、さっきの魔法と相殺させるように。

「ちっ、ダメか。仕方ないな」

 彼女の意図が読めない。まあ、ともかく、私に届く前に相殺は出来た。


「ふふ、とりあえず、この程度ではダメなのだな。まあ、本気を出してやろうではないか」


 ……。やめて欲しい。できれば速やかに立ち去って欲しい。

 私の武器はこの素晴らしい杖と4500の魔力だけ。勝てる、かな。ううん、無理だよ、こんな化物……。


「ふっふっふっ。いざ、勝負!」

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