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金髪、青目の美人エルフに転生!  作者: 鏡田りりか
第二章  ソフィアの街
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第二十一話  私のお嬢様

 今回はジェイド目線です。ちょっとうまくできたか分からないですが。

 前に、ソフィアお嬢様が言っていた『ブタ』に似ている生物を見つけた。すごい勢いで突進してきたから、感電死させて持ってきた。とてもいい獲物だろう。喜んでくれるだろうか……?


 はっきり言っていいかわからないが、ソフィアお嬢様はとても可愛い。それこそ、自分のものにできたら、なんて思うが。飽く迄主人だから、空想の中での話だ。


 




 街に帰ると、異様な空気が流れている。泣き叫ぶ声や、悲鳴、怒涛などが聞こえてきたのだ。

 門の警報ランプが点っている。これは、警報がなったあと、ずっと光るように私がしたものだ。

 つまり、誰かが侵入したわけだ。って、ええ?!


「まさか……、ソフィアお嬢様……!」






 にやりと笑いながら、顔についた血を舐めるインキュバスと、血にまみれて倒れている人が見えた。近づかなくてもわかる。あれはソフィアお嬢様!

「ソフィアお嬢様!」

 すぐに大きな翼を広げて飛んでいった。愛しいお嬢様のもとへ。


 お嬢様は、動かない。そっと触ってみると、血が少ないせいか、少し冷たくなっている。


  なんで? どうして? こんなことになってしまったんだろう。

 どうして、今日に限って、離れてしまったんだろう。

 どうして、今日に限って、来たんだろう。

 どうして、今日に限ってパーティなんかやったんだろう。どうして……。


「死んでは……いないだろうな?」

 まだ生きていることは確認できた。でも、このままでは……。

(ん?)

 なぜか、お嬢様から、強く魔力を発せられていることがわかった。

(これ……。お嬢様は、生きようとしていられている)


 ならば、少し置いておいても平気だろう。今、ここで治療できないのだ。女性はインキュバスに魅せられているし、治癒師は女性しかいない。今私がここで治療すると、インキュバスの攻撃を直接受けることになるかもしれない。それは、私も危ないかもしれない。


 私は、お嬢様の一番の弱点を知っている。『人が殺せないこと』だ。きっと、この哀れなインキュバスを殺せなかったのだろう。

 お嬢様は、脇腹を刺されている。でも、インキュバスもお嬢様なら殺せるレベルだ。私なら、楽勝だろう。


「さてさて。私のお嬢様を随分甚振ってくれたな」

「使い魔が、私情で動いていいのかい?」

「今の場合は仕方がない」


 お嬢様を守る、そのためなら、たとえ、嫌われても……。

「私は、お嬢様を守り通す!」


 私は戦闘形式バトルモードに変身した。

 この姿を見たら、お嬢様はどう思うでしょう? 真っ赤な目、裂けた口、大きな牙、羊のような大きな角。

 もっと危険なのは、理性を失ってしまう可能性があること。でも、お嬢様のためなら、なんとかなる。


「おいおい、お前、それ、本気でやってんの? 周り巻き込むぞ」

「平気だ。最悪、俺を殺してくれるだろう」


 思い切り睨んでやると、一瞬たじろいた。それを見てから、みんなの洗脳を解こうとした。

「ダメだな、効かない」

「さっきより強く洗脳させていただきましたので」


 にやりと笑う顔が、一層イライラさせてくる。ただ、これは俺の理性を失わさせるためだ、と思い、静かに心の中にとどめる。


「ジェイドさん、ジェイドさん」

 声の方を見ると、真っ青の顔をした黒髪の獣人だった。たしか、お嬢様の前世での妹、今はマリンといったか。

「あの、もし、ジェイドさんが、もしもの時……。どうすればいいですか?」

「殺してもらって構わない。百年後には、復活するから」

「じゃあ、お姉ちゃん、預かりますね」


 俺は少し考えたあと、そっと手渡した。

「頼んでいいか?」

「もちろんです。絶対に、お姉ちゃんは守ります」


 その少女が、自分のことを怖がってはいるものの、普通に接してくれることが、嬉しかった。お嬢様に似ている。確かに、姉妹なのだろう。


「では、お嬢様は、任せた。できるだけこのまま倒す。危険を感じたら、すぐに逃げろ。」

「お任せ下さい!」


 これで大丈夫。多少暴れるが、問題はないだろう。

「さあ、行くぞ、俺の全力、受け止められるか?」


 悪魔には、悪魔特有の属性というものがある。悪魔、という属性だ。悪魔には一切効かないが。

 悪魔に完璧に対抗できるのは、天使のみ。天使と悪魔は、いつでも対抗するものなのだ。

 完全ではないが、聖属性もある程度は抵抗できる。ただ、悪魔系の人は使うことができない。


 魔族は、悪魔に限りなく近いが、悪魔ではない。だから、ダメージは受ける。

 だが、悪魔に近いから、聖属性の魔法を使うことができない。相殺することは不可能である。


 素早くインキュバスの後ろに回り込み、手を当てる。

「なに? いつの間に……」

悪魔の光線(デヴィルビーム)


 そのインキュバスは、その場に倒れこんだ。死んではいない。悪魔系では、魔族を殺すことはできない。ただ、暫くは起きないだろう。

 他の系統の魔法を使えば、殺す事も出来るだろう。が、別に、其処までする必要も無いだろう。

(とりあえず、ソフィア様の敵は打てたな。これを解除する前に、ソフィア様を治療しよう)

 この方が、強い魔法が使えるのだ。危ないかもしれないが、このまま治癒したい。


「マリン様。治療します。ソフィアお嬢様を」

「はい!」

 神級魔法は、範囲技。どちらかというと、大勢に向かって使うものだ。それをコントロールして、一人に集中させる。


全体上級回復オールヒール

 魔法を使うと、一気に魔力がなくなるのがわかった。そろそろ限界かもしれない。解除しよう。


「! ジェイド?! あなた……」

 思っていたより、ソフィア様の目覚めが早かった。一瞬、頭の中が真っ白になる。

「すみません、お嬢様。これは……」


 急に、ソフィアお嬢様に向かって爪を振りかざす自分の姿が認識された。

(どういうことだ?!)


 つまり、これがコントロールできなくなった自分というわけだ。こうなるのは初めてだから、すぐ分からなかった。

 体が、感情と別に動いてしまう。止めたいのに、止めらない。

(まずい、お嬢様を助けるつもりが……)

 自分で、何をやっているのか、よくワカラナイ……。


「ジェイド!!」


 お嬢様の顔がすぐ目の前で、真っ赤に染まっていった。


「馬鹿。自分を制御できなくなるなんて」

「お、お嬢様、今……」

「呪いを解くのは、愛する者のキスってのは、鉄則でしょ?」


 恥ずかしそうに微笑む御嬢様に、思わずくらりとさせられた。

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