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4話 「変化:その3」

 十年ぶりに訪れた思い出の場所は、寂しくて暖かかった。

 公園はひどくこじんまりとしていた。

 敷地は俺が友達や桜たちと走り回っていた頃よりずっと狭い。金網フェンスに囲まれた端から端まで、軽く走ったとしても、二十秒とかからないだろう。

 あの日の自分から背丈も幾回りも大きくなった。わくわくの予感に目を輝かせて見上げた、ベージュのコンクリート塀に埋め込まれた「△□公園」のプレートも、今では胸の位置に見下げる位置になった。

 公園の入り口から中へ入り、何となしに眺めると、どうやら寂しげな雰囲気の原因は、俺が成長しただけでは無さそうだった。

 入り口から右奥へ進んでいく。フェンスが囲む四角形の丁度角、何もない地面の上。ここには確か、滑り台があった筈だ。

 今度は入り口の反対側、角と角の真ん中に位置する所へ向かった。地面の上に幾つも穴が開いている。ここは確かジャングルジムだったか。

 母さんから聞いた話によると、つい数ヶ月前に、ここで怪我をした子供がいたらしい。すぐさまその子の親が近所で署名を集め、自治体に抗議した結果がこれだ。

 確か、桜がここに登った時に頭をぶつけて泣いて家に帰ったことがあったっけ。

 その時母さんはどうしたんだろうか。きっと、泣いている桜にきつい言葉をかけたりはしなかったはずだ。当時のあの人なら。

 俺はぼんやりと公園の中を歩きだした。

 色々と変わってしまった。ここも俺達も。

 でも、変わらない物も確かにある。俺の頭からあの日を消し去ることは出来ないし、例え仲が悪くても、離れ離れにならずに日々を過ごしている。少なくとも、今は。

 ここは、寂しくて暖かかった。


「こんにちは」

 不意に背後から澄んだ声が降りかかって、反射的に振り返った。いや、「澄んだ」と思ったのは振り返ってからだったか。

 彼女は、足元まである、長いベージュのシフォンスカートを靡かせて、こちらに軽く手を振っていた。大きなボウタイのついた紺色のブラウスの上に、ボレロを羽織っている。

「また会いましたね」

「え、あ、うん。久しぶり」

 返事をしながら、顔がカッと熱くなるのを感じた。彼女に見とれて、もう一度声をかけられるまで挨拶を返せなかった。

「えーっと、この辺に住んでるのかな?」

 恥ずかしさを誤魔化すように矢継ぎ早に言葉を繋ぐ。彼女は相変わらず上品な笑みを顔に浮かべていた。

「ええ、ここから駅の方へ少し行った所です」

「そうなんだ。いや、俺も近所に住んでてさ。散歩してたらここ見つけて、懐かしいなって」

 殆ど無意識に嘘をついた。桜への気持ちを隠したかったし、俺自身そう信じたかった。

「ふふ、奇遇ですね」

 彼女が笑みを深めた。鮮やかな赤い唇の間から、微かに白い歯が見えた。

「奇遇?」

「はい、奇遇。私も散歩してたんです。今日は日差しが良くて暖かいので」

 それに、と言いながら、彼女は公園を見渡した。

「私もここでよく遊んでいたので」

 砂場の方を眺めたまま止まった彼女の大きな目が、微かに憂いを帯びる。さっきの俺と同じものを、彼女も感じているに違いなかった。

「いつぶり?」

「最後に来たのは小学校の初めくらいですね。幼稚園の頃はよく来ていたので、そっちの方が記憶に残ってますけど」

「俺もそれくらいの時によく来てたなあ。もしかしたらいつかどこかで会ってるのかもね」

 俺がそういうと、そうですね、と彼女は笑った。幼い頃の彼女も、同じ表情で笑っていたのだろうか。記憶の中に覚えがあるような気がして、頭の中を探る。

 どきりと胸が鳴った。思わずあ、と声が出る。ふっと浮かんできたのは、幼い桜の笑顔だった。

 似ているのだ、確かに。人を安心させる、心から屈託のない笑顔だった。

 我に返ると、彼女は訝しげに首をかしげて、突然素っ頓狂な声を上げた俺を見ていた。

「あーと、あの、名前、名前まだ聞いてなかったよね」

「そうですね。私は、ふるてまりと言います。古い手に、真理と書いて、古手真里」

 彼女は、何事もなかったかのようにこちらの質問に答えた。これも彼女の、古手さんの気遣いなのだろう。

 古手さんは、そういう気質を持っているように見えた。相手に距離感を与えず、それでいて丁寧に接する。現に、彼女の言葉を聞くと、嘘のように心が平穏に戻っていくのを感じた。

「古手さん、か。よろしく。俺は大村太一。漢字は分かるかな?」

「大丈夫ですよ。よろしくお願いしますね、太一さん」

 古手さんは軽く頭を下げながら、俺を名前で呼んだ。馴れ馴れしくなく、それでいて親しみを感じる、絶妙な言い方と動作だった。

 その成果か、俺はいつもより大胆になっていた。

「古手さんって、携帯持ってる?」

 古手さんは持っていますよ、と言いながらポケットをまさぐり、携帯を取り出した。スマートなフォルムのピンク色をした携帯だった。

「折角だしさ、メールアドレスか番号交換しない?」

 まるでナンパのようだと心の中で自嘲する。思えば、女性に対して自分からアプローチをするのは初めてだった。

 そして彼女は、「はい、喜んで」とあの笑顔を僕に向けるのだった。

Q:いつになったらヤンデレになるの?

A:まだ何ですごめんなさいでもいつかは病むのでもうちょっと待って下さいごめんなさい

Q:1週間に1回更新とか言ってたのはどうなったの?

A:完全に僕の怠惰の結果ですごめんなさい夏休みの宿題やらない小学生みたいな状態になってますごめんなさい精進しますごめんなさい


あと4話はまだ続きます。

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