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論破してみたら一石二鳥した~乙女ゲームに入りこんだモブなので、婚約破棄の場面に乱入してみた~  作者: 星雷はやと


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第十六話 願い事①

 

「どうですか? イリーナ様。真実が明らかになりましたが、貴女を信じた者達に何かかけるお言葉はありますか?」


 漸く邪魔者であるスケルにエマ、王太子を黙らせることに成功した。俺は手札が切れたイリーナを更に煽る。

 リベリーナが冤罪であること、イリーナが仕立て上げた数々の事件が明るみに出た。しかしイリーナをこのまま逃がす気は更々ないのだ。直ちに王国騎士団に捕らえてもらい、然るべき処分を受けて貰わなければ気が済まない。だが、この場に騎士団は居ない。学園長や職員その他にも有力者が居る為、イリーナの所業が有耶無耶にされることはないと思いたいが念には念を入れる。つまり俺はこの場においてイリーナに更に罪を犯してもらおうと考えているのだ。

 過去の事件は俺の証拠によって、イリーナの捏造であることが証明されている。だがこの場で悪の根源を捕えなければ、リベリーナへ再び毒牙が向く可能性があるのだ。仕留めるならば確実にするべきである。イリーナに反撃を許す時間は与えない。その為に確実に罪に問われる罪を犯してもらうのだ。そしてその罪の現行犯で捕え、リベリーナへの所業を牢の中で問いただす。捕らえてしまえば下手な動きは出来なくなるからだ。それに他に関係者が居れば、イリーナは減刑と引き換えにその者達の名前を差し出すだろう。

 優位な立場に居た筈が、気が付けば断頭台が脳裏にちらつくような状況に追い込まれたのだ。きっとイリーナは怒り心頭の筈だろう。残念ながら、俺の怒りが勝る。


「……っ、あんたの所為よ!!」

「おや? 子爵令嬢がそんなに声を荒げては……」


 イリーナは豹変したように声を荒げて、俺を指差した。その行動には令嬢らしさは欠片もない。彼女は俺への怒りで周囲が見えなくなっているようだ。王太子や周囲の人間達がどんな表情をしているのか分からないようである。


「全て上手くいっていたのに!! なのに! あんたが出てくるから!! 全てぶち壊しよ!! あんたなんかが出てこなければ!! 私が、私が王妃になれるはずだったのに!!」

「いえ、怒りに我を忘れ立ち回る貴女に国母は無理です」


 癇癪を起こした子どものように感情任せに怒鳴り散らし、地団駄を踏むイリーナ。化けの皮が剝がれていることにも気が付いていないようだ。血走った目で俺を睨む。いい感じに煽れているようだ。


「違う!! 黙れ!! あの方が言ったもの!! 私が王妃になるのが正しいって!!」


 俺の否定から逃れるように、更に言葉を重ねるイリーナ。すると気になる単語が出てきた。『あの方』ということは、つまりイリーナはそいつに操られた駒だということだ。だが子爵令嬢に指示を与えることが出来るということは、それよりも上の階級の人間である。如何やらイリーナは悪の根源ではなく、それに利用された哀れな捨て駒なのだ。

 イリーナがまだ必要な駒であれば、俺がリベリーナの無実の証明を行っている際に割り込んでくる筈である。だがその救援は未だにない。要するに黒幕は上手く行けば利用するが、下手をすれば切り捨てるのだ。ならばイリーナから黒幕の名前を聞き出すのが最優先である。何故ならばイリーナから情報が洩れることを恐れた黒幕が、イリーナを処分する可能性があるからだ。


「黙れ。罪の無い人間に罪を捏造して貶める王妃など『正しい』わけがあるわけないだろう。恥を知れ」


 敬語も無くし、イリーナを強く否定する。より怒らせ黒幕の名前を聞き出す目的だが、リベリーナを貶めることが『正しい』などと、戯言を許す気はない。


「う、五月蠅い! 五月蠅い!! おまえなんかいなければ!!」


 イリーナは俺の思惑通り激情に駆られ、右腕を振り上げた。

 黒幕の名前を勢いで話してくれれば良かったが、この場での罪づくりが先になったようだ。


 俺は左頬に来るだろう痛みと衝撃に備えて、瞼を閉じだ。



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