第百三十一話 ダイアナの秘密
ああ、よかった。何とか戻れたようだ。
何とか分析を重ねて、弱点を見出して戻れたけど、ちょっと危なかったかも。
にしても、よくソフィアは味方を攻撃しなかったなぁ。絶対やると思ったんだけど。
「ソフィア様!」
「ジェイド、ごめん、魔力、返すね」
ほとんどの魔力をソフィアに取られちゃって、何にもできなかったんだもん。これくらい必要だったんだよ。
もう元に戻れたから、その分くらいは返せる。ポンっとね。
「にしても、よく操る事なんて出来ましたね」
「…………? 何のこと?」
「あれ?! リリアーナ様に攻撃しようとしたの止めたのは、ソフィア様じゃなかったんですか?!」
「私は、誰に攻撃したかくらいしか分からないから。そんなのは知らないなぁ」
おっかしいなぁ。味方に攻撃した記憶はないし、もっといえば、それを弾かれたなんて事も無かったと思うんだけど……。 もし、それが、ソフィアの意思なら、私に分かる術はないけど。
「多分……。それを阻止したのは、本人だよ。少しくらいは、理解できるんじゃないかな?」
「……。そう、ですか。でも、無事でよかったです」
ほんとだよ。一生あのままだったら、世界崩壊してるよ。それこそ、星ごと消えるかもしれない。それくらい、制御不可能なこの子は怖い。もはや人じゃないし。
「でも、ソフィアさんがいてくれて助かった。……私、前回、何やったのか知ってるんだ。ある子が、教えてくれたから。
その時、どうして勇者と戦って、世界征服したのか分からなかったけど。私、もうこんな事止めようって思った。止めてくれて、ありがとう」
え? そう、なの? じゃあ、ハナの仲間が、教えてるんだ。もしくは、魔族の中にも、同じ事をした人がいたのかも。ああ、きっとそうだろう。
もしかしたら、ダイアナ、転生者なのかな? そしたら、結構納得だ……。
「じゃあ、ダイアナ。戦わないんで、良いよね?」
「良いのだけど、一つ、問題があって……」
「? なに?」
「私、まだ、全部復活しきってなくて。復活するには、勇者を魔族が、誰でも良いから殺さないといけなくて」
……。本当? そんな縛りまであるの?
「まあ、復活しないでも良いし、百年もすれば完全復活できると思うよ。でも……」
「でも?」
「このままだと、裏切り者、って、魔族が来た時、一瞬で殺される」
怖いな、魔族。そんな事になるの?
うーん……。ダイアナを完全に守り通す方法なんてあるか?
いっそのこと、家の国で百年位なら匿っても良いかも。あ、だめだ。エルフに殺されそうだよね。
「封印に、勇者の何かが使われてるらしくって」
「あれ、じゃあ、もしかして、私たちが解く事も可能かな?」
「ええ? そんなこと出来るの?」
知らないけど……。やってみる価値はあると思うけど?
封印を解く。それには、封印を制御してるものを壊すのが一番手っ取り早い。それが見つかれば、だけど。
「そうだなぁ……。私の部屋を見てみる?」
「あ、お願いするね。失礼します……」
「あ、あの、ソフィ? 私たちも協力すれば……?」
あ、忘れてた。さっきの解放の事も含めて、もう一度、後でゆっくり説明しよう。
今はそれどころじゃない。どこからか魔族が集まって襲い掛かってくるかも。早くしないと。
部屋は、紫で統一された、お姫様の部屋、って感じの……。
天蓋付きのベッドとか、猫脚の家具とか。凄いなぁ……。
って、そんな事はどうでもよかった。全然違う事考えちゃってたよ。
私は魔力を集中させて、魔力の位置を確認する。どこに、一番、魔力が集中してる?
「考えられるのは二つ。クローゼットの中か、このベッド」
「ベッド……?」
「そう。封印の間、このベッドに寝てたんじゃない?」
「そ、そうだけど……」
なら、これだろう。
そっと触れてみると、魔力が多く流れている事が分かる。しかも、魔族の魔力だから……。あんまり好きじゃないなぁ。
っと、それはどうでもよかった。
「私の力だけじゃ……、解けないかも……」
「えっ? どうして?」
「勇者四人の魔力が、分割して、少しずつ組み込まれてる。それから、ダイアモンドと思われるものも」
問題はこの、ダイアモンドの魔力。もう居ないからなぁ……。
魔力って、人によって違うから。ダイアナでも、無理かもしれない。
「そんなぁ……。このままじゃ殺されちゃうよ……」
「ちょっと待って。今考えるから」
どうすればいい? どうしたら、この魔法を解く事が出来る? ダイアモンドの魔力を、どうしたら……。ダイアモンドの力に近いのは誰?
あ……! 多分だけど。ダイアモンドって、私たちに力を全て分割して与えてるよね。ってことは、みんなの力なら、問題ないかも!
でも、まだ、足りない。失敗して、解けなくなったら困るから、できれば、絶対解けると分かってからやりたい。
じゃあ、せめて実験できれば良いんだけどなぁ……。
あぁ、そうか。つまり、魔力が一緒だと分かればいいんだよね。
「あ。 ねえ、リリ、リナ、マリ。ダイアナも。この石に、せーので魔力入れてくれない?」
「? いいけど?」
「ソフィ? いったい、それが何を?」
「とりあえず、やってみましょうよぉ」
私は異空間から取り出した魔石をみんなに見せた。この石って、変わってて、魔石なのに、魔力が無い。その代わり、大量の魔力を吸うのだ。
「いくよ、せーの!」
一度に吸収された魔力は、魔石の中で混ざった。しばらくグルグルしていた魔力は、急にふわりと落ち着く。
さて、これが、勇者とダイアモンドの魔力に似てるなら問題はない。
「ジェイド、ダイアモンドの魔力は覚えてるね?」
「そりゃあもちろん……、って、あれ? これ、そっくりですよ?!」
「うん、よし。じゃ、やってみよう。ダイアナ、いい? 解除魔法は分かるよね?」
すると、ダイアナがびくりと肩を揺らした。まさか……。
「ごめん、私、魔法、出来なくって」
『……は?』