走馬灯と悪夢について
掲載日:2025/12/26
隅に置かれた赤いランドセル
うっすらと埃をかぶっていた
もう使われることのないそれは
たしかにこちらを睨んでいた
成長しきった目覚まし時計
針の進みが遅い気がした
たまにしか見なくなったそれは
たしかにこちらを羨んでいた
スタンドからずれたヘッドフォン
触れればついにガタンと落ちた
随分前に行き場を失ったプラグは
たしかにこちらを窺っていた
趣味じゃないマグカップ
ないはずの湯気がゆれていた
指紋すら残っていない取っ手は
たしかにこちらを恐れていた
ひまわりが笑うカレンダー
ハンガーに掛けたコートに見え隠れしていた
三十一までバツで埋められた厚紙は
たしかにこちらを好いていた
床に落ちたままのネックレス
いつかの夜を共にしたあの人のものだろうか
とっくに輝きを失った銀色は
たしかにこちらを見下していた
手首に巻きついたたくさんの赤
視界はぐるぐる観覧車
思い出話はそこそこに
たしかに僕は死んでいった
たしかに僕は生きていた




