第十五話 街の完成
一年かけて、ようやく街が完成した。
というか、みんなボランティアだったんだけど、よくここまで手伝ってくれたものだ。
ただし、最初のイメージとはまるで違くなっている。
アパートではなく、大型の寮にすることになった。六回建てで、一回はホール、食堂などになっている。
まあ、ここはもはや住宅街とは言えない。ただ、効率の問題で寮のようになったのだ。仕方がない。
だってさ。住人全部一カ所に集めた方が便利なわけだ。誰が何処に住んでるーとか分かんなくなるし。
ただ、大きくてもとてもおしゃれだ。
でもさ、一階で二千部屋、面積が十二万平方メートルだよ? 歩こうと思ったら、端から端まで行くのに、三十分くらいかかる。あまり広い土地だから、小さく見えるけどね。
変なつくりだけど、これで良いの。此処のスペースは何がある、って分かりやすいしね。
……悪かったね、センスが無いからこれが手っ取り早かったんだよ! 住民喜んでるから良いでしょ!
入居者登録は完了している。みんな家具だけ持ち込んでもらった。ちなみに、貴族は狭い部屋ということで、帰っていった。
仕方ないので、手伝ってくれた方には同盟を組んだりした。
この街は、もともと貧しい人の救出も兼ねているので、貴族に住んで貰っても仕方ない。これで良いの。
で、この街の発展に尽くすと誓うならば、特になにも払う必要はない。これから働いてもらうのだから……。
商店街、っていうかショッピングモールは、食料品や生活用品だけでなく、武器や防具なんかも入れた。でも、開店はもう少しあとのこと。
また、農場も作った。街を作り始めてすぐに始めたので、旬の野菜がたくさん成っている。ちょっと寮から遠いけど、それは仕方ない事。
で、問題なのだが、この世界、お金というのは、個人ではなく、街単位で動くものだ。だから、お店はまだ開店できないの。その辺、どうするか決まってないし。
で、最後。イベントもできるようにした。大きなホールに小さなホール。芝生の広場なんかも作った。
これだけ広いと連絡も大変なので、私とクララたちは、念話を習得した。これを魔法石に込めて、電話もどきを作った。これは住人にも配った。これで何かあったら連絡が取れる。
後は移動。まあ、移動魔法使えば楽勝か。じゃあ良いや。
取り敢えず、街は完成した。此処からは、さらに発展させ、よくしていく事を考えなくてはいけないな。
「ソフィア様、おめでとうございます」
ジェイドが言ってきた。嬉しそうだ。うん、私も嬉しい。
私は、明日みんなを『寮』の中のホールに集めて、食事会をやるつもりだ。その食材は、今日狩りに行く。
つもりだったのだが、ジェイドとシナモンが行くと言って聞かなくて、しまいには勝手に行ってしまった。私は今日一日暇になってしまったわけだ。
とりあえず、農場に行って、水中級魔法豪雨で水を撒いた。非常に楽だ。簡単すぎる。
雑草抜きは手作業だ。のはずが、建物を作りすぎたため、魔法コントロールが上がりすぎて、雑草だけ燃やすということが可能になっている。えい、で終わりだ。
まあ、収穫は無理だな。今日の分を収穫していこう
さて、今は四月だから、春の野菜がたくさんある。嬉しいことに、野菜は地球と変わらなかったのだ。
今育てているのは、スナップエンドウ、グリンピース、ソラマメ、アスパラガス、セロリ、チンゲンサイ、ナガイモ。
また、春キャベツに新じゃが、新たまねぎ。あとは、あまり知られていないが、春のトマトなんかも美味しい。
それから、レルフ家の領地が、海がある北側だったので、海のすぐそばにこの街がある。つまり、美味しい魚介類もいけるわけだ!
地球では、貝や初カツオが美味しいけれど、こちらでは顔ほどある貝とか、二メートルくらいのサワラっぽい魚が多い。これらはフェリオスら男の子が取りに行った。
また、果物も育てている。柑橘類が多くなっている。これも明日使おう。
さーて、何を作ろうかな。
「お姉ちゃん、こんな感じでいいのかな?」
マリンは木工、鍛冶を始めてみた。武器作りに夢中だ。今は魔鉄鋼を使ってレイピアを作っている。
「いいんじゃない? 私は魔法の練習しに行くから」
「わかった。ほかの人に聞かれたら言えばいいんだね」
そんな話のあと、私は魔法の練習場としている芝生広場に行った。ここを知っているのは、あの十人とマリン、ユリアナ、ジェイドにシナモンだけだ。
私は、ここで上級魔法を試してみることにした。
ここの芝生は、魔法に強いものだから、火を使っても平気だ。まずは火から試していこう。
「火光線」
直径三十センチの火が杖から噴射されて、芝生が消えた。
「あああ?! せっかく植えたのに」
魔法対応とか嘘だろ。完全に燃えたんだけど?
「まあいいか。溶岩」
赤い溶岩がドロドロと地面を這った。そして……。
「うわ! こっち来た!」
このままではただの自爆してしまう馬鹿な技だ。もっとコントロールできないと危なくて使えないな。
火の上級魔法はこんな感じだ。次は水。
「水光線」
大量の水が噴射され、見事に百メートル先の木がぼっきりと折れた。ちょっと早いけど、上級回復魔法を試さなくてはいけない。
「上回復」
木は元通りになった。上回復。先生が言うには、どうやら進んだ病気でも平気、ということらしいが。
っと、水魔法が途中だったな。
「急流」
周りの木が流されそうになって、危なかった。
こんな感じで、すべての魔法を終えるのに時間がかかった。
上級魔法
火 火光線 溶岩
水 水光線 急流
草 草光線 蔓
雷 雷光線 迅雷
土 土光線 白石弾
空 雲光線 暴風雨
というか、最初、草光線とか、なんだろって思ってた。
草光線は、尖った葉っぱの集まりみたいなのが飛び出てきた。光線じゃない気がする。まあ、名前なんてどうでもいいや。
土もやっぱり土が大量に出てきた。雲は視界がきかなくなる。ただ、自分もだけど。
迅雷なんかは、凄い音で、私がひるむからあんまり意味がない。なんだか私に向いていないものばかり集まった気がするなぁ……。
ともかく、こんなことをしていたおかげで、芝生広場が焼け野原になったのは言うまでもない。
はぁ、植え直すか。