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俺の魔王道  作者: K.DAMEO
はっははびより

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6/8

ミギ・ザ・ロック―2―

「……ふむ」



聞いた話は単純。



改めて停戦の交渉の話し合いを王国近くの村でする為に、魔王軍には行軍してきてほしいとのことだ。



「今この場で俺が了承するだけじゃダメなのか?」



俺の問いに、右・スタイラインは小さく頷く。



「面倒なのは承知。ですが、民意に働きかけるにはパフォーマンスも必要なのです」


「パフォーマンス?」


「はい。私もできることなら、この場で魔王に了承していただき終了、と、したいところですが、今の民は魔王軍をそもそも知りません。脅威を感じていない所に停戦が成ったと言っても、王国への信頼は回復できません」


「ああ。まあ、そうなるか……。そもそも、あんたの国とやり合ったことなんて無いしな」


俺の言葉にサエキさんが咳ばらいを一つ、割り込んでくる。



「スロト王国の初代スロト王……彼と我が初代魔王様とは、その昔、攻め攻められの激戦をしておりました」



全く聞かされてない事実だ。



……でも、そうか。俺、まともに城の事やってないし当然だ。



「ああ、そうなんだ? つうか、今のスロト王って何代目?」



俺の問いに、右・スタイラインは一瞬だけ目を伏せた。



「……十七代目です」


「十七代目か。じゃあ、初代とは関わりが薄い――」


「十七代目ですが……中身は“ゼロ代目”と言って差し支えないでしょう」


「……は? ゼロ代目?」


右・スタイラインは深く息を吐いた。


「王は……公務を放棄し、酒と女と贅沢に溺れて城から出ず。ともなれば、当然、民の声は一切聞かず。そして……国の財は減り続け、治安は悪化し、隣国との関係も悪化の一途。……我が国ながらお恥ずかしい限りですが……ここまで酷いのは、歴史を辿っても他にありません……」



「ほう……それで、ゼロ代目か。代とも数えたくない、と」



「尻拭いも、正直申し上げて……限界です」



その言葉には、ただ、疲労が滲んでいた。



「魔王様……」


サエキさんが静かに口を開く。


「私も、スロト王国の話は耳にします。ここ数年で急激に国力が落ち込んでおり、このままでは、自壊するのは時間の問題、と」


「……なるほどな」


右・スタイラインは下を向き、顔を歪ませる。


「そこの骸骨兵が言う通り。……我が国の寿命は、もう、僅か。……だから、せめて、停戦の“形”が必要なのです。魔王軍と堂々と交渉できる力はまだ残っていると、民に希望を抱かせる意味でも。……それを見せる必要がある」


「ああ。それが、パフォーマンスってことね」


「はい。……民は、今の堕落した王の言葉より“目に見えるもの”を信じます。魔王軍が来た。それでも国は滅びなかった。そして交渉をしてみせた。――その事実が、国を救う一歩になるのです!」



そういう事か。いやぁ………。



「大変なんだな。そりゃ、右手も臭くなるか」



「そうです。風呂すらまともに―――って、うぉおおおおおい! 何言わすんだ! やめろぉぉぉぉ!」
















―――スロト王国近く・マメロ村。


朝のマメロ村は、いつも通りのんびりしていた。


畑を耕す者。

井戸端で世間話をする者。

子どもたちは走り回り、犬は寝ている。


「いい天気だぁ。のう」


「ほんとほんとぉ。城の方は馬鹿王で大変そうだぁがやぁ。うちらの方まで統治進んでねえのが救いでぁ、ねぇあ」


村人の老人たちは微笑んでいた。


だが、その穏やかな時間は破られる。



「……ぬぁ? なんでぇ、あれぁ」


村の外れの道に、黒い影が揺れた。


土埃かと見まがう。だが、明らかに違う。


「おい……あれ……」


「おお、なんでぇ、あれぁ、旗ぁ……」


村人たちは次々と畑から顔を上げ、

道の先を凝視した。


黒い旗。

ドクロ。

炎。

稲妻。

意味不明な英字。

そして、なぜかギターを持った骸骨の絵。


「……なんでぇ、どこの軍でぇ?」


「なんか、恐ろしいやぁ、ねぇ。あれぁ……」


旗の後ろには―――。


骸骨兵の軍団。

緑の髪の巨大な男。

そして、中央の謎の乗り物に乗って煙草を燻らせてる男。


「ま、魔王軍じゃぁぁ!!」


「逃げろぉぉぉ!!」


「村が滅ぶぞぉおおお!!」


マメロ村は一瞬でパニックに陥ったのだった。













―――同時刻・魔王軍。


「……なんか、騒いでるな。もっと、湿気てるかと思ったが、近隣の村はまだ活気があるじゃないか」


俺専用の乗り物―――“魔王ムーン”とかいう、誰が命名したのか分からないが、くそダサい名前、しかし、乗り心地は良い神輿みたいなでっかい押し車に座りながら、煙を一吐きする。



「ふぅ~……」


周囲には骸骨兵が整列し、その横をグルドが胸を張って歩き、さらにその横でツバキが姿勢を正して歩いている。


「おぶっ……おぶぅ……!」


そういう時期なのかね。歩かせるのはどうかと思い、乗れって散々言ったが、ツバキには珍しく、頑なに嫌がって嬉しそうにずっと歩いている。


「魔王。今、村着いたんね?」


椅子の傍の布袋から、ミリーの声がする。


「ん? ああ……なんか、目的の場所近くみたいだぞ?」


「そうなんね。なら、よし、なんね」


「おう。……つうか、お前、それどういうことなの?」


「ん? どういうことって、どういうことなんね?」


質問で返しやがるのか、こいつめ。


「いや、お前。なんで、外の風に当たると、その……」


「砂になるかってことなんね?」


「ああ。ビビったぞお前。外出た瞬間、急にサーって流れて、顔半分消えてんだからさ」


「引きこもりを極めたらそうなるんね」


「そうか……」


んな、わけあるか。



と、思ったが、面倒だからつっこむのはやめる。そんな事よりも、俺にはもっと気になることがあるからだ。



黒地にドクロ。

炎。

稲妻。

ギター。

謎の英字“DEATH☆KING”。


「……なあ、サエキさん」


「はい。どうなさいました? 魔王様」


「いや、旗さ、なんていうか、ロックすぎない? 魔王軍ってこんな感じなもんなの?」


サエキさんは一瞬だけ沈黙し、小さくため息をついた。


「コメントは差し控えますが、一つ申し上げるとすれば……作ったのは、グルド様です」


「うっわ! ぅうっわ! 絶対なんか全て間違ってるやつっ!」


俺は即座に叫び、それに気づいたのか、グルドは振り返り、満面の笑みで親指を立てる。


「わぁっはは! かっこいいだろぉぉ!」


「ちっ……くそが」


いや、実際、ちょっとカッコいいとは思った。なんか90年代のヘビメタみたいで、逆にありかと。ただ……グルドと分かったら、なんかむかつく。全てがむかつく。


「バラとピストルも、あったらよかったんね」


「古っ。いや、有り無し抜いても、バラとピストルと骸骨は古いっ。好きだけどなっ。でも、古いっ」


ツバキは旗を見てテンションが上がったのか、


「おぶぅぅぅぅ!!」


叫びながら旗の後ろを全力で追いかけていた。


教育には良くないとは思う。でも、旗以前に骸骨に囲まれて毎日すくすく育ってるから、もうなんか手遅れだし、いっか。


「ふぅ……そろそろ、か」


煙草を咥え直し、迫りくるマメロ村を見据える。


「さぁて、どうなるやらな」













―――マメロ村の外れ。


予定より少し早く到着したようだ。

骸骨兵たちは整列し、グルドは胸を張って仁王立ち。

ツバキは姿勢を正して前を見ている。


「…………」


俺は魔王ムーンの上で煙草を咥えながら、周囲をぼんやり眺めていた。


「……そろそろ、時間なんだけどな」


右・スタイラインが来る気配はない。


「……ハメられたか?」


嫌な予感が背筋を走った、その瞬間だった。




―――ガサッ。



草陰が揺れた。




「……ん?」


次の瞬間、四方八方の草むらから―――。


「うぉおおおおおおおおおお!!」



「かかれーー!!」



兵士。兵士。兵士。兵士。兵士。


大量のスロト兵が、武器を構えて飛び出してきた。



「はぁ……やりやがったな。……ミリー」


声を掛けると、布袋の中からミリーの声が返ってくる。


「魔王、呼んだんね?」


「ああ。……なんかやばいことなってるんだけど、敵の時間だけ止めれるか?」


「容易いんね」



布袋から、白い手だけがスッと出る。




そして―――。




パチン。



指が鳴った。


その瞬間、草陰から飛び出した兵士たちが、ピタリと動きを止めた。



剣を振り上げた者。

叫び声の途中の者。

転びかけた姿勢の者。



全ての襲ってくる兵士の時だけが止まっていた。



「……よし。じゃあ、全員の武器防具、全部奪っちゃって」


命じると、骸骨兵たちは一斉に動き出した。


「了解であります!」


「おらぁ、脱げぇぇ!」


「楽勝のよっちゃんでぇ! あ? よっちゃんどっから出てきた? まあ、いっかぁ!」


骸骨兵たちは、止まった兵士たちから、武器、防具、兜、盾、靴、腰袋、ベルトまで容赦なく剥ぎ取っていく。






―――30分後。



広げた巨大な布の上には、

兵士たちの武器防具が山のように積まれていた。


剣。槍。盾。鎧。兜。

なぜか弁当箱や財布まである。


「おぉぉう! 全部包んだぁぁぞぉ!」


グルドが布をギュッと縛り、その巨大な荷物を魔王ムーンの荷台にドスンと乗せた。


俺は煙草を一吐きしながら、その光景を見下ろす。


「……結局、こうなるわけね」


ミリーの声が布袋から響く。


「なにかあったんね? あの右の人ん」


「さぁ、な。ま、見に行けば、分かるだろ」



裏切るような奴に見えなかったのは確かだが……ま、あーだこーだ憶測を巡らしても意味はない。



向うのみだ。



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