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金髪、青目の美人エルフに転生!  作者: 鏡田りりか
第七章  魔王との戦い
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第百二十五話  私、らしく?

 進んで行っても、もうほとんど人はいなかった。

 そのまま、普通に、何事も無く5階、魔王がいるであろう部屋にたどり着いた。

ちなみに、ハリケーンが吹き飛ばしていった所は、アルラウネたちに蔓を出して運んで貰った。


「よし、準備は良いね?」

「大丈夫よぉ、ソフィ」

「行くぞ!」


 扉を蹴破ると、そこには1人の悪魔がいた。


 部屋の半分はカーテンで仕切られている。この向こうに、魔王が居るのだろう。


「なっ?! コンチータ?!」

「残念じゃ。わらわがまたお主らと戦う事になるとはな」


 どうして……。いや、分かっていた。悪魔って言うのは、魔族の兼族。

 魔族と戦うってことは、悪魔を敵に回すことでもある。ジェイドを召喚した私は、結構矛盾したことしてるわけ。

 コンチータは、大きな羽を広げて魔力を溜め始めた。殺る気、か。


「ソフィア様、私に任せて下さいませんか? 決着を、つけたい」

「ふっ……。わらわに勝てるとでも思っているのか?」

「もう、あの時のひよっこではないのでね」


 ジェイドは剣を構えて、ニヤリと笑う。こうやって見ると、魔族そっくりだ。

 コンチータも、それを見ると、前と同じ、赤い魔石の杖を出す。


「ジェイド、平気なの?」

「もちろんです。任せて下さい」

「わらわも負ける気などない。本気で行かせて貰うぞ!」


 先に動いたのはコンチータ。杖の先から真っ赤な光線を出した。被害を最小限に抑えるため、ジェイドはそれを避けるのではなくはじき返した。

 ジェイドの振った剣はコンチータには当たらない。けど、余波が当たっただけで吹き飛ばされそうだ。


 普通の兵士の戦いは、みんなが口々に呪文を詠唱するから騒がしい。

 だからといって、ベテランの人の戦いが静か、ってわけでもない。

 無詠唱だから、それは静かだけど、魔法によって生み出される音は大きい。水の音とか、雷の音とかは、強い魔法ほど大きくなるし。

 それに加えて、木が倒れたり、壁が消えたり、装飾品が壊れたり、酷ければ家一つなくなったりする。そういう音も結構だ。


 という事で、2人の戦いも激しいものだ。カーテンが破れないのは、何か、特殊な布だからなのだろう。

 実際、窓ガラスはないし、壁もほとんど吹き飛んでるし、装飾品が壊れてる。良いんだろうか?


 と。コンチータの魔法が、ジェイドの羽を貫いた。

 ジェイドは悲鳴はあげなかった。が、痛そうな顔はした。今のはまずい、悪魔魔法だ。

 悪魔魔法で悪魔の羽、尻尾、爪、牙が傷ついた時、回復魔法では癒せない。一週間経つと、何事もなかったかのようになるらしいけど。

 だから、この羽は、しばらく治らない。強い痛みを伴って、普通の戦いなど、出来るはずがない。


 コンチータが勝ってしまうかと、みんなが思った。

 だけど、ジェイドは。勝てると信じ、油断したコンチータに向かって剣を振り降ろしていた。真っ赤な血が飛び散る。


「ジェイド!」

「大丈夫、殺しませんから、ソフィア様……。安心して下さい」

「な、何故……?!」


 コンチータには、『敵を殺さない』という事が理解できなかったようだ。


「私は、ソフィア様と約束してます。無駄に人を殺すことはできません」

「でも、わらわは! お主を殺そうとしてた!」

「関係ありません」


 ジェイド……。嬉しいなぁ、私の言っていた事、ちゃんと守ってくれたんだね。

 無駄に人を傷つける必要はない。それが、敵だったとしても。もし、手加減できるなら。

 コンチータは、泣きながらジェイドを見つめていた。そんなコンチータに、ジェイドは回復魔法をかける。


 私は安心して、そこから目を離した。その目に飛び込んできたのは……。


「そ、ソフィア様!」


 私の立っていたところに、何かの魔法が放たれた。

 空中に、ダークエルフが立っているのが見えるな。魔法によって、私は宙に放り出される。

 ジェイドとコンチータの戦いで、壁が無い。だから、そのまま下に落ちていく。


 どうやら、下は森になっているみたいだ。ああ、痛いだろうなぁ。生きてられるのかなぁ?

 なんて思っていたら。ジェイドがその場から飛び降りた。

 傷ついた羽では、飛ぶ事は出来ない。それでも、私を庇うように抱きしめて、そのまま……。


「ソフィ! ジェイド!」


 バキバキと枝が折れて、下に、下にと落ちていく。でも、痛くない。全部、ジェイドが守ってくれてるから。

 ジェイドの事が心配だけど、ジェイドは私を離してくれない。悪魔の力って強いから、私にはどうもできないし。

 いや、本気でやったらいけるかもね。本気を出した事はないし。少なくとも、この状態じゃ無理だ。


 下まで落ちきると、ジェイドはようやく離してくれた。初めてジェイドの姿が見えるようになる。


「馬鹿……。私をそこまで守る価値なんて、あるはずがない」

「何言ってるんですか? 私にとっては、大切な人なのですよ」


 羽どころの問題ではない。あちこちひっかき傷で、血が流れている。それでも、ジェイドは笑って私の頭を撫でてくれた。


「私は平気です。ソフィア様が、無事だったら」

「もう……。あんまり心配させないでよ、まったくっ!」


 ああ、悔しいな。ジェイドには勝てないよ。零れ落ちた涙を拭ってから、ジェイドにそっと触れて回復魔法をかける。


「ソフィ! ジェイド! 無事か?!」

「あ、マリ。うん、平気だよ! いま行くね!」


 私はジェイドを巻き込んで、移動魔法で5階に戻る。

 落ちてる途中では、移動魔法は使えないしね。これが一番ベストなんだろう。


「ソフィ……。悪いけど、ダークエルフは消えてた。もう追う事は出来ない。だから……。行くよ」

「うん、準備は出来てる」

「あ、あの、ソフィア様!」


 カーテンを開けようとした時。ジェイドが止めた。私たちの視線が集中して、ジェイドはそっと視線を落とす。


「分かってます、魔王様が、悪いことしてるの。でも……」


「出来れば、ソフィア様らしく、許してあげて欲しいんです」

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