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俺の魔王道  作者: K.DAMEO
はっははびより

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2/7

で、魔王ってなにするん?

「ん……ぁぁ……朝、か……」


ダルいと思いながらもゆっくりと身体を起こして、小窓の趣味の悪い紫のカーテンを左手で乱暴に捲る。


「…………」


視界に飛び込んでくるのは、何処までも続く枯れ果て黒ずんだ大地に紫の空と稲光をあちらこちらで光らしているどす黒い雲。


「朝……なのか……?」


なんやかんやで、この城に住むようになって1ヶ月以上は経っていて、本来ならどんな場所でもそうだが、一ヶ月もいれば少しは慣れてくるもんだが……慣れん。生活や同居人には少しは慣れた方だが、この景色から朝か夜かなんてのを読み取ることは未だにできん。というか、一生無理だ。見分ける方法をサエキさんに聞いたことはあるのだが……。



『紫の、あの部分ありますよね』



『え、どの部分?』



『あそこでございます。あの……ほら、一瞬今見えた水色部分です、空』



『え、ちょ、わっからへん。どこ?』



『えー……そうですねぇ……今あそこの雲が動きまして、一瞬、空が水色になっている部分があったんですが、それが見えたならば、今は朝、7時くらいですな』




俺は早々に空で時間を知ることを諦めた。そんな流れ星みたいな見極めかたしかできない空を極めようとは思わん。



「7時半か……」



それに、電波もたまに繋がり、時間も画面を見たらすぐ教えてくれる文明の利器である携帯があるので、実際は困らなかったりする。ただ、やっぱり、元の世界に居たときのように、空を見て『あ、夕方か』とか『朝、か』なんてこともやってみたくなるもんだったりはする。でも、何度しようとここでは無理。ただ、癖でやってしまう事は多々ある。今みたいに。



「はぁ……行くか……」



少しばかり思い腰を上げると自室を後にして、向かうは玉座の間だ。


















「…………ん?」


玉座の間に着くと、扉に違和感を感じ足を止める。


「……あ、欠けちゃってるのか」


右側扉の右下部分、そこに小さな空間があり、付近の床には単1電池くらいの大きさの白い物が落ちている。


「……おぉ、やっぱ嵌まるね」


白いものを扉の空間に嵌めてみると見事にぴったりフィットだった。



「え、あ、つうか、キモっ。普通に触っちゃったよ、おいっ」



これ、この扉、骨だぜっ!? 人の腕の骨でできてんだよぉ!? どうする!? 普通に触ったよ!?


「うわぁ……怖っ。俺、感覚麻痺してるわっ……」


この城自体殆んど骨でできてるし、同居人殆んど骸骨だし、骨が当たり前になっちゃってるよっ。


「あぁ、やばいやばい」


何をかは分からないが、気を付けないとと思いながら、いそいそと玉座の間の扉を潜る。



すると、そこには、というか、そこにも骨だ……。

床に壁に天井、全てどこぞの誰かの髑髏を敷き詰めてできている。いや、部屋だけじゃない、玉座もそう、部屋を照らす照明もそうだ。いや、そうだったと言うべきか……。床は踏む度にガチガチ言うし、感触も嫌だし、なんかよく足グネるし、グルドはよく床を突き破って落ちていくしで、これじゃダメだと、倉庫にあった小汚ない木の板を床に敷き、その上にこれまた倉庫にあった昔攻めた城からかっぱらったらしい小汚ない赤いカーペットを敷き、玉座もこれまた倉庫にあった無駄に煌びやかな装飾が施されたどこぞの城の玉座を持ってきたので、少しばかりは髑髏が隠れてはいる。でも、壁や天井はまだむき出しで、照明もそのまま……。やっぱりまだまだいじるべき所はある。



「つうか……」


そもそも、玉座の間ってこんなに狭いものなのか? 4畳半くらいしかないぞ……?

しかも、3メートル超えのグルドに合わせてか天井だけは異様に高いし……今さらだけど、妙だぞこの部屋。

長細さ、なんかダサっ。


「どぉうしたぁ。宝玉ぅ。おはよぉう」


戸口で天井を見上げていると、グルドの奴が声を掛けてきたので視線を戻す。


「その名前は呼ぶなって言ったろ。このバカ野郎。……おはようっ」


宝玉ほうぎょく……。

本名ではあるが、もう俺は魔王だ。

そもそも物心ついた頃から気に入ってもいなかったし、その名は既に捨てたようなものだ。呼ぶのは許さん。


「ていうか、お前、また朝飯かそれっ。くっさっ」


グルドの方へ目を向けると、激臭を放つ緑色のドロドロした液体が入った小汚ない鍋をかき混ぜていやがる。

もう何度も見たことがある光景でほんと嫌気がさす。



「今日はぁ、朝飯を食べてぇいないのだぁぁ」



「“今日は”じゃないだろお前っ。昨日もだろっ。つうか毎日だっ」



俺も毎日朝飯は食ってないし、なんなら、お前の朝飯の臭いで食欲なくなって毎日食えてないっつうのに。



「はぁ……ったく……」



ため息混じりにグルドとは反対の方へ顔を向けると……。



「あ……」



鎧に身を包み姿勢を正して立っている黒髪の女性と目が合う。



「おはよう。ツバキ」


「おぶぅ」


ツバキは見た目は凛とした大人の女性ではあるが、実は1週間前まで赤子だった。

まあ、だったとはいっても、グルドが浅い考えで、魔力で身体だけを成長させてしまった為、中身は赤子のままだ。

だから、時折、何故か泣き出すし、粉ミルク必須だし、お昼寝は必要だし、着替えも自分じゃできないし、トイレなども自分ではいけないので、唯一の女性骸骨である、ミセス・ゴメスさんに必要な場面場面でお世話を頼んでいる。

最初こそ、結構苦労したものだが、こうして少しばかりツバキ体制が出来上がると、案外魔界でもいけるものだと思う。

まあ、たった1週間だけどな。



「おーしおし、ちゃんと挨拶を返せるとは偉いな、ツバキ」



「あぁ……ひゃぁぁ~……」



頭を撫でてやると、ツバキは顔をくしゃっとして笑う。

見た目は大人だから、なんだか複雑さも無いことはないけど、ほんと素直で可愛い子だと思う。



「よーしよし。その調子だぞ。挨拶は基本だからな」



「うぶぅ」



1週間見ていて分かった事だが、ツバキはこちらの言葉を少し理解している所があり、まともに言葉を話せはしないが、自分なりに言葉の頭を変えてコミュニケーションを取ろうとしているようだ。



「おっし。じゃあ、今日もやるか」



玉座へ歩んでいくと、どっしり腰を下ろして、前を向く。

ツバキに癒されたことだし今日も魔王を頑張れる筈だ。




「うむっ……」




魔王は魔といえど王だ。姿勢は正しておかねばな。



「んんんん~…………」



眉間にもシワを寄せて眼光は鋭くしとくべきだな。




「あー……あー……んんっ。……あー……あ゛ぁー」



声も、グルドじゃないけど、低い野太さは必要かもしれんな。



「うむう……」



うん。渋い。渋いに違いないぞ今の俺。そう、まさしく魔王のように。




「準備は完了だ……」





………………。






…………。





……。







「で……?」


魔王って何すんだ? 座ってるだけか? くっせえ室内で?


「あぁ……結局、今日も暇じゃねえか。くそっ……」


やってらんねえ、ってことで、姿勢を崩して、妙にゴツい左右の腕置きの右側に両足を乗せ、左の腕置きに背を預け、懐から取り出した煙草の箱から一本取り出して咥えると火を着ける。



「ふぅ~……」


ここに来てからというもの、まだなんも魔王らしいことしてねんだけど。いいのかほんとこれで。



「よくないんね。魔王がそれじゃ」



「えっ、え、なにこの声っ……」



急に思考の返答と取れる声が聞こえて驚いて回りを見回すが、鍋を依然かき回すグルドと立って寝ているツバキしか居ない。



「幽霊じゃないんね。ミリーだねー」



「あっ……ああ。お前か」



ミリー・エン・クルード。玉座の後ろで両ひざを抱えて座るのが趣味の魔道士。

頭からすっぽりと黒のローブで覆っていて顔は未だに見たことはない、まあ変な奴だ。

ただ、変な奴だがグルドとツバキと比べればまだ会話もできて情報通でもあるので、一応参謀みたいなもんだ。



「まさか、私を忘れてた、ねん?」



「忘れてたな。……いや、だって、お前いつも玉座の後ろに居るしさ……」



「酷いね。ずっと傍に居るのにね」



「いや、酷くはない筈だ。お前の傍の居り方は普通とは違う」



横に居るならまだしも、玉座の後ろってのは絶対違う。認めん。



「そうかねー。そんな居り方もあるんじゃないんねー」



「あるのはあるだろうな。現にお前がそうだもんな」



「だねー」



「だな」



なんだこの着地。意味あったのかさっきのやり取り。



「ねえ、魔王。ちょっと二人で話したいことがあるんねー。いいんね?」



「うむ。構わんが」



そう返すと、途端に指を鳴らす音が部屋に響く。



「これで聞かれることはないから、安心なんねー」



「うん? 安心って、別に何も変わってないけど、お前なにかしたの?」



「したんね。グルドさんやツバキちゃんを見たらわかるんねー」



「はぁ? グルドにツバキ……?」



別に何も変わってないはいないはずなんだがな。

グルドは変わらずにくっせえ鍋かき混ぜてるし……。



「ん……?」



アイツ……確かにかき混ぜてる様子だけど、動いて……ない?



「…………」



回してる姿勢のまま静止してるようだ。ずっと見てても、アイツの腕もかき混ぜ棒も同じ位置のままだ。鼻歌もいつの間にか止まってる。



「ってことは、ツバキもか……」



ツバキに視線を向けると、いつの間にか起きたようで、目を見開いて下唇を噛んだまま、やはり静止してるようだった。



「っつうかちょっと待って! ツバキのやつウンコする気だっ!!」



下唇を噛む時はトイレの証拠っ!! これはやばいっ!!



「おぉー。それはやばいんねー」



「なあ、ミリー! 今、触っても大丈夫なのか! 動き出したりとかっ!」



「大丈夫なんね。触っても動くことはないんねー」



「そうかっ。じゃあ、ごめんっ! ちょっとツバキをトイレまで持っていってくる!」



「はいはーいねー。ごゆっくりねー」



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