10話 焚べる薪は嘘の薫り
集会所の入り口から覗くように中の様子を確認すると、クエルタム氏族の連中が下卑た会話を楽しんでいた。
(ミルシャ、俺がやる。手は出さないでくれ)
(ロクロー...わかりました)
正直不安があった。
勢いでやってしまった異世界での初の殺人。その時とは違い、今の冷静な思考で殺すために人と対峙できるのかと。
そんな考えも下衆共の発言で今では馬鹿馬鹿しいとさえ思えた。
(俺はこいつらを殺しても何も感じないだろうな)
今なら殺れる。こいつらなら殺れる。
その確信がある。
ジャケットを羽織り直して、剣を鞘から取り出し、抜き身の剣を持って悠々と奴らの元へと歩む。
「―ッ!!誰だっ!! ......魔物なのか..?」
5人の内の1人がすぐに気づき、迎撃の体制を取る。
俺は構わずゆっくりと集団に近づいていく。
「おい、魔物がなんでここにいる?さっさとどっかいけ」
「あぁん?見ねぇ顔だなぁ......顔無かったか!!」
「ぐはははっ!!おい、やめてやれよ!」
何故こいつらはこんなにも余裕なんだろう。
そんな奴らの余裕を崩してみたくなり、質問に
答えてやる。
(俺が何者かって?)
「何だ、喋れるのか?」
(俺はお前らを薪にしに来た者だよ)
「ハァ?何言ってんだ?―ドスッ―.......あ?」
エルフが俺の返答に対し、口の悪いチンピラのような言葉を返す途中で心臓を一突きにする。
良かった、上手く刺せて。
「グッ...お前..一体...」
(黙ってろ)
「ぎゃあああああッ!!!」
心臓を貫かれているエルフが剣を伝った魂の炎で、内側から燃やされる。
万物を燃やすという魂の炎。ならば、自分が燃やしたい物だけ燃やせるのではと考え、炎を掌に這わすような感覚で剣に試してみたが、どうやら成功したみたいだ。
(お前らの準備はいいか?)
残りのエルフに自分達の末路を見せてから覚悟を 問いかける
「うっ....」
「ちっ...クソが..」
「何だあの炎は...」
「おいっ!やるぞっ!!」
戸惑いつつも、各々の傍らに置いていた剣に手を
かけ、鞘から抜き、俺を囲む様に陣形を組む。
(もういいんだな?)
燃え尽きるのを待つだけになったエルフから剣を 乱暴に抜き、構える。
剣など持ったことなかったのだが、どう構え、
どう振るのかを感覚で理解できている。
これが剣術のスキルなのだろう。
(それじゃぁ、いくぞッ!!)
掌に炎を溜め、床に掌底を打つ。すると、掌を中心に炎が一気に広がる。
俺の奥の手パート2だ。
「何だっ...!」
「ぐぅ....」
「ぶわっ」
「チッ..!!」
エルフ達が炎に怯んだ瞬間、正面にいたエルフへと突っ込み、炎を纏わせた剣を深々と刺した後、一気に斬り上げる。
(おいしょっ!!)
「ぐぎゃぁぁぁぁっ!!」
まず、一人
(オラッ!!)
「ぐっ..」
すぐに二人目に斬りかかり、剣で受けたエルフと鍔迫り合いの形になり、力勝負に持ち込ませる...
と思わせ、
(よっ)
「なっ..!」
相手が力んだ瞬間に鍔迫り合いをやめ、突然と力をかける場所を失ったエルフが前によろける。
(はっ!!)
「ガッ...、クソッ...!!」
よろけた後の背後を斬りつけ、エルフがうつ伏せに倒れる。
(フッ!!)
「アガッ..!! ガァァァッ」
無防備な背に刃を突き立て、焚べる者で燃やし、
残りは二人。
「おい、一気にいくぞ、援護だ」
「あぁ」
残りが短く役割を決め、一人が突っ込んでくる。
「〝我、この手より炎を顕現し、敵を滅する〟」
援護のエルフが何か言うと、手元に炎の塊ができ始める。
「おいっ!手加減かぁッ!?」
(んぐっ...)
援護エルフに意識を取られ、突っ込んで来たエルフに腹を蹴られる。
「喰らえ!!」
援護エルフが炎の塊を飛ばしてくる。
(うおっ....)
すぐ目の前に迫ってきた炎に咄嗟に魂の炎を纏わせた掌で受ける。すると、
(なっ..何だ?)
炎の塊は掌に触れた瞬間、蒼い炎に変わり、焚べる者で吸収される。
(焚べる者ってこういう魔法?みたいなのもいけるのか...)
万物を燃やす、という説明があまりにも文字通りであることに改めて驚きと畏怖が湧いてくる。
(さっきの炎の塊、なんか..できそうだな)
同時に、新たな魂の炎の扱い方を思いつき、実際に試してみる。
(こんな感じか..?)
左の掌に蒼い炎が渦巻き、一つの炎塊になる。
奥の手を使うときよりも灯から炎を持って来たが、どうやらイメージ通りできたみたいだ。
「どういうことだッ!?」
「ちっ、面倒くせぇ...!」
エルフ達が驚く。
確実に当たり、ダメージを与えうるだろう攻撃を軽々と無効化したと思えば、相手は同じ攻撃を逆に仕掛けてきようとしてきているのだから。
(飛んでけッ!!)
炎塊を飛ばすイメージをして、しっかりと狙い、掌をエルフに突き出す。
炎塊は掌から射出され、まっすぐにエルフへと向かって行く。
「―ッ!! 〝耐火の壁よ、我が前に顕現し、我を護り給え〟」
援護エルフが何か唱えると、赤色に染まった魔法陣のような物が現れ、俺が放った炎塊の道を塞ぐ......かに思えた。
「う...嘘だろ!?」
耐火の壁と言われた魔法陣は、炎塊に触れた瞬間、先程のエルフが放った炎と同じ様に蒼く染まり炎塊に飲み込まれた。
「ぐわぁぁぁぁぁッ!!」
耐火の壁が意味をなさず、炎塊は援護エルフに直撃し、その身を燃やさんと全身を包んだ。
(…………)
「うっ...くっ..来るなッ!!」
援護エルフの後ろに戻っていた突撃エルフに威圧をかけるようにズカズカと距離を詰める。
「クソぉぉぉッ!!」
(ふんッ!)
「うぐッ..」
破れかぶれの一振りを弾き飛ばし、エルフの首を 掴む。こいつはまだ殺さない。聞くことがある。
(ここにダークエルフは居るか?)
「は...?」
(ミルディア氏族は居るか?と聞いている)
「い、居ないっ!全部輸送した!」
(何処に?)
「く..クエルタム氏族の村だ..」
(いつだ?)
「今日の昼頃...」
(そうか)
「な..なぁ、喋ったろ?だから....」
(ふんッ)
「ぎゃァ!!」
情報を吐き終えたエルフが命乞いを言うのに
腹が立ち、頭に集めた炎でヘッドバットを食らわせてから、床に投げ捨てる。
(!? 何だこれ...)
投げ出され、床に転げたエルフの顔が嘘のように
変わっている。
短髪で茶髪、顔は悪人面で耳は短い。
そこに今までの金髪で長髪、秀麗な耳の長いエルフはいなかった。




