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第2話 後悔と

この小説は,主な執筆・ストーリー構成等は冬桜美狐が,加筆・修正案を天光神奈が行っております。

基本的な責任は私,冬桜美狐が担っております。


誤字,脱字報告受け付けております。見つけた際は,遠慮なく報告して頂けると幸いです。

感想,いいね,レビュー等大歓迎ですm(_ _)m

ブックマークも是非お願い致します。

「あ,あそこって……マジかよ」

 その生徒が呆然と呟き,武流に「マジで?」と問う。

「はい」

 武流は言葉少なに答える。その目は虚ろで,表情の抜け落ちた顔は蒼白だ。

「も,もう抜け出してるんじゃねぇか? 流石に……」

「抜け出してない。多分」

 武流は意図せず冷たい声を出す。

 彼は確信がある。確実にあの二人は抜け出していない。


 抜け出せていない。


 あの二人は__愛彩と琳斗は,そういう人間だ。


 武流は小さくそう呟く。側にいた生徒に聞こえないくらい小さな声で。

「行かないと」

 武流は自分でも驚くくらいはっきりとそう口にする。その目に生気は宿っておらず,黒煙に紛れて見え隠れする赤が映っていた。

 気づかないうちに震える手を固く握りしめ,武流は駆け出す。

「ちょっ! 危ないって!」

 生徒の言葉など武流には聞こえない。

(僕が,行かなきゃいけないんだ……!)


 武流は孤独だった。

 父が死んだ時から。

 母はいた。武流にとっては,いただけだった。

 別に育児放棄というわけでも嫌われていたというわけでもない。

 母親は息子に,込められるだけの愛情を込めて育てた。死んだ夫の分も自分が,と。


 けれど,武流は孤独だった。


 その孤独が消えたのは,小学校に入って愛彩と琳斗に出会ったからだ。

(……あの時も,危なかった。今と同じだ)

 二人と武流の出会いは,極めて危険な場だった。


 赤い太陽が空を包む夕暮れ時。武流は一人で体育館裏を歩いていた。

 別に来たくてきたわけではない。小学校の入学式後,楽しげな雰囲気に包まれた玄関から離れたくて彷徨っていたら,そこにたどり着いただけだ。

 少しの間歩いて武流は立ち止まった。

 立ち止まらなくてはいけない気がしたからだ。

 目の前には,うずくまる何かと,棒を振り上げて何かを叩く3人の子供。

 ____いじめだ。

 武流はそう判断する。そしてすぐにその場を離れようとした。

 いじめにおいて,大体の場合傍観者は加害者だ。

 自分が傍観者になるのは嫌だ。

 そんな__自己防衛反応というのだろうか__判断をして背を向けた時。

 棒を振り上げていた少年がこちらを向いて,何かを煩く喚き立てた。

 武流には何を行っているかわからなかったが,3人の子供が棒を振り上げて走ってくる。

 武流は後悔した。自分のすべてを。

 けれど,彼に救いの手は差し伸べられた。

 ____大丈夫?

 幼い少女の明るい声が,武流の目を開かせる。

 そこには,赤く照らされた,明るい笑みを浮かべる自分と同じくらいの少女が立っていた。

 その後ろで,大人びた少年が3人の少年の棒を受け止めている。

 ____私愛彩。あっちが琳斗。君は?

 少女は笑みを崩さずそう問うた。

 ____僕,武流。

 初めて身内以外の人と話したかも。

 武流はそう思った。さもありなん。

 彼は物心付く前に父を失い,人間不信に陥っていた。それを気遣った母親が,他者と関わらないよう配慮していたのだから。偏った愛情だ。

 武流が呆然と見ている間に,琳斗と呼ばれた少年は取り上げた3本の棒を束にして,3人の胴を薙ぎ払う。

 幼い少年が降った棒に飛ばされた少年達は,起き上がってこない。

 いつの間にか歩いていった少女__愛彩と名乗っていた__は,蹲っていた少年に手を貸して起き上がらせている。

 ____すごい。

 そんな言葉が,武流の口から漏れる。

 その言葉が聞こえたのか,少年が振り返る。

 鬼神の如きオーラを纏っていた少年と目が合い,武流は肩を跳ねさせた。

 けれど,少年は表情に何の感情も浮かべていなかった。先程とは打って変わって,静謐とも言える雰囲気を纏い,その少年__琳斗は屈んで武流と視線を合わせる。

 そして,ほんの少しだけ口角を上げた。

 ____ありがと。

 その場に転がる小石に話しかけているのかというほど小さな声には,万感の思いが籠もっていた。

 つられて,武流もほんの少し口角を上げる。鏡写しのように。

 ____君とはわかりあえる気がする。仲良くしよう?

 琳斗は,新入生とは思えない大人びた声で,そう告げた。

 戻ってきていた愛彩が笑顔で武流の手を握り,琳斗もその上に手を重ねる。

 赤に支配された静寂の中で結ばれた,友情だった。


(あの時,二人は助けてくれた。僕が,助けないと。友達の意味がない)

 武流自身,友達の本当の意味は知らない。

 琳斗は,お互いわかりあえて,いい関係が築けてればそれは友達,と言い,愛彩は,仲が良ければ友達だよ! と宣言した。

 二人が言うなら,そうなのだろう。

 それが武流の友達の意味だ。


 偶に出会う教師の制止を振り切りながら走っているうちに,黒煙が見えるようになった。

 咳き込みながらも,その方向に向かっていく。

 叫ぶような声や,慌ただしい人の気配が近づくにつれて,体感温度が上がっていき,目から涙が出てくる。

 そして,火元にたどり着いた。

「君!? なんでこんなところにいるんだ!?」

 消化器を手にした教師が怒鳴る。

「あそこに,二人が!」

 武流の前に数人の教師が立ちはだかり,武流は必死に叫ぶと,教師は一様に目を見張る。

「まだ子供がいるのか!?」

 教師の叫びに答えず,隙間をくぐり抜けて火元に走る。


 教師の姿見えなくなった辺りで,周囲を取り巻く火に触れ,服の裾が少し焦げる。

(熱っ……! 二人,どこ!?)

 周囲を見回す。


「武流っ……!?」


 声が聞こえ,咄嗟にそちらを振り向いた。


 一瞬見えた人影の前に,瓦礫が崩れ落ちる。


 それを避けた武流の上に,燃える木片が山のように積み重なった。

最後までご覧頂きありがとうございます。

 なんだかシリアスのまま終わりました。ようやく転生ということで,まぁ一つの節目です。故に少々畏まったことを。

 この作品は天光神奈様のあとがきにありますように,天光様と私,冬桜の合作です。当初は私が一人で書こうと思っていたのですが,天光様のご意見も取り入れつつ書いていると,いつの間にか合作になっていました。私も正直,自分だけで書いていると他者の意見が軽視される可能性を危惧していたので,大変幸いな事です。まだまだ完結の兆しはありませんが,最後までご愛読いただければ幸いです。今後もどうぞよろしくお願いいたします。 冬桜美狐

 第二話、お楽しみいただけましたでしょうか。この作品は私、天光と冬桜さんとの合作となります。概要としては、私が作品の内容を考えて冬桜さんに文章としていただいている感じです。私はあんまり小説に積極的ではないんですが、付き合いの長い冬桜さんが小説家を目指していらっしゃるということで少しでも力になればと思い、お手伝いさせていただいております。この作品はまだ、未完成ということで、まだまだ完成は程遠いと思いますが、ご愛読いただければと、思っております。今後とも宜しくお願いいたします! 天光神奈

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