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デュラハンが行く!! 〜異世界漫遊記〜  作者: 八嶋ユナ
第一章 クエルタム大森林編
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14話 ミルシャの回想【異変】

異変の始まりは、幾度も過ごした巡回の後の幸せな時間から幾日かが経ち、婆様の家事の手伝いと子供達との遊びで過ごした日、もう夜に差し掛かるという夕刻に起こりました。


「魔物が来たぞぉー!!」


―カンカンカンッ―と村の物見やぐらから見張り番が鳴らす警報が一日が終わりゆく村に響きました。


「ミルシャ、居るか?」

「アーディ師匠!」


警報を聞いたアーディ師匠が、私が居る婆様の家へすぐに訪ねてきました。



「ミルシャ、頼んだよ!」

「行ってきます、婆様」


私を頼りにしてくれる婆様に背を向け、

アーディ師匠と共に魔物の下へ駆けていきました。


◇◇◇◇◇◇◇


口のついた黒い泥の塊の様な物体を中心とし、その物体から生えた数本の腕でペタペタと歩き、護り手を探し彷徨い、見つけ次第に襲いかかる災神の眷属〝魔物〟の群れが村へと迫っていました。


「数は多くないですね」

「すぐに片付けよう」


アーディ師匠と一緒に村の門に到着後、今現在侵攻してきている魔物の群れの規模を確認して、十分に対処可能と判断、即時に対応します。


「私が前に出る。ミルシャは門前で援護だ」

「わかりました」


アーディ師匠が、腰に差している細身の剣を抜くとすぐに風の魔術を発動し、アーディ師匠のすぐ後ろから風が吹くと同時に一気に加速し、群れの先頭へ駆けていきました。

魔術、魔法の詠唱というのは基本、術者自身が魔力を使用することによって起こす現象のイメージをしやすくするためにあり、アーディ師匠は、風と水の魔力操作を究めていて、詠唱を必要とせずに魔術とある程度の魔法が発動できました。


「フッ!」


群れの先頭へと速度はそのままに、風の魔力を纏わせた剣による鋭い刺突で仕掛けます。


イギィィィィィ!!


魔物の大部分が、アーディ師匠の一撃とその余波によって壊滅します。


「はぁっ!!」


アーディ師匠に続き、群れの残りへ広範囲の風魔術を放ちます。


イギァァァァ!!


風の刃によって切り裂かれた魔物の断片が霧散し、瘴気となってその場に溜まりました。


「魔物はこれくらいだな。瘴気を祓ってから報告を入れにいくぞ」

「はい、アーディ師匠!」


地面を漂う瘴気へと近づき、護り手の力である

〝瘴気浄化〟のスキルを発動して、打ち消していきました。

肩にある護り手の紋章から浄化の魔力が流れ込み、瘴気へと向かって広がっていくように操作します。


「よし、片付いたな。村へ戻ろう」

「はい!」


小規模でしたが、魔物の侵攻を退け、瘴気を祓い、この日は無事に終わりました。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


稀にある魔物の侵攻を防いだ次の日の昼頃。


―カンカンカンッ―「魔物が来たぞぉー!!」


昨日と同じく、魔物の接近を知らせる警報が村に

鳴り響き、


「ミルシャ、行くぞ」

「はい!」


ちょうどアーディ師匠から剣術と魔力操作の指南を受けている最中で、警報の音を聞くとすぐに門へと移動を開始しました。

幸い、数もそう多くなく、すぐに終わりましたが、その二日後、


―カンカンカンッ―「魔物が来たぞぉー!!」


「あの、アーディ師匠、これって...」

「…今は目の前の問題だ。後で族長と話し合おう」


嫌な予感を存分に感じつつも、迫って来ていた魔物の群れは難なく退治し、瘴気も祓い終え、異例とも言える魔物の侵攻は一応の落ち着きを見せました。


◇◇◇◇◇◇◇


「族長、お話が」

「連日の魔物の襲撃のことであろう?ふむ、生まれたのかもしれんな、厄災種が..」

「はい。可能性は否定しきれません」

「うむ、村の防備を固めるよう指示を出す。クエルタム氏族長に遣いも出そう。お主ら導き手と護り手は守護者を選抜し、来たる厄災に備えよ」

「わかりました。それでは取り掛かります」


魔物を退治してすぐにアーディ師匠は、族長のいる集会所へ、現れたかも知れない厄災種と起こりうるだろう厄災について相談しに来ていました。

護り手を狙って魔物が人里へ来て、厄災が起こるのなら人里から離れれば良いのでは?と考えられるのですが、護り手を失えば災神の降臨が近づき、コアとなったホコロビから瘴気が溢れ続け、増えた魔物は護り手が居なくても人里を襲うので、厄災の前兆を確認したら守りを固め、厄災時の魔物は生まれたホコロビから一直線に護り手を狙いに群れを成すので、群れの大元を探り、護り手と導き手、守護者達で討伐隊を組んで、厄災種の下へ赴き、討伐の後にコアの処理という一連の流れが知られていました。


「ミルシャ、守護者の選抜を始めるぞ」

「はいッ!」


幾度かの厄災の経験則もあって、相談もすぐに終わり、私達は現れたかも知れない厄災種へ共に挑む事になる守護者達の任命のために動き出しました。


◇◇◇◇◇◇◇


選抜するにあたり、シア姉弟と呼ばれるミルディア氏族の中で指折りの猛者に会うために村にいくつかある畑の一つへと来ていました。

収穫物を畑近くにある納屋に運び込んでいた弟さんを見つけ、声をかけます。


「シアレル」

「お、アーディ先生じゃないですか!」

「少しいいか?」

「ん?なんすか?」

「先程、厄災の兆候が認められた。シアレルに厄災種が発生していた場合に守護者として討伐隊に入ってもらいたい」

「そうですか、厄災が...。んじゃ、守護者は俺に任せてくださいよ!」

「あぁ、頼む」

「バッチリやったりますよ!」


アーディ師匠は守護者の一人として村の男衆で一番のガタイと武闘を誇る弟のシアレルさんへ依頼し、快く承諾してもらいました。


「それでアーディ先生、あと一人はどうするんで?」

「メリシアに声をかけようと思っている」

「おぉ、ならあそこですよ」


シアレルさんが後ろに向かって指を差すと、畑仕事をしている女性がいました。


「おぉ~い!メリ姉ぇ!!」


シアレルさんが呼んでくれると、姉であるメリシアさんがこちらへ来てくれました。

シアレルさんとは正反対に小柄なのですが、剣術においてはアーディ師匠と互角の剣士です。


「ちょっと、何...アーディ先生?」

「メリシア、今いいだろうか」

「大丈夫ですけど...」


メリシアさんにも現状を伝えて、守護者になってもらうために依頼をします。


「わかりました、謹んでお受けいたします」

「あぁ、頼む」


メリシアさんにも承諾していただき、守護者は護り手と導き手に1人ずつというのが一種の伝統としてあるので、選抜はこれで一段落になりました。

厄災は波のように押し寄せる魔物をある程度まで耐えきると、魔物がピタッと来なくなる時間があり、その時間に厄災種の下へ行くのですが、大人数より少数精鋭で一気に攻め込むのが戦術としてよく取られていました。


「にしてもレェルも守護者として行くねぇ...」

「シア姉、俺だってアーディ先生から認められてるってことだぜ?」

「なら、アーディ先生から一本でも取りなさいよね」


二人は村の自警団に所属していて、アーディ師匠はミルディア氏族の村にいる時には、自警団の人達に稽古をつけており、シア姉弟さんの実力はミルディア氏族の中でトップクラスなので、是非とも守護者を依頼しようとなりました。


「ミルシャ、村の防備を見ておくぞ」

「わかりました!」


心強い守護者を迎え、もし厄災が起こったとしてもアーディ師匠達とならきっと無事に終わると思っていました。

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