誤解
お借りしたお題は「ノンバーバル」です。
スチャラカなOLだった律子は改心して真面目なOLになった。
同期の香はそれを見て安心し、恋人の力丸拓海のプロポーズを受けた。
課長の米山米雄は力丸の義理の兄であったので、香が報告すると喜んだ。
「そうか。拓海君と幸せにね」
米山の祝福に香は涙ぐんで、
「はい」
大きく頷いて応じた。
「香君、ちょっといいかな?」
次長に昇進した梶部がフロアの入口で手招きした。
「はい?」
香はそのまま梶部の部屋まで行った。
「香君、まずはおめでとう」
梶部はソファを勧めながら言った。
「ありがとうございます」
香は微笑んで応じた。梶部は向かいに座り、
「ところで、婚約者の力丸君のお姉さんが米山課長の奥さんだというのは知っているかね?」
「はい、知っておりますが?」
香が怪訝そうな顔をしたので梶部は苦笑いし、
「その奥さんが専務の姪御さんなのは?」
香はその言葉にギョッとした。力丸からはそこまで聞いていなかったのだ。
「それは知りませんでした」
梶部は香が動揺したのを察したのか、
「あ、だからどうしたと言われればそれまでなんだけどね」
無理に笑って顔を引きつらせた。
(まずい事を言ってしまったか?)
梶部は冷や汗を掻いていた。実はもっと深い話をするつもりだった梶部だが、香の動揺ぶりを見て躊躇った。そして、
「いや、妙な事を言ってすまなかった。結婚式の日取りとかわかったら、早めに教えてくれたまえ。君は私が直接指導した数少ない優良社員だから是非出席したいので」
「あ、はい」
突然追い立てるように部屋から出されてしまったので、香は唖然とした。
(拓海さんのおじさんが、専務?)
香は眩暈がしそうになった。
そんなモヤモヤを抱えたまま、時間だけが過ぎ、香は定時で退社した。
すると力丸からメールが来た。
『これから会えますか?』
香はすぐに返信し、力丸に電話した。
それから一時間後、二人は居酒屋の個室で向かい合っていた。
「香さん、お願いがあります」
力丸は汗を掻いている。部屋が暑い訳ではない。香は只ならぬ様子に思わず唾を飲み込んだ。
「結婚をしたら、仕事を辞めてください。僕の稼ぎだけで貴女を必ず幸せにします」
「え?」
香は言葉を失った。プロポーズされた後、いろいろと力丸と話したのだが、仕事は続ける事になっていたからだ。
「すぐに辞めてくれって事じゃないんです。時機を見て、ゆっくりでいいですから」
力丸は香の顔が強張ったのを見て取り、慌てて言い添えた。
香は酷く混乱してしまった。
急展開です。




