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論破してみたら一石二鳥した~乙女ゲームに入りこんだモブなので、婚約破棄の場面に乱入してみた~  作者: 星雷はやと


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第百十四話 導き⑥

 


「これは……」


 木箱を開けると、白い布に包まれた塊が収まっていた。白い布には光沢があり、手の甲で触れるとシルクであることが分かる。


「陶器か?」


 シルクの布に包まれた物を守る様に、木箱の中には紫色の布が敷き詰められている。如何やら木箱の中身は陶器のようだ。

 一級品の木箱に収まる陶器となれば、その価値は計り知れない。万が一にも破損すれば、弁償するのは難しいだろう。その為、これだけ厳重な梱包がされているのだ。


「……確かめてみるか」


 中身の予想はついているが、如何にも釈然としない。木箱に丁寧に梱包されていたからと言って、陶器だと断言するには不十分だ。

 俺は布に包まれた中身を確認することにする。手を軽くはたくと、スーツのズボンで残りの土を拭う。土が乾いていた為、手の汚れは直ぐに落ちた。


「さてと……っ?」


 慎重に白い布に包まれた塊を持ち上げた。すると陶器とは違う感触に思わず、手を止める。


「……陶器ではないのか」


 矢張り先入観で、物事を判断するのは良くない。手に取った白い包みは想像よりも柔らかいのだ。布やパンの様な柔らかさではなく、適度な強度はある中に柔らかさを持ち合わせている。そのことからも布越しだが、包みの中身は陶器ではないことが分かった。


「仕方がないな……」


 布の中身が陶器ならば、木箱を元に戻すつもりだった。しかし中身が陶器で無いならば、確認をしておいた方が良いだろう。俺は白い包みを裏返し、中身を確認しようとした。


「……っ、そういうことですか……」


 裏返した白い布の部分には、家紋が刺繡してある。それはハリソン伯爵家の家紋だ。


『面倒な駄犬』こと、ハリソン伯爵も王城で行われるパーティーに招待されている。私物が王城の敷地内に有ってもおかしくない。しかし来賓は用意された客室へと案内される筈である。この様な森の中から、私物が発見されるのは不自然だ。

 家紋入りの布を使用していることからも、この塊を埋めたのはハリソン伯爵だろう。彼らが登城したのは昨日の昼頃だ。この品は、その昼頃から昨晩にかけて埋められたことになる。麻袋が真新しいのにも納得だ。


「嫌な予感がするな……」


 昨日の出来事を踏まえた上で、あの『面倒な駄犬』が動いたということが重要である。何か発見されては困る何かを、一時的に此処に隠したという可能性が高い。

 俺には情報が不足している為、正確なことは分からないが陽動作戦と関係がある物と考えた方が自然だ。


 つまり包みの中身は、クロッマー侯爵関連の物である確率が高い。このタイミングで、黒幕関連の物を見付けることが出来たのは幸運だ。巡回の騎士たちに、見つかるリスクがあるというのにわざわざ隠した。それ程までに、隠したい物なのだろう。絶対的に厄介な物である。


 しかし、逆に言えばクロッマー侯爵の弱みを握ることが出来るのだ。好機である。


「一体何を企んでいるのやら……ん? これは……」


 クロッマー侯爵関係の物と判明した為、再度注意深く木箱の中を確認する。すると箱に敷かれた紫色の布に、文字が型押しされていることに気が付いた。白い布を持ち上げたことにより、箱底部分の布が見えたのだ。そこには布に文字が押し付けられた跡があった。


「はぁ……悪趣味だ……」


 本来この木箱に収まっていた贈り物に、ある文字が刻まれていた。その品物の重さにより布に押し付けられ、底に敷かれていた布に文字が写ったのだ。その文字が読むと溜息を吐く。


 贈り主は愚かである。だが、送られた者はもっと愚かだ。


「……二重底なのか?」


 底にある布を調べていると、外観よりも中が少しだけ浅くなっていることに気が付く。底の部分に何かあるのだろう。紫色の布を出すと、底の部分を調べる。

 すると底の隅に小さな穴が開いていた。自然に開いた穴ではなく、人工的に開けられた穴である。俺は近くに落ちていた枝を拾うと、その穴に押し込んだ。



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