4-10,素敵なお仕事
次→7月22日(火)20時
最後にプチ宣伝がございます
あっ
と思ったときにはもう遅かった。
どったんばったん、どんがらがっしゃーん、なんてSEがよく似合う格好で、二人はまとめてバランスを崩す。ここが平坦になっていて良かったと、心から思った。さっきまでの急斜面でこれをやっていたら、恐らく「おむすびころりん」タイム突入だったろう。
「いったぁ……?」
ん?
とっさに声が出て自覚するが、思ったほど体を打った感触がない。頭を包み込む手のひらと、骨の感触がする。
(状況把握……状況把握……)
なんか視界が暗い。重い。窒息するほどではないが若干呼吸がしにくい鼻を無理やり動かすと、至近距離から良い匂いが飛び込んできて、その濃さに咽せそうになるほどだった。汗ばんでいるのも良き。
「おッ、おゆきち?」
耳に熱い息がかかり、少し震えた声が耳たぶに当たる。
(あ。理解、理解)
嫁だ、この重いのは。
(理解、理解)
「おゆ、きち?」
むにゅ
「おにゅっ!?」
理解。柔らかい。
「どっどどどどこ触ッて、って、ひゃん!?おおおおゆきち!?何なの?その真顔は何なの!?」
「良い……匂いね。椿油?」
「情緒どうなってンの!!!?」
倒れる際に、身を挺して私の頭を守ってくれたスパダリは、シュバっ!と私を遠ざけ、ぷるぷる震える。
「お、おゆきちのしゅけべ……」
可愛すぎるやろがーい。
完敗である。ついでに乾杯である。Cheers.
「その、まずはありがとうね?あんたもあんたで色々考えて瓶を取ってくれたんだろうし」
「もうどうだッて良いわ……」
オーケー。ひとまず片はついたようだ。
ぱきっ
「ん?」
そういえば、やけに背中がスースーする。首筋もいつもより汗ばんでいる感じだ。
(ん?汗?)
そういえば、やけにいい匂いがする。燧石の髪の匂いとは別に、なんだか飲みなれた、お酒のような……。
「あ」
すっかり忘れていた重大事案を思い出し、私は薄目で振り返る。そこでは、
「あ、あはは……」
せっかく拾った瓶の全てが、見るも無惨に砕け散っていた。
「た、たーかおー?」
背中から本物の汗が滝のように押し寄せてくるのを感じながら、私はすっかり忘れていた三十七メートル上のタコ指人外に声をかける。
「やっほーラクシュミィ!ようやぁぁぁっと思い出してくれたかな!?」
「声デカ」
「あ゛ー……追加で二百万回死んだよ。僕に新たな扉を開けと?」
「声ちっちゃ……なんて?」
枝の上で器用に寝そべりながら、指だけグネングネン動いているのが遠目に見える。
「それにしても、お二人さん大変だねぇ」
「え?何て?」
高尾が、またも脈絡のない言葉を投げかける。
「応援してるよぅ、つって。じゃ、また薬王院でね」
チラリとこちらを見下した高尾は、一回転して枝から落下する。
ばさり
葉が擦れ、枝が大きくしなる。
そのしなりが元の位置まで戻るよりも早く、投げっぱなしの高尾の体は繭玉に包まれ、消えた。
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書いたり書かれたりしました。
富良原きよみです。
では宣伝をば。
REALITY様という配信プラットフォームで読書会配信に挑戦してみます。
とりあえず、三連休の24時~25時予定で、Xでいただいた小説を片っ端から読んでいきます。
ぜひぜひ、積み残している小説を持ち寄って読書タイムと洒落込みましょう。(雑談も歓迎)
詳細は私のXアカウントを確認してください。
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カクヨムでも投稿予定です。同じ名前です。好きな方で読んでいただけますと。
執筆用のツイッターはじめました。(@Huraharakiyomi)
ここまで読んでいただける皆様ならきっと仲良くなれると思います。
では。
配信者という響きに興奮してすっかりTOEIC勉強をサボっている富良原より




