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論破してみたら一石二鳥した~乙女ゲームに入りこんだモブなので、婚約破棄の場面に乱入してみた~  作者: 星雷はやと


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 第二十三話 願い事⑧

 

「……っ、望みで御座いますか?」


 国王の発言に思わず、俺は動揺する。その所為で質問に対して質問で返してしまう。情報が少ない中で、黒幕を探すのに悪戦苦闘している所に新要素を投入しないでもらいたい。少しは俺の立場も考えて欲しいものだ。


「左様。何なりと申せ」


 俺の言葉に国王は頷き、何も気にした様子はない。その様子にそっと息を吐くが、まだ安心は出来ないのだ。

 正直に言えば、国王の『望みを叶える』という申し出は有り難い。リベリーナの安全確保や元王太子の厳罰化・イリーナの尋問に、黒幕の捜索など『望み』の候補が幾つも思い浮かぶ。だが、それを易々と受け入れるのも難しい状況にある。この他の貴族達の前でそれを申し出る当たり、誠実さを重んじているのも分かる。

 だが俺は『臣下として当たり前』という言葉を口にし、それを大義名分にして元王太子を責め倒したのだ。『望み』を簡単に口にするわけにもいかない。


「大変有り難いお申し出で御座いますが、慎んでご辞退申し上げます」


 一旦、俺は国王の申し出を断る。もしもこの場に黒幕が居るならば、二度目の俺を排除する絶好のチャンスだ。国王の申し出に対して失礼だと、喰いついてくれるならばそれも良い。俺がリベリーナの為に行動出来る時間は残り少しだけである。排除出来るものならば、今のうちに対処しておきたい。


「……それは、あくまでも『臣下として』当たり前の行動であり、礼は要らぬと申すのか?」

「はい。左様に御座います」


 国王は少しだけ思案すると、俺の考えを言い当てる。それに俺は静かに頷く。


「しかし、それでは……」

「国王陛下。私にお任せください」


 渋る国王に宰相が声をかけた。リベリーナの父親である彼が黒幕である可能性は、限りなく低い。ゲーム内では親子関係は描写されていなかったが、リベリーナが公務を手伝うぐらいなのだ。良好といえる。そんな彼が、一人娘のリベリーナを貶めることはしないだろう。それにリベリーナが罪に問われれば、フォルテア公爵家も責任を追及される。良くて宰相職を追われ、爵位の降格と領地の返却処分だろう。何も得がないのだ。フォルテア公爵は味方と判断して良いだろう。


「ロイド・クライン。我が娘、リベリーナの窮地を救ってくれたこと、心より深く感謝している。そして宰相という立場ではなく、一人の親として感謝の印として礼をしたい。この気持ちは国王陛下も同じなのだ」

「……しかし、私のような者が……」


 フォルテア公爵は、ある意味味方であるが、ある意味では敵だった。リベリーナと同じサファイアの瞳は澄み切り、彼の言葉に偽りがないことが分かる。俺の『臣下として元王太子を止めたというのが当たり前の行為な為、礼を受け取らない』というのを逆手にとり、『一個人として、親としての礼ならば受け取ってくれるな?』と圧力を掛けられている。流石は宰相閣下である。頭の回転が早過ぎる大変優秀な宰相閣下だ。

 しかし礼というのは本来ならば、お互いが気持ちよく嬉しい筈であるが今は言葉の圧力しか感じない。そんなに俺に礼がしたいのか?この国王と宰相は?確かに色々と苦労はしたが、全てはリベリーナの為である。苦ではない。

 先程までの元王太子と、その愉快な仲間たちを相手に散々暴言を吐かれていた。その為か人の好意にも警戒してしまうのは情けない話である。


「その様なことはございません! 私はクライン様に救われました。クライン様がいらっしゃらなかったらと考えるだけで怖くてたまりません……」

「リベリーナ様……」


 目を潤ませたリベリーナが、フォルテア公爵を援護する。彼女を助けることが出来たことは素直に嬉しい。

 しかし、俺に地位や権力があれば、もっと早く断罪タイムを迎えることなく彼女を救うことが出来たのだ。リベリーナが何も知らぬ内に、イリーナや元王太子と愉快な仲間たちを排除することが出来れば尚のこと良かった。今更、そのことを嘆いても仕方がない。

 それに悪党共には幾らでも言葉が出てくるが、涙ぐむ彼女に気の利いた言葉の一つも出て来ない俺はやはりモブである。


「うむ。フォルテア公爵とリベリーナ嬢の言う通りだ。ロイド・クライン。其方には礼を受け取る資格が充分にある。親としての礼を受け取って貰えるだろうか?」


 宰相とリベリーナの主張を含め国王が再び、礼を受け取るように迫る。国王と宰相、公爵令嬢。この三人を前に、これ以上断ることは出来ない。周囲もこれだけ断れば『臣下として』についても、咎められることはないだろう。黒幕の介入を期待していたが、残念ながらそれはないようだ。


「はい。陛下、謹んでお受け致したいと思います」


 モブな俺は国王と宰相からの圧に屈して、礼を受け取る返事をした。



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