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【祝!書籍化決定!】論破してみたら一石二鳥した~乙女ゲームに入りこんだモブなので、婚約破棄の場面に乱入してみた~  作者: 星雷はやと


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第六十四話 急展開⑤

 


「ロイド・クライン!! 聞こえているか!? 後は三階だけだぞ!? 今からお前を引きずり出してやるぞ!!」


 先程よりも大きな声で黒幕派の指示役の声が響く。段々と声が大きくなること、足音が近付いていることから階段を使用していることが分かる。この建物の構造は詳しくは知らない。分かることはこの部屋が吹く抜けに面し、階段が吹き抜け部分に造られていることだ。

 階段を上る人数は二人分だ。一人は黒幕派の指示役、もう一人は護衛か或いは……。


「さあ! 三階に着いたぞ!? 潔く出てきたら如何だ!?」


 二人分の階段を上る音が止むと、続いて5,6人の足音が階段を駆け上る音が響いた。如何やら俺が居る階に到着したようだ。こちらとしても黒幕派の顔を拝みたいところだが、生憎それは扉と鎖により叶わない。俺を守る扉と鎖だが、そこが唯一の欠点と言えるだろう。 

 黒幕派が一つずつ部屋の扉を叩き壊す音が響く。不法侵入に器物損壊、流石は黒幕派である。犯罪のオンパレードであり、此処が王族の所有物の建物であること知らない筈がない。知った上での行動だろう。厄介なことこの上ない。


「…………」


 黒幕派と対峙する前に、周囲の確認をする。目の前は扉と鎖で守れているが、破れられた場合は迅速に秘密の抜け道から脱出するつもりだ。暖炉がある部屋に戻り、置いておいた蠟燭と燭台を回収する。リベリーナの無実を証明する証拠品は絶対に奪われてはいけない。スーツの上着を正し、ボタンを留める。部屋に侵入されても、俺がリベリーナの無実を証明する証拠品を所持していることを悟られないように隠す。


「ロイド・クライン! 腰抜けか!? 卒業パーティーでは随分と大立ち回りを演じていたそうじゃじゃないか!!」


 黒幕派の指示役が一段と大きくなり、相変わらず俺を挑発する為の言葉を重ねる。その内容に俺は眉をひそめた。

 如何やら奴らは、もう直ぐそこまで来ているようだ。近くの部屋の扉が激しい音を立てて割れる。他の階と同じく破壊音が響くところから、一部屋ずつ部屋の中まで確認をしているようだ。悪党だというのに全く律儀な者たちである。これはきっと黒幕の指示だろう。

 黒幕派が第二王子派の所持している証拠品を、全て確認をすることが出来ているかは不明である。しかし俺が知らぬ間に卒業パーティーの件に関して、調査と審議が行われた可能性は十分にあるだろう。何せことを仕出かしたのは元王太子達である。罰する為にも調査と審議は必要だ。 

 その場で俺が卒業パーティーで、リベリーナの無実を証明する証拠品の数々を確認した筈である。第二王子が俺から質問の対価として、回収した品々も提示されただろう。しかしそこに、『リベリーナが借りた童話の本』は存在しない。俺が所持しているからだ。正確に言えば、第二王子から『証拠品の保管係』として預けられたと言った方が正しいだろう。本来ならば質問の対価として回収されて当然なのだが、第二王子が保険として俺の手元に残した。

 黒幕は公爵令嬢であるリベリーナを貶めようとした存在だ。地位が高く内政にも関わっている心配がある。卒業パーティーでの件についての調査と審議に参加した可能性が高い。そして『リベリーナが借りた童話の本』を第二王子派が所持していないことが分かれば、自ずとその所在は俺ということになる。卒業パーティーの後、黒幕派は俺から証拠品を奪おうとしていた。それを第二王子の計らいで回避をしたのだ。だが証拠品を預けただろう第二王子が所持していないと分かれば、自然と『リベリーナが借りた童話の本』の所持者が俺であることが分かる。

 リベリーナの無実を証明する証拠品である『リベリーナが借りた童話の本』は、万が一にも他の証拠品が偽造されたり処分されたりした際の切り札だ。リベリーナを守る最後の砦である。しかし黒幕にとっては、最大の障害物だ。他の証拠品を自身の権力により、捻じ曲げたとしても手元にない証拠品は手出しの仕様がない。それ故に、強硬手段を用いてこの建物に侵入したのだ。第二王子派を遠ざける工作も行われたところを見ると、かなり本気である。

 それほどまでに黒幕は、リベリーナの無実を証明する証拠品と俺を探し出したかったのだ。黒幕が現在の状態から形勢逆転を行うには、俺とリベリーナの無実を証明する証拠品の存在は余りにも不都合なのである。このタイミングで襲撃をしてくるということは、王城でのパーティーが行われる前に俺と証拠品を確実に処分したいのだ。

 つまり王城で行われるパーティーで、リベリーナを再び貶める計画があるということになる。


「……っ、あまり煽らないでもらいたいな……」


 強く両手を握りしめる。折角、冷静さを取り戻したというのに、必要以上に煽らないでもらいたい。リベリーナを再び貶める計画など、今すぐにでも叩き潰したくなる。だが、この場それをすることは許されない。黒幕と黒幕派には素敵な舞台で、醜態を晒してもらわなければ気が収まらないのだ。場所と加減を間違えてはいけない。


「ほおら! この部屋が最後だ!! この部屋に居るのだろ!?」

「はぁ……」


 他の部屋から発せられていた破壊音が止み、正面の扉から黒幕派の指示役の声が響いた。耳障りな声に、思わず溜息を吐く。これから手加減をして情報収集をする自信が少しだけなくなる。

 うっかり喉笛を食い千切らないように注意しなくてはいけない。




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