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【祝!書籍化決定!】論破してみたら一石二鳥した~乙女ゲームに入りこんだモブなので、婚約破棄の場面に乱入してみた~  作者: 星雷はやと


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第八十九話 『計画の主』⑱

 

「ロイド・クライン。下手な時間稼ぎは止したまえ。第二王子は君を助けには来ないぞ?」


 特段時間稼ぎをしている覚えはないが、クロッマー侯爵は違うらしい。


 俺を嘲笑うような口調から、俺が第二王子派の救援が来ると信じていると思い込んでいるようだ。残念ながらその淡い希望は疾うに諦めた。

 逆に言えば、この状況で第二王子がこの場に現れる方が問題である。彼に危害を加えようと企む黒幕と対峙させるには、危険すぎるのだ。先程の『つまらない』という発言から、王城で行われるパーティーまで第二王子に危害を加えることは考え難い。だが相手は邪悪な黒幕である。何を仕出かすか分からない。危険がある場に第二王子が現れるのは、望ましくないのだ。助けに来なくて好都合である。


「…………」


 クロッマー侯爵は第二王子に駆け付けられては、俺の勧誘が出来ない為に陽動作戦を実行した。その陽動作戦を計画の指示したのは、他ならぬ黒幕であるクロッマー侯爵自身である。しかし、他人事のように振る舞う様子は邪悪そのものだ。人を貶めることを計画し実行する者は、常人とは神経の作りが大きく異なるようである。


 何とかクロッマー侯爵とハリソン伯爵の二人の注意を他に向けたい。そして『秘密の抜け道』から脱出をする。この場に留まっても、これ以上は有益な情報を手に入れることが出来ないからだ。クロッマー侯爵に確認をしたいことや、王城で行われるパーティーでの計画についても知りたいことはある。だが、今はクロッマー侯爵の優位に働くことは避けるべきだ。

 黒幕の仲間になることや、リベリーナの無実を証明する証拠品を渡すなど絶対に出来ない。クロッマー侯爵とハリソン伯爵の注意を他に向け、その隙に逃げるしか方法がないだろう。


 問題は如何にして二人の注意を他に逸らせるかである。


 クロッマー侯爵は王城で行われるパーティーの計画を完璧にする為に、俺を仲間にすることに余念がない。これほどの執拗な意識を逸らすことは難しいだろう。クロッマー侯爵の意識を他に向ける話題が俺にはないのだ。最大の関心であろう第二王子は陽動作戦に嵌められ、此処に来ることが出来ない状態である。彼についての話題を出したところで、意識を逸らす迄にはならないだろう。

 ハリソン伯爵はクロッマー侯爵に同調する為、主であるクロッマー侯爵の意識を逸らすことが出来なければ無理だろう。適当に煽ることも出来るが、クロッマー侯爵が軌道修正する筈である。本当に『面倒な駄犬』だ。


「これでも私は君に同情をしているのだ。マルセイ第二王子に、こんなオンボロ離宮に閉じ込められて……可哀想に……」


 沈黙した俺が追い詰められていると確信したようだ。そして見下げるように、憐れみの言葉を口にした。そもそも此処の軟禁空間に入れられた原因は、黒幕であるクロッマー侯爵である。憐れまれる筋合いはない。全ての元凶が何を言い出すのだ。

 此処が王城の敷地内にある建物であることは分かっていたが、離宮と聞き納得である。第二王子が使用し、黒幕が簡単に手出しを出来ない建物としては最適だからだ。しかし王族の所有物に対して、不法侵入と破壊活動を行うとは大胆不敵である。これだけの行動を起こすのだ。クロッマー侯爵には、第二王子に勝つ絶対的な勝算があるのだろう。


 それが、俺が仲間になることなのだ。

 絶対にお断りである。


「何が言いたいのですか?」


 今更、白々しく俺の状況を憐れみ始めたクロッマー侯爵を扉越しに睨んだ。



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