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金髪、青目の美人エルフに転生!  作者: 鏡田りりか
第七章  魔王との戦い
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第百二十八話  ソニア様

 目が覚めると、あちこち傷だらけでした。

 でも、それ以上に、ダイアモンド様の事が心配で。私は何とか歩いて、城の表側まで行きました。


 人だかりができていました。私がその場に行くと、みんな、怪訝そうな顔をで私を見ました。

 それでも、気にしなかった。いえ、そんな余裕が、ありませんでした。私の眼は、ある一点にくぎ付けになっていたのです。


 ダイアモンド様の亡骸が、晒されていました。


 目からは涙が溢れて、どうする事も出来なかった。あまりにも、酷過ぎて。そんな事って、ないでしょう……。

 ダイアモンド様が魔王だといっても。彼女が悪い事をしている様子は、一度たりともみた事がありませんでした。

 それなのに。どうして、こんなことをされなくてはいけないのでしょう……。


 暫くすると、一人の女性が、私に声をかけてきました。


「大丈夫かい? 魔王の使い魔だね?」

「…………」

「何にも言わなくていいよ。ごめんね、私は、ソニア」

「?!」


 綺麗なクリーム色の髪をしたエルフ。この人が、勇者で間違いはないだろうと思いました。

 それで、話を聞いてみると、本当は平和に解決したかったのだけれど、魔王が自殺してしまった、といって、暗い顔をしました。


「傷を癒してあげる。あんまり上手じゃないけどね」

「……! すごい……」


 その時の私にとっては、考えられないくらい強力な回復魔法だと思いました。

 彼女が、悪人には見えなかった。言葉を、信じる事にしました。


「君……。いったい何者なんだ?」

 其処に歩いて来たのは、見たばかりの悪魔でした。

「コンチータ?! おい、お前、これはいったいどういう事だ?!」

「ごめんね、この子は私の使い魔。スパイとして、潜入させたんだ」

「そ、そんな……?!」


 私は、知っていましたから。


 ダイアモンド様の夫『ヒスイ』様が、私の生まれる直前に死んだ、あの、悪魔だった事を。

 そして、その生まれ変わった姿が、私だという事も。


 ダイアモンド様に、小さな娘がいた事も、知っています。

 その子が、ダイアナ。彼女の遊び相手も、よくやりましたからね。良く、知っています。


 こんなことにならなければ……。幸せに、過ごせたかもしれないのに。

 ダイアモンド様の顔が浮かび……。何も、考えられなくなります。


「うわあああああ!」

「……。ごめんなさい」

「酷い……! 守るって、言ったから、俺は、あのとき……!」


 その後は、よく覚えていません……。






「あらぁ……。結構重いわねぇ」

「それで? どうしてソフィに?」

「魔力が、ダイアモンド様に良く似ているんです。どうしても……」

「ふぅん……。そうだったんだ」


 ジェイドが、元魔王ダイアモンドの夫の転生後の姿? 生まれ変わっても、そばに居たいって……。

 ああ、そうだったんだ。ジェイドは、一人の、ある人を大切にしてる。それが、ダイアモンドで、おそらくは……。

 

「ところで、ソニア様って、どうしたんです?」

「ああ、彼女なら……。そうだな、ちょっと、私の話を先に聞いてくれない?」

「良いですけれど……」






 私が起きると、お母様がいつもよりずっとやさしい顔をして扉を開けた。

「ダイアナ。お母さんが今からする話、聞いてくれるかな?」

「なあに?」


 そこで、初めて知った。たくさんの事を。

 私のお父様は、もう死んでて、エメラルドくんが、その生まれ変わりだと。

 今、勇者たちが、お母様を攻めに来る事。

 だから、私は、暫く眠っていなくてはいけない事。


「今起きたのに?」

「うーん、ちょっと違うのよ。とりあえず、この部屋から出ないで」

「え? う、うん……」

「私の姿は、これに映るわ。でも……。見ない方が、良いと思うわ」


 お母様は、水晶玉のようなものを私に手渡すと、そのまま部屋を出ていってしまった。

 小さい私でも、もう会えない、そんなような事が分かった。だから、追いかけようとして、ドアノブに手をかけたけど。

 全然、動かなかった。


 私は、ベッドに座って、水晶玉を、ずっと眺めてた。全部、見てた。

 お母様が、エメラルドくんを突き飛ばしたのも、勇者たちを前にして、堂々と、自ら命を絶ったのも。


 そしたら、お母様の体が光って。光はふわりふわりと分裂して、四つのオーブに変わった。

 それは、勇者たちの体の中に入って、消えてしまった。


 その時。私は、その部屋に、封印されてしまった。






「で、お母様の光を取り入れた四人は、不老不死になってしまったの」

「不老不死?!」

「そう。だから、人前に居る事が出来なくなってしまったんだよ」

「な、なんでそれを知ってるのぉ?」

「分からないけど、元から覚えてたみたいな、不思議な感じ」


 私たちが黙っていると、私のサークレットが光って、いつか見た、あのトレアが現れた。


「そう。彼女たちは、自分の子供をある程度大きくすると、冒険に出ると言って消えてしまった」

「トレア!」

「そして、彼女たちは、自ら命を絶つことすらできずに、この世界を放浪し続けてる」


 そ、それは嫌だな……。もう、世界で一番強くなってしまったら、全て手に入ってしまったら。求めるものが何もない。そんな生活、楽しいのだろうか。

 四人は今、どうしてるんだろう。一緒に居るのかな。

 それだけ言うと、何かの魔力に反応したように、すぅっとサークレットに戻っていった。


「っと、まずい。アリシアたちが来たみたい」

「おい、ダイアナ、今、何と?」

「アリシアたちが来たと……」

「……たち?」


 マリアが訊き返さなければうっかり流してしまっていたけど、たちって何? 一人じゃないの?

 ああ、あの時は四人だったか。じゃあ、その四人?


「うん……、実は、ちょっと、多人数みたいだよ?」

「な……?!」

「外に出よう。ここじゃ戦いづらいでしょ? ……ああ、いっそのこと、城を壊してしまおう」


 ダイアナはそう言うと、大きな魔法を一気に放った。


 天井が壊れ、壁が壊れ。床だけになってしまったけど、その代わり、外の状況がよく見える。って。


「な、なんでここに……?!」

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