第3話 ファンタスマゴリア
赤い赤いリンゴ 落ちてきた
手のひらの中 とても
美味しそうで
かじれば きっと甘くて
頬がとけちゃうんだろうな
傍に置かれた ヌイグルミ
本棚にはたくさんの本
飾り付けられた お部屋
お姫様みたいな ベッド
お外は歩けない
だけど 冒険も 旅行も
たくさん 知ってるんだよ
お友達が 話してくれた世界
私も 見たかったな
真っ黒で 大きな雲
空にかかって 見えなくなってる
でもその向こうで 輝いてるよ
お日様は
いつでも そこにいるから
春が巡って たくさん笑った
夏がやって来て たくさん遊んだ
秋がくれば 色んな話して
冬が来たなら お別れ… だよね
今から話すよ 急だね ごめんね
でも 大切な事だから
ありがとう そして さよなら
また会いたいな 遭えたらいいな
たくさん
たくさん
楽しかったよ
だから 言うね
またねって 笑って
これは永遠のさよならじゃないんだって
「ストーリー」
この世界で生き残っていた、たった一人の友達。
生かすために、この世界の針をすすめよう。
重い病を患っている私は、明日の世界では生きられないけれど。
でも、その時の私は知らなかった。
本物の人間が、他にいた事に。