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俺の魔王道  作者: K.DAMEO
はっははびより
3/3

ノコリカス

約30分後―――。




「ふぅ〜……いやぁ、ごめんごめん」



玉座の椅子に座りながらミリーへと謝る。



「トイレの中まで連れて行ったんね?」



「いや、そこまではしてない。トイレの前までだ。流石に女子便まで入ってくのは違う気がしてな」



「うーん? じゃあ、結局、ツバキちゃんはトイレの前で漏らすんね?」



「いや、そうはならんよ。ミセス・ゴメスさんも持ってきて、『ツバキのトイレ頼む』って紙握らせといたから」



まあ、秒の余裕すらない危機的状態なら……いや、考えるのはよそう。大丈夫だ。多分。



「まあ、危機的状態なら仕方ないんねー。あの子はまだ赤ちゃんなんだもんねー」



「おい、こら。ちょこちょこ心を読むな、さっきから」



「えーへへへー。でも、楽しいんねー。魔王の心ねー」



「ねーじゃない。やめなきゃ、ピーマンの事ばかり考えるぞ」



「それはいやんねー……。ゲロ吐くんね……」



ピーマン。それはトウガラシの仲間。いや最早ファムリィである。

料理に一度入れたならば、主張は強めであるにも関わらず、同様に調理された食材を殺すこともない。

ピーマン。彼は最高の引き立て役者である。



「うっ……うごろぉぇぇあqwせdrftgyふじき」



「ふっ。だから言っただろ、ピーマンの事考えるって」



「ま、まお゛ぉ……あんだぁ……まお゛ぅんねぇ……」



「いかにも。俺は魔王だ」



「うぅ……私はぁ、一応女性なんねぇ……。今、思いっきりゲロったんねぇ……」



声的にそうだとは思ってたが、やっぱり女だったんだな、こいつ。



「んでさ、二人で話したいことってなんなんだ? そろそろ話してくれると助かるんだが」



「あぁ、それなんね。じゃあ、言うんね」



「うむ。頼む」



「話はんねー、ツバキちゃんの事なんね」



ツバキの事か……。なんだろう。



「その前になんねー。魔王は魔力のノコリカスって、ご存知なんねー?」



「いや、知らん。魔力に残りカスとかあんのか?」



「あるんね。まあ、私が勝手に言ってるだけで、他に名称があるかもしれないんね」



「ほう。まあ、なんだかややこしくなんのもあれだから、お前の言う残りカスってので話を進めてくれ」



「了解なんね。では、まず、魔法ってあるんね。それを使うんね。じゃあ、残りカスが出るんね」



「どーこーにっ!? もう早速わかんねえよ!」



「だめんね魔王っ。聞くだけじゃだめんねっ。感じるねっ」



ということで、再びミリーが説明してくれてようやくわかったのが、仮に誰かが炎の魔法を使ったとする。



『ウンブルルファイヤー!』



すると、イナガワさんに当たったとする。



『熱いなーやだなぁー熱いなぁ』



とすれば、炎の魔法が当たった場所。そこから、魔法が消え去った後も、煙のようにか細い魔力の残りカスが上に向かってシュルシュルと昇って見えるのだそうだ。



「ずっとではないんけどね。少しの間だけ残って昇って消えるんね。だからカスなんね」



「ふぅ〜ん。そうなんだな」



「魔力はその個体の中で生成されるんね。そこで属性に変換して放つんね」



「ほう。まあ、なんとなく想像はできるな」



「その個体、術者の体内ってところが大事なんね」



「うん? もう分からん。どういうこと?」



「術者各々が生成して放つということはんね、各々のカスの色が違うということなんね」



「ああ、そういうことぉ」



グルドであれば、オレンジ色。ミリーだと灰色。そんな風に人其々、魔物其々、皆色が違い、同じ色の者は居ない……ということはないそうだが、まあ、大体は数人程度なら被ることが無いそうだ。



「面白いもんだな。俺も魔法使えたらどんな色なんだろう」



「魔王は絶対茶色なんね。臭そうなんね」



「はっはっは。ぶん殴るぞお前」



誰が臭そうやねん、アホが。



「それでなんね。ツバキちゃんが来た日の事なんね」



「ああ。あの日な」



「私も見てたんね。あの日。ここからずっとずっと、見てたんね」



「怖くなるからやめろそういう言い方。お前はほんとにずっとそこで隠れてるから洒落ならん」



でも、そうか。グルドが兎に角バカやるから存在すら忘れてたな、あの日は。



「それでなんね。サエキさんが箱持ってきた時から、私には微かに見えてたんね」



「ん? 見えてた?」



「うんね。ツバキちゃんの入ってた箱、そして、床に置かれてからツバキちゃんの身体にも、魔力のカスが残ってるのが見えてたんね」



「え、それって、じゃあ……」



よくは知らんけど、魔法で送られたとかそういう感じ……か……?



「そういう感じなんね。サエキさんがツバキちゃんを運んできたのは見つけてすぐだったんね、多分。でも、ここまで来てカスが残ってたって事は相当な魔力が使われた証拠なんね」



「転移魔法みたいなやつか」



「それなんね。転移なんて魔法はそもそもがかなりの魔力と魔法に精通していないととできないねんね。そして、あそこまで色濃く残ってたというのは、かなり遠くから送られた証拠でもあるんね」



「ほう。そうか……。で、その残りカスから誰とかって判別できたのか?」



「それは、う〜んなんね。わかると言えばわかるんけどね……」



なんか、急に歯切れ悪いな。まさか、身内とかなのか?



「なあ、ミリー。仮にこの城の中の者とか、城に関係する者だったりしても、とりあえずは咎めるとかしないからハッキリ言ってくれないか?」




本当にそんなつもりはないし、理由はまあ気になる所だが、咎めることかどうかも分からんわけで単純にそう言ったまでだった。



「そう。そうんね。じゃあ、魔王にはちゃんと言うんね」



だが、ミリーにはその言葉だけで勇気付いてくれたようで、はっきりと、誰のノコリカスだったかを口にした。





















「私のだったんね。ツバキちゃんに付いてたノコリカス」










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