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論破してみたら一石二鳥した~乙女ゲームに入りこんだモブなので、婚約破棄の場面に乱入してみた~  作者: 星雷はやと


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第二十九話 第二王子⑤


「……中々に面白い質問だね」


 第二王子は俺の質問が予想外だったようだ。アメジストの瞳を見開いた。


 彼の予想では、俺がもう一度同じ質問を繰り返すと思っていたのだろう。或いはリベリーナが大広間で披露した体術について、何故教えたのか質問をすると予想していたのだ。でなければ、ポーカーフェイスの第二王子が動揺を露わにすることは考えにくい。

 しかし少しの間を有しても、『予想外の質問をして如何いうつもりなのか?』という皮肉を返すことが出来るのは流石である。


「喜んでもらえて嬉しいです」


 皮肉を返された為、俺も皮肉で対応する。人畜無害の笑顔もおまけ付きだ。


「『女性当主について』ですね……そうですね。私は良い考えだと思います。性別で家督を継げる資格の有無を左右させるべきではないですよ。女性も優秀な方は沢山おられますからね」

「そうですか。お答え頂きましてありがとうございます」


 如何やら第二王子は『女性当主について』は賛成のようだ。そのことを知ることが出来たことに、少しだけ安心する。変革を嫌う保守派の場合は色々と厄介だからだ。


「『女性当主について』具体的に『誰か』想像する方がいるのでは?」

「いえ。只、リベリーナ様が考えておられたので、女性当主について殿下のお考えを知りたく思い。質問を致しました」


 第二王子の返す質問の『誰か』とはリベリーナを指していることが分かる。だが素直に『誰れ』に対して、リベリーナの名前を出すわけにはいかない。あくまでも『第三者の視点から』の質問であるという体裁を保つ必要がある。


 リベリーナの次の婚約者になる可能性が一番高いのが、この第二王子だ。


 国を思えば、リベリーナと第二王子の結婚は妥当だと言える。俺の『望み』も何処まで効力が発揮されるか分からない。国王や宰相は信頼しているが『王太子』が不在となれば、次の『王太子』が必要となる。第二王子が『王太子』になるのは自然な流れだ。

 そうなれば、公爵令嬢との婚約は必須になるだろう。リベリーナほど、第二王子の『王太子』としての立場を盤石にする令嬢は居ない。

 そのことは国王や宰相、リベリーナや第二王子も理解しているだろう。リベリーナは俺の『望み』に対して、気持ちを偽り第二王子との婚約を承諾することになる。そのことに対して俺が異議申し立てする気はない。


 だから俺は『女性当主について』リベリーナの名前を直接出すわけにはいかないのだ。


 元王太子の婚約者としてリベリーナが王太子妃教育を受けていた。ならば、フォルテア公爵家も跡継ぎの教育を行っていた筈である。

 リベリーナが第二王子と結婚すれば、フォルテア家を継ぐ者が居なくなるのだ。フォルテア家は血縁者から優秀な人物を次期公爵として迎え入れている準備をしていることだろう。

 俺が『女性当主について』リベリーナの名前を出せば、リベリーナを女性当主にすることを望んでいると思われているのは避けたい。


『望み』を口にした俺だが、国王や宰相やリベリーナや第二王子、次期公爵を困らせることは本意ではない。リベリーナが女性当主に就いてくれれば、良いと願っているがそれは口にすることは許されないだろう。

 俺はこの国に対して、何も意見を言う権利も責任もないのだ。


 只、此処で第二王子が『女性当主について』の考えを知ることが出来たのは、良い収穫である。リベリーナと第二王子の結婚後、女性当主が一般化する可能性があるからだ。リベリーナは平民の教育や職業選択なども考えていた。旧体制からの変革などには時間が必要である。

 しかし、幾ら王妃になったとはいえ周囲からの理解が得られなければ、改革は出来ない。国王となった第二王子に反対されれば、会議を開くことなく案を潰される可能性もあるのだ。だからリベリーナの伴侶となり、一番の理解になる第二王子の考えを知りたかったのだ。


「クライン先輩は『女性当主』の実現には何が必要だと思いますか?」


 この話題を掘り下げる理由は無い筈だが、第二王子は質問を重ねる。全くもって勝手である。俺は質問を不用意に重ねることは出来ないが、第二王子は違う。俺が質問をすることが出来ず、答えると理解した上で質問をしているのだ。


「旧体制を破る勇気と伴侶の理解です」


 古い考え古い常識を打ち破ることが出来なければ、この国には未来がない。優秀な人物は性別関係なく、当主として認めるべきである。そして女性当主を支える伴侶の理解が重要だ。

 女性は妊娠や出産があり、それを理解し献身的に寄り添うことが必要になる。勿論、女性当主が公務を行うことが出来ない際には、代理として働く能力も求められるだろう。


「そうですか。ですが……こういう話はもっと慎重になさった方が良いですよ?」


 俺の返事を聞くと、第二王子は鋭い瞳を俺に向けた。



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