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デュラハンが行く!! 〜異世界漫遊記〜  作者: 八嶋ユナ
第一章 クエルタム大森林編
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09話 ミルディア氏族救出作戦

毎週土曜23時頃に投稿をしていこうと思います。


村に向かう道中に段取りを相談し、村にいるクエルタム氏族に夜襲を仕掛けて、迎撃される前に一気に ぶっ飛ばす!!という非常に脳筋な作戦で可決。

良いよ、シンプルイズ良いよ。


(おぉ..これが噂の..)

(はいっ!クエルタム大森林の精霊さん達です!)


目的地であるミルディア氏族の村へ向かう道中の 案内をしてくれているミルシャは、自身の周りを 淡い光の球で囲まれていた。

この光の球は〝精霊〟と呼ばれ、普段は目に見えないのだが、大森林のそこら中をふよふよしていて、〝精霊の寵児〟というスキルによって、精霊に干渉できるらしく、呼びかければ集まってくれて、力を貸してくれたり、ただ単に話をするだけという事もあるらしい。

ミルシャは特に風の精霊との相性がいいらしく、

大抵のお願いは聞いてくれると言う。

風の精霊もミルシャの話を聞いたり、一緒に森を

散策するのが好きのようで、むちゃくちゃ仲が良いとはミルシャの本人談だ。


「毎日話す仲なんですが、最近は生贄だった時に かけられていた手錠で力を抑えられていて話せなくなってて...」

(それじゃいっぱい話してあげなきゃな)

「はいっ!」


少女と精霊達が会えなかった時間を大事に、大事に

埋めていくように、ミルシャは時折微笑み、精霊達は淡く発光する。

なんと幻想的なんだろうか...。

この光景はこれからもずっと記憶に残るんだろうと心に静かに想う。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「あっ、見えてきました!」


これから夜襲を仕掛けに行く道中とは思えないほどに平和な時間を過ごし、気がついたら村の近くへと到着していた。


(着いたか...。さぁ、切り替えていこう)

「はいっ...!」


村の入り口近くに潜み、道中に和んでいた気持ちを新たにして、これから自らの手で起こす戦いへの 心構えをしていく。

そして当然スーツのジャケットはかぶり済みだ。

頭が光っているのを忘れていて夜襲は失敗....なんて目も当てられん。.......元からだけど。


「あれが村の出入り口です」

(あの入り口にいる見張りのように金髪であれば クエルタム氏族って奴らと判断していいんだよな?)

「はい、ミルディア氏族はダークエルフのみですので」


木製の塀と一体化した門には、クエルタム氏族で あろうエルフ2人が門の両脇に立っていた。

塀はそこそこ高く、5m以上は確実にあるだろうといえる。護り手がいる村だから防衛に力を割いているのだろうが、中の様子が全く確認できなかった。


(中にいるクエルタム氏族の人数はわかるか?)

「はい、今精霊さん達が見てきてくれて、全部で 7人、入り口の見張り2人を除いた残りは村の集会所に集まっているらしいです」

(なるほど...7人ね)


精霊やばっ......完全といえるステルス諜報員で一緒に戦ってくれて話し相手にまでなってくれるとは...羨ましい...!!俺も精霊と仲良ぐじだぃ゙ッ...!!

...悔し涙も出るわけ無いので茶番はそこそこに、


(まずは見張りからだな)

「それならば私が!」

(なら、頼んだ)

「はいっ!」


ミルシャが見張りエルフへの攻撃を率先し、祈る様に手を組み、目を閉じながら囁くようにつぶやく。


「〝精霊よ、その身を刃と化し、我が敵を屠れ〟」


入り口を見張るクエルタム氏族のエルフの喉元を 撫でるように風が吹き付ける。


「..ッ!! ..ゴブッ...」

「なっ..!!―ガハッ!!...ハッ...ぁ」


見張りのエルフ達は声にならない声を上げ、

すぐに横たわり、喉元からはヒュー..ヒュー..という音が鳴っていたが、やがてその音はゆっくりと消えていき、森のざわめきだけが残った。


(今のは...)

「風の精霊さん達による攻撃です。精霊さん達に こちらの要望を強く伝えたら、即座に行動してくれました」

(な..なるほど)


風の精霊による不可視の裂断...避ける術が何も思いつかない...。

精霊という存在に畏敬の念を感じ、その精霊と心を通わし、共に歩むミルシャに尊敬の気持ちが湧く。


「ただし、今回は精霊さん達がクエルタム氏族への怒りがあったからできた感じですね。精霊さん達は基本争いは全く好みませんので」

(あくまで特別な技ってわけか)


それでも精霊がミルシャに味方する限り、このクエルタム大森林の中ならミルシャ達に敵うやつなんて存在しないんじゃないか?俺いらなくね?という 疑惑が頭をよぎるが、見張りがいなくなったので、いよいよ村の中へ切り込もうと思う。


(えっと、集会所だったよな)

「はい、残りはそこにいるはずです。集会所まで 先導しますね」

(あぁ、頼む)


俺はあのミルシャの首を刎ねんとしたエルフが装備していた剣の柄に手をかける。

焚べる者があっても、頼り切りはいけないと判断し、新たに手に入れた剣術のスキルの試運転も兼ねつつ持ってきていたのだ。


「では、行きます」


ミルシャが静かに素早く村の中へ入っていく。自分もその後に続いていく。


「ロクロー、あの中央の建物が集会所です」


ミルシャが指を指した先を見ると、平屋の民家や畑が無数にある村の中心には、暖簾の出入り口を持つ日本でいう合掌造りに似た建物があった。


(中がほんのり明るいな)


集会所に近づき、中の様子に意識を向ける。

広めの空間の中心に灯りを囲む男たちが見える。


「あいつらは今頃、仕事を終えている頃なんだろうな。見たか?あの女の諦めるしかねぇって顔!」

「クソっ...俺が首を刎ねたかったぜ..。面のいい女は殺し甲斐があるんだ」

「なぁ、もう戻っててもおかしくないよな...なんか帰りが遅くないか?」

「ふっ...あの女には魔封じの手錠をかけてあるからな、護り手と言っても今はただの女だ。もしかしたら殺す前に楽しんでたりするかもな!」

「俺もついてきゃ良かったか...惜しいことしたぜ...」


そんな会話が中から楽しげに聞こえてくる。


(下衆野郎共ッ..!!)


平和の為にその身を捧げ、維持する護り手が殺されることに一切の躊躇も無く、寧ろ嬉々とした様子のエルフ達に激しい嫌悪感が湧く。


(いや...こんな奴らで良かったのかもしれない)


あの3人のエルフを殺した時は、とにかく無我夢中で殺人を躊躇するなど考えもしなかったが今は違う。

しっかりと体制を整え、冷静に相手と対峙する。

他を殺し、己が糧とし生きていくと心に決めたが、もう一度人殺しができるかは不安があった。...が、少女をいわれのない罪で糾弾し、家族と村人達を盾にしてその生命を捧げろと脅し、俺が介入しなければ意味のない生贄を執行していたクエルタム氏族。その中身はたった今、ドス黒く濁った下衆なのだとわかった。

もう、心に不安など跡形もなかった。

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