第百七話 ジェイドの告白
私が生まれたのは、コンチータさんのいた村です。
あ、ちなみに、私の生まれた時、一緒に隣で生まれた子がいました。青い髪が綺麗な子。
人々は、私たちを見ると、何か言い、青い髪の子だけを引き取って行きました。私は、放置ですね。
どうやら、私が生まれる前、綺麗な翡翠色の髪の男の悪魔が、このあたりで好き勝手やっていたとか。みんなに嫌われていたそうです。
私が生まれる直前に死んだそうで、同じ髪の色をした私は、彼の転生した姿じゃないか。警戒されて、みんな、引き取ってくれなかったわけですね。仕方ないでしょう、今思えばですが。その時は特に何も。
仕方ないから、1人で万屋に行きました。そこは、人間が経営していました。その男性の事は知らないようでしたね。
私は軽く事情を話し、このあたりの物の相場を教えて欲しいと言いました。ぼったくりは、困りますからね。
親切な人でしたよ。私が出て行こうとすると、悪魔の家族がいるから引き取れないけど、少しくらい助けてあげる、と言って、一本の剣をくれたんです。
悪魔は、生まれながらにして、戦う術を持っています。普通は使いません。ってか、普通は1人で戦えるほど強くないらしいんですけれどね。
とにかく、1人で狩りに行き、私はある程度の魔物を倒して、それを万屋で売りました。おまけ、してくれましたけどね。
夜は、適当に路地裏を見つけて寝ましたよ。
そんな感じで生活する事、一週間。
私に指名手配がかかりました。もし彼のようになるなら、先に監禁してしまおうと言う事でしょう。殺すとまた転生しますからね。監禁です。
何が何でもこの村からすぐに離れる必要があります。初めて翼を広げ、空に飛び立ちました。すっごく揺れるし、おまけに落下中にどうにかする事が出来ないんですよね、この羽。
そんな事もあるので、遠くには行けません。が、あまり離れなくても大丈夫でしょう。きっと、私がまだ村に居ると思っているはずです。居なければ、死んだと思い込むでしょう。
ということで、人間の住んでいる隣街に移動しました。そこは結構大きくて、私の事を、だれも差別なんてしませんでした。ただし、家に連れて行ってくれる人も居ませんが。そりゃあ、生まれたばかりでなければ。悪魔の年なんて見た目では分かりませんよ。
仕方ないので、1人でお金を稼ぐ生活を続けて行きました。
500年経ったある日。悪魔の村と、この街の間にある山に狩りに行っていた時の事。
1人の男の子が、天使に襲われていました。それを見た私は、一応天使は何度も殺していたので、躊躇なくその天使を殺しました。
私にとって、殺すというのは、お金を稼ぐ手段であるとともに、趣味でもありました。それは、悪魔特有の、考え方でしょうか。
ですが、それを、その男の子は理解できなかったようですね……。
ま、それはともかく、その男の子の髪は、青色だったんです。すぐに、その時の子だと理解しました。
しかも、育ててくれていた親が死んだと言うので、仕方なく、私の家に案内しました。なにせ、1人でしたからね、お金に余裕があった私は、宿に泊まるのも怖いですし、家を買っていたんです。
生き物が殺せない彼は、山に木の実を取りに行っていたそうです。すごいでしょう? それで、一週間生活していたとか。当然のように、狩りは私の仕事になります。
ですから、ちょっと不安でしたが、彼を1人家に残し、私は毎日狩りに行きます。毎日じゃなかったか、だいたい毎日だったと思いますが。
それから、もう500年後。
生まれたばかりの、悪魔の女の子を見つけました。その子は、とっても綺麗な赤い髪が特徴です。
見つけてしまったのですから、持ち帰らないわけにはいきません。また、私が養う事になったわけです。
すごく控えめな子でしたよ。ただ、お金に相当の余裕があったので、子供が欲しがるであろうものを全て買い与えました。もはや、私の娘だったもので。
小さかった頃の彼女は、まあ可愛かったこと……。今は、ま、想像にお任せしますよ。
お金はありましたが、ギルドに預けることはできません。ギルドに行くと、一応指名手配かかってましたしね、気づかれる可能性がありますから。そんなことはできませんでした。
ですから、登録した人以外が開けられない金庫を買って、それに入れてました。
知っていますか? 登録した人以外の人が触ると、襲い掛かってくる金庫……。
ああ、ソフィア様! そんなに笑うほどおかしくないと思うんですが……。
そんなある日。人間の国って、もうちょこっと西に行けば魔族の国だ、ってことに気が付きました。
ですから、飛んで行ってみたんです。結構すぐ着きました。スピードも出てましたし。
着陸すると、何故か、ある方に一瞬で使い魔にしたいとスカウトされました。
ポンポンといい条件を提示し、誘ってきます。お金はいくらでも出す。自分が呼んだとき以外は、どこに居ても構わない。
仕方なく折れました。私は、使い魔契約をしました。
女の子が来てから、考えが変わったようでした。彼女に裕福な生活をさせてあげられるなら……。
でもまあ、言う事は出来ませんでしたよ。黙ってました。
もともと、いつも私が狩りに行っていたんです。いなくても不思議がられませんでした。
ただ、彼女に戦いを教えて欲しいと言われた時は焦りましたが。しかも、彼まで……。
ある程度男の子に教えたら、女の子に教える役は押しつけましたが。
相変わらず殺せませんが、腕は確かでした。とっても強いんでね。いまでも。
何度も、主人には呼ばれました。いつしか、主人の事を、心の底から信頼するまでになっていたんです。
主人の事が、大好きでした。いつも、無茶なお願いしては、笑って『嘘だよ』って。
その主人は…………。