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第二話 乱入

「な……なんだ!? 貴様っ!?」


 俺の乱入にルイズ王太子は、俺に指を指しながら怒鳴る。一国の王太子殿下が見ず知らずの相手とはいえ、余りにも王太子として品性にかけた態度に国の将来が心配になる。


「ご歓談中失礼致します。ルイズ王太子殿下。イリーナ・フォロン子爵令嬢。私はロイド・クライン。しがない地方貴族の三男です」


 胸に手を当てると俺は二人に向かって挨拶のお辞儀をする。顔を上げた際に軽く微笑む。俺の存在はモブ中のモブであり、それは容姿においてもモブである。一見デメリットにも思えるが、それが意外と使えるのだ。

 乙女ゲームの主要キャラクターや関係のある周囲の人間達は容姿が整っている。ヒロインを取られるのではと、主要キャラクター達は容姿が整っている者には警戒をするが、モブ顔には態度が柔らかい。単に興味が無いこともあるが、警戒心を持たれずに変にトラブルに巻き込まれることもないのだ。


 つまり何が言いたいかといえば……。


「……ふん? それで? 地方貴族が、この僕に何の用だ?」


 先程までの威圧的な態度が落ち着き、ルイズ王太子は呆れたように俺を見る。この容姿は相手への警戒心を解くのに最適だということだ。


「はい。リベリーナ・フォルテア公爵令嬢との婚約破棄おめでとうございます」


 俺は本心を口にした。


 本当にリベリーナが婚約破棄されて良かった。ヒロインの話しを真に受けて、自身で考え客観的な判断が出来ない男と結婚なんてしたら彼女が苦労するのは目に見えている。この王太子なんかよりも、リベリーナのことを一番に考えてくれて優しい男が彼女に相応しい。

 しかし婚約破棄を大衆の面前で、断罪と共に行われたのは許される行為ではない。


「ふっ……。地方貴族にしては利口じゃないか」


 すると王太子は下卑た笑みを浮かべ、更に警戒を緩める。


 俺が彼の行動を理解し支持しているように勝手な解釈をしているようだが、これは俺の計画の罠への入り口である。


「ありがとうございます。ルイズ王太子殿下。イリーナ・フォロン子爵令嬢は大変お似合いだと思います。ですが……その気になることがございます」

「……? なんだ?」


 ある意味で二人はお似合いのカップルだと嫌味を含め、罠へと獲物を誘う。


「いえ……その……」

「なんだ? はっきりと言え! 今日は僕とイリーナにとっての素晴らしい門出だぞ!」


 わざとらしく言いづらい態度を取ると、痺れを切らした王太子が叫ぶ。罠に掛かった。俺は口元が緩まないように必死に耐える。これでも俺は演技派なのだ。


「……分かりました。ルイズ王太子殿下の御許しが出ましたので、気になることをお伝えします」


 やるなら完璧にする必要がある。俺は保険をかける為に、良く響くように声を張る。この場で一番発言権を持ち、地位が高いのはルイズ王太子だ。その王太子から許可が出た。これで、この後の俺の発言は『ルイズ王太子殿下が聞きたいから発言した内容』ということになる。

 つまり誰も俺の発言の邪魔は出来なくなったのだ。勿論、王太子殿下自身が邪魔をすれば、その話の内容が都合の悪いものとなり王太子の首を絞めることになる。俺は大義名分を手に入れた。


 さあ、楽しい楽しい反撃の開始である。



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