3杯目 新たな仕事はメイドですか!?
女の人に言われた通りに車に乗る。小さい頃から、知らない人にはついていってはいけないとか言われてたが、今回は乗るしかない。この旨い話に!
◇◇◇◇
「そうだ、私は君の元の名前は分かってるけど、まだ自己紹介はしてなかったね。カフェでもちょろっと言ったけど。私は、黒崎ホールディングスの社長の黒崎 小百合だ。よろしく」
「わ、私はマリアです…元28歳ブラック企業勤めの…」
社長の後にブラック企業に勤めてたとか言うの公開処刑でしょ。
「あれ、名字はまだ決めてないの?」
「はい、取り敢えず名前だけ調べて決めたので」
「ふふっ、そうか。ちょうどいいから、単刀直入に言うよ。マリアちゃん、私の養子にならない?」
「え、養子?」
「そう養子」
手を握られて真剣な感じだったから一瞬告白でもされるのかと思ったよ。でも、急に養子にならないかって言われてもな。
「気が乗らないのは分かるよ。でもね、養子になってくれた方が身分証を作ったり、いろんなことをする時に楽なんだよ。ね、いいでしょ?」
「えーと…ちょっと考えさせてください」
「いいよ、よく考えてくれ」
身分証を作って貰えるのはありがたいけれど、どこか少し怖いな。でも、断ってもどうしようもないからしょうがない。よし、ここは腹をくくろう。
「…養子の話、お願いします」
軽く頭を下げる。
「了解だよ、今日から君は私の家族だ」
満面の笑みの小百合さんに抱きしめられる。
「か、家族…ですか…」
「おや?どうして泣いているんだい?」
「え?あ、ほんとだ」
どうして涙が流れてるんだろう。20歳になった頃には、もう両親が亡くなってたから長い間、抱きしめられることなんてなかったからかな。
「…すみません、もう大丈夫です。……!?」
離れようと思ったら少し強く抱きしめられた。
「いいんだよ、泣きたい時は泣いて」
「優しい声でそんなこと言われたら…涙が止まらないじゃないですかあ…」
このまま私は、だいぶ長い間小百合さんの胸で泣いていた。今思えば、少し恥ずかしかったな。
◇◇◇◇
小百合さんに肩を叩かれて目を覚ます。泣き疲れて寝てしまったみたいだ。
「たびたびすみま…」
寝てしまったことや泣いてしまったことで迷惑をかけたかと思い謝ろうとしたら、人差し指を口に当てられて止められた。
「そこは『ありがとう』と言ってくれればいいんだよ、家族なんだから」
「ありがとう…」
「あ〜、やっぱり可愛いなぁ!」
「うゆっ!?」
急に抱きしめられたので驚いて変な声が出た。でも、全く嫌な感じはしない。
急にコンコンっと窓をノックする音がした。そして、後ろのドアが開いた。
「社長、どうぞ」
「ご苦労さま。じゃあマリアちゃん、行こうか」
「あ、はい!」
小百合さんに促されるまま車を降りてビルの中に入る。
◇◇◇◇
「凄い豪華なビルですね」
あまりの凄さに圧倒され、率直な感想を口にする。
「でしょ!お気に入りなんだよね。あ、エレベーター来たよ」
エレベーターに乗る。エレベーターの中もしっかりしてる、素直に関心するな。
「君は今日からここに住んでもらうよ」
「分かりました。でも、会社とか借りてたマンションのこととかはどうするんですか?」
「そこは私が手を回すから安心してくれていいよ」
これは、安心していいのだろうか…。
「さっ、着いたよ」
エレベーターを降りてそのまま歩く小百合さんの後ろをついて行く。
しばらく歩いて、一つの部屋の扉の前で止まった。
「今日からここが君の新しい家だよ」
扉が開かれ、中を見渡す。
「うわー!綺麗で広いですね!」
「うんうん、良い反応だね」
「でも、こんなに良い待遇をしてくれるなんて、何か裏がありそうで怖いですね」
「HA!HA!HA!」
「…いや、不安になるんですけど」
「そんなことはそこら辺に置いといてさ、働く場所に関しての説明をするからそこの椅子に座って待っててくれ。飲み物も持ってくるよ」
ついに働く場所に関しての話か、どんな場所で働くことになるんだろうか。
◇◇◇◇
「お待たせ、ブラックコーヒーは飲める?一応砂糖とかもあるけど」
「大丈夫です。ブラックの方が好きなので」
口が乾いていたので、コーヒーを少し口に含む。
「では言うよ。君の仕事は…メイドだ!」
「メイっ!?ごほっごほっ!」
私は、驚いてコーヒーを吹き出してしまった。
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