初詣の女
お借りしたお題は、
猛烈なかゆみに襲われているシチュエーションで物語を書く。1000文字以上。
です。
律子はスチャラカなOLである。
年末年始の休暇で、律子は恋人の藤崎と初詣でに行った。
「どうしたの、りったん?」
神社への道すがら、ずっとモゾモゾしている律子に気づき、藤崎が尋ねた。
「な、何でもないよ」
律子は嫌な汗を掻きながら苦笑いをして応じた。
(まさかお尻に湿疹ができて猛烈に痒いなんていえない)
律子はその場を取り繕った。
その後も律子は藤崎に綿飴や焼きそばやたこ焼きを買わせて視線を逸らせ、木や柱や鳥居を使って隠れ、お尻を掻き毟った。
着物を着ているので、今一つポイントを掻けない律子である。
そのせいでつい力が入り過ぎ、患部を傷つけてしまったようだ。
(痛い。掻き過ぎて、血が出てるかも……)
「ここで食べようか」
藤崎が神社の端にあるベンチを指差して言った。
「う、うん」
律子は更に増して来た痒みを必死に堪えながら応じた。
優しい藤崎はベンチを自分のハンカチで拭き、律子の着物を気遣ってハンドタオルを敷いてくれた。
「どうぞ」
「ありがとう」
律子は痒みで引きつりそうになるのを我慢してベンチに座った。
「いだだ!」
律子は臀部に走る激痛に堪え切れず、叫んでしまった。
(やっぱり傷になってる……。これじゃ座れない……)
律子は泣きそうになった。
「え、どうしたの、りったん? 何か落ちてた?」
藤崎が慌ててタオルを取り、入念に調べ始めた。
「ち、違うの、藤崎君。何かが刺さったんじゃないの」
律子は藤崎の気遣いに罪悪感を覚え、遂に理由を説明した。
「りったん、それならそうと最初に言ってよ。病院に行こう」
藤崎がおんぶの態勢で言った。
「ちょっと、藤崎君、歩けない訳じゃないから、おんぶはいいよ」
律子は顔を赤らめて後退った。
「いいから、ほら!」
藤崎は無理矢理律子を背負うと、走り出した。
(嬉しいけど、恥ずかしい……)
人混みをかき分けて進む藤崎の背に顔を埋め、律子は思った。
やがて大通りに出た頃、次第に恥ずかしさを感じなくなった律子だったが、今度はそれに代わって強烈な痒みがまた襲って来た。
「藤崎君、降ろして!」
「ダメだよ、もう少しで着くんだから我慢して」
藤崎は律子が恥ずかしくて降りたがっていると思って走るのをやめない。
(違うんだよ、藤崎君! 今、今世紀最大の痒みが襲撃して来ているのよ!)
あまりの痒さに言葉も発せなくなっている律子は冷や汗を大量に掻いた。
(汗が傷に染みてるゥッ!)
痒みと痛みのダブル攻撃に曝され、律子は気が遠くなりかけていた。




